No title2022/07/03殺しかけてでも会いたい愛であり
トラックに轢かれたところ、助けようとした猫は死に、私の意識は猫の体に入り込んでいた。なんてこった。死体憑依?
そうしたら兄と再会した。猫には幽霊が見えるって本当だったんだ。3年前に死んだ兄は幽霊になっていた。
救急車に運ばれる私を、幽霊の兄が必死に呼びかけていた。それを見て、私の意識はそっちにないのにと私は少し不貞腐れる。
兄は私に気付いていなかった。猫の私は兄を見つめるがそこに兄の実態はない。不思議な三角関係が出来てしまった。
救急車に猫が乗れるわけなく、私は人間に追い払われる。
少しして病院から兄が出てきた。
兄は幽霊だから壁だってすり抜けられる筈なのに、わざわざ正面玄関から出てくる兄がおかしかった。読み通りだと待ち伏せしていた私は兄に擦り寄る。
「猫なら幽霊が見えるんだな」
やっと気付いたか。
ペットを種族名で呼ぶタイプの兄が笑った。ただの猫じゃなくて、私は貴方の妹なんですよ。
私は決断を迫られていた。元の体に帰れば生き返れるが、私は兄を見れなくなる。
兄は好きだ。しかし、自らの命には代えられず、私は私の体が死ぬギリギリに幽体離脱を終わらせる。すんでのところで生き返ったような奇跡に、周りはわっと湧き上がった。
猫の目で見た景色は輝かしかった。
兄が見えなくなった私は、1人分の影が落ちる道を歩く。と、そうしたところにトラックが突っ込んできて、轢かれそうになっていた野良猫とごっつんこし、猫が死に、また私の魂が抜け。
「また、見えるようになったか?」
トラック運転手に取り憑いた兄が、しっかり私と目線を合わせて言うので、猫過激派、且つ平和主義の私は存分に爪を立てた。
猫だから文句も言えないし、幽霊だから触れられないけど、それでも見えるのだと思えば、平和主義の看板を下げてもいいくらいに些細なことだった。
妹死んでません。妹を殺せば幽霊どうし仲良くやれるだろうに、守るべき一線が兄は微妙に間違ってる。




