No title2022/02/25君人称単数代名詞
私たち双子は、魔法使いとその共犯として捕らえられてしまう。入れられたのは鏡張りの牢屋。
これは実に効果的な拷問で、あまりにそっくりな私たちは三日も経たないうちに鏡の自分と相手の区別がつかくなった。
鏡の世界でお互いを見失わないよう、私たちは毎日手を繋いで眠った。目が覚めて、一番初めに見るのが自分と瓜二つな顔なんて気持ち悪いけど、自他の境界が曖昧になる中で私たちは毎日そうした。
次に目を覚ました時、私はもう駄目だと分かった。
左手の先に兄が居なかったのだ。居たら居たらで狂うが、居なければ尚酷い悪夢だ。
どうしよう。どうしよう。だって、まるで魔法のようじゃないか。気が狂ってしまいそうだ。
兄はいつ消えたのだろう。そもそも、いつから存在していたのだろう? 兄は、もしかして私が見た鏡写しの自分で、もしくは幻覚で、きっと初めから兄なんていなくて、それに違いなくて、私はずっと、この部屋に『あの男』と二人?
「願いを叶えてやろうか」
悲鳴を上げたところで、いつの間にか現れた魔法使いが私を見下ろして言った。
魔法使いの顔立ちは私と似ても似つかず、魔法使いは兄ではない。
共犯なんて冤罪だった。私はこの男に嵌められたのだ。
願うは1つ。早くここから出して欲しいということだ。しかし、狂った私の口から出たのは「兄を返して」という願いだった。
「借りてないものは返せない」
私だって、貸した覚えはない。
「なら新しく妹をやろう」
何でだよ。
魔法使いの指さした先には鏡に映った私が居て、その子は私を兄と呼んだ。なんてことだ。よりにもよって、その子は私を兄と呼んだのだ。
ああ、そうだった。妹は、救えないほど馬鹿なのだ。




