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Notitle癖  作者: 碧郎
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No title2022/02/13錠があるなら穴あり鍵あり

 私の家には不思議な扉がある。

 間取りを見てもその先に部屋はない筈だけど、そこには重厚な扉があり、金の取っ手の下にはきちんと鍵穴があった。


 私が鍵穴を覗こうと思った実に5歳の頃だ。鍵穴は5歳の私へ挑戦するような高さにあり、ほんの少しだけ背伸びをすると覗き込むことが出来た。


 その時から私は定期的に鍵穴を覗いているのだけど、見る度に違う景色が私を迎えていた。

 鍵穴の向こうに、部屋も、フラミンゴも、八尺様も物理敵に存在できる筈がないのだけど、何故だか私が鍵穴から見た景色は、フラミンゴが踊り、八尺様がダッシュしていた。鍵穴の向こうは異次元に繋がっていたのだ。


 やがて私は気がついた。鍵穴を覗いた先の視点が規則性を持って移り変わっているのだ。

 子供の目線から大人の目線、老人の目線から赤ん坊の目線。時には車椅子程の高さの時もあり、また原始時代から平安、江戸、昭和、平成と鍵穴の向こうでは時代の変遷が伺える。


 私は戦慄した。昭和、平成て。でもって今日覗いた時にはもう既に令和の景色。近付いてきているのだ。段々と。


 もう一度覗けば、そこには私の最寄り駅前の景色が映っていた。私はビクビクと肩を縮める。

 病院、小学校、公園、空き地、住宅街。景色が流れ、やがてピタッと止まる。

 私の家が映った。私の家を、誰かが見ているのだ。


 傍観者から当事者として意識を引き戻され、勢いよく扉に背を付けた私は荒く息をする。メリーさん方式なら最後は私の背後に来る筈だ。こうして背後を埋めておけば大丈夫な筈。そもそも、のぞき込まなければもう背後には来れない筈だし······! 完璧! 完璧な作戦! そうだ! 今のうちに鍵穴をガムテープで塞ごう!

 腰を浮かせかけた時。



 開くはずのない背後の扉から、カチリと鍵の回る音がした。


「ただいま」


 これが正しい鍵穴の使い方ね。

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