No title2022/02/02
「今日は何年何月の何日だ?」
私は咄嗟に「もしかして兄は時間遡行者ですか?」と我ながら完璧な回答を返す。
しかし兄はそんな単純なことしゃないと首を振る。
「俺は──年─月─日から来た。ここにいただろう俺と、未来の俺の中身が入れ替わってる」
んな馬鹿な。
話を聞いてみると、いつ未来へ戻れるか分からない、何故入れ替わったのかも分からない、しかしこれから世界が減んだり、自分が消えたりすることはないという随分都合の良い設定だ。
それから未来の兄は割と伸び伸び現在を過ごした。
懐かしいと言って両親の墓参りに行き、家の前の道路を清掃して、私の自室を家の道路側に移動させる。何やら手紙も書いていた。
「もしかして兄、死ぬ準備をしていませんか?」
兄はまさかと笑ったけれど、私は疑っている。
そうしたところで遂に入れ替わりが戻った。未来の兄は未来へ帰り、私の兄が帰ってくる。
未来はどうだったか尋ねようとしたが、兄は未来の兄からの手紙を握りしめ、顔面蒼白で聞くに聞けなかった。
私が兄に監禁されるようになったのはそれからだ。「俺が俺に宛てた手紙だから信じられる」なんて意味不明なことをいい、兄は私を毛布で包み、間違っても死なないようお世話する。
しかし、私は兄の外出中に自室へトラックが突っ込んできて死んでしまった。未来の兄に移動させられた部屋の中でだ。
未来の兄より私が死なないよう手紙で手解きされていた現在の兄は、それが全て私を死なせる為の未来の兄の準備だったと知る。
絶望に暮れる現在の兄を霊体となって慰めながら、私は「味方の振りして惑わせるのやめて下さいよ」と未来の兄に呆れた。
死ぬ準備→╳
死なせる準備→○




