No title背にも彼にも代えられまい
ある日兄が死んだ。存在から死んでしまった為、私は嵐にも負けない程の勢いで荒れた。だから私はあれほど他人の為に危険を冒すなと言ったのに! 兄は名も知らぬ少年の身代わりとなって、次元の狭間へ落ちていったのだ。
1週間は悲しみに暮れ、何度も自死しようと試みた私はある時気付く。
確かに兄は死んでしまったが、実はここに居るんじゃないか? 包丁を持った私の前にとうとう誤魔化す手立てが尽きたのか大きなホールケーキが現れた。私は仕方なくケーキ入刀ごっこをして自殺を中止する。
以前は絞首縄を自然且つ巧妙なトリックで海の藻屑に変えていたのに、今ではとうとうケーキまで用意させてしまった。ごめん。今漸く気が付いたのだ。今まで鈍くてごめん。
それから私は兄がいたという記憶を寄せ集め、何百もの小説にした。自殺のエネルギーを全て物書きにぶつけたのだ。小説は気味悪がられて1つも売れなかったが、別に良かった。
私は今も兄の存在を確かめるため週に1度はケーキ入刀ごっこをする。兄は私の誕生日にケーキじゃなく花束に入刀させようとしてくる。
どうにも愛おしい100点満点の毎日だ。兄との生活を愛している。
そんなある時、私の元にかつて兄に助けられたという少年が現れる。彼は私の小説を読んで自分が兄になろうかと図々しく言うけれど、彼の上にはケーキが降り、可笑しさに笑う私の片手には包丁が握られている。
勿論、美味しかった。
yummy,yummy.




