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Notitle癖  作者: 碧郎
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No title×年後に出発した兄が妹に追いつく時間を求めよ

 小さな頃からよく会う人がいる。示し合わせたわけでもないのにばったりと出会うのだ。伺う限り住む土地も生活様式も違うのに、何故か行く先々にその人がいた。

 会話を交わすことはまるでなかったけど、私達はよく時間を共に過ごした。映画館に行けば隣合って座り、バイトに行けばその人は客で、隣街へ引っ越せばアパートの下の階がまさかのその人だった。


 歳を重ねる毎に会う頻度が増え、物理的な距離が縮まっていることには気付いていた。

 2年前には県外旅行に行けたのに、今では彼の半径5キロメートルより外へ出られないのだ。4キロメートルを越えると耳鳴りから始まり、5キロメートル付近で気絶してしまう。どうやら私とその人の間には引力があるようで、一定範囲以上を離れようとすると負荷がかかるらしかった。


 何らかの不可抗力は年中無休で働き続け、私は彼のことを知人と呼び、友人と呼び、今では兄と呼ぶようになっていた。

 何でだ。

 このままでは血だけじゃなく脳まで同化してしまいそうだった。


 怖くなって、私は異世界へ飛んだ。

 半径5キロメートルの穴を上手く掻い潜ったのか、私の試みは成功し、私達は出会わなくなる。


 それなのに、何ということだろう。大変だ。おかしなことになった。×年経った今になって、久しく感じていなかったその兄との引力が、再び感知できるようになったのだ。感知できる範囲内に兄がいるということになる。

 その時、空に大きな裂け目が生まれた。引力は急激に弱まり、代わりにここ2年酷かった喪失感が有り得ない質量で満たされていく。兄だ、兄がくる。引っ張られて、このままじゃぶつかる。


 そうして、兄にぶつかって私は死んだ。即死だったので、ぐちゃぐちゃに潰れた私を見たのは私自身ではない。そうこれは、()と同化した()の記憶だ。


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