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No titleもう兄妹でもない傘の下2人
何か足りない。いる筈の人がいない気がする。
そんな漠然とした虚無感を虹を見るくらいの頻度で味わっていたら、ある時それは本当に私の隣に現れた。出会った瞬間その人が本来私の隣にいる筈だったもの分かった。
その人は出会い頭に『兄』と名乗り「死ぬまで自分達は兄妹でいよう」と契約を持ち掛けてくる。
断れない程度には、その人の隣が有り得ないくらい安心感に満ちていて、だから私は最終的にそれを了承した。私達はきっと、並んで在るのが本来の正しい形で、いなければ寂しいし、いれば心が満ち足りる。2人きりで完成するものだった。
しかし4年後、私は契約を破棄していた。単純にして呆気ない理由で、些細なすれ違いに耐えられなくなったという理由で私たちは袂を分かつ。
ビニール傘の下で寂しいと思っても、私はこれはこれで、肩が濡れなくていいと納得すべきなのだ。
1年に虹を見る回数が10回だとすると、既に私は60回近くの虚無感を兄に埋めて貰っていたらしい。
その反動は想像以上に凄まじく、私は雨上がりの空を見てふいに涙が溢れた。濡れてない筈の右半身が寒くて仕方ない。
ごめんなさい、と呟いて、私はかつて兄の結婚式を自然的且つ無惨な方法で台無しにする。
後日しれっと見舞いに行けば、あの人は何故だか全てを知っていたかのように笑っていた。




