No title2022/02/11愛しき日々よ、妄執の
1話目とちょっと繋がってる。
ある日、私は見知らぬ誰かの日記を拾った。良心は好奇心を前に屈服し、私は背徳感に息を詰まらせながら日記の中身を読む。
中身から察するに、日記の持ち主はどうやらこの近くに住む男性のようだった。私は日記を読み進める。中には彼の苦悩と悲しみが綴られていた。彼はつい最近妹を失くしてしまったようなのだ。そのやるせなさを解消する為、彼は日記を書き始める。彼にとって日記が慰めになったのか、実際のところは分からない。
読み進めるうちにおかしなことに気が付いた。記された日々のあちこちに死んだ筈の妹の片鱗が現れているのである。彼は妹が生存していたIFを日記に綴るようになったのだ。
私は戦慄した。何て頭の可笑しい奴だ! 一方で私は胸の高鳴りを感じていた。待って待って、もしてかしてその妹、私じゃないか?その妹は私に違いないんじゃないか!?
「ただいま帰りました、兄!」
山奥の一軒家に買い物袋を提げて訪ねると、兄は一瞬、絶望を塗りたくったような顔をして、泣き笑いしながら私を迎え入れてくれた。
それから2人で暮らした。兄はとことん幸せそうで、日記に書かれていたような悲壮さとは到底無縁に思えた。時々兄が虚ろな目をするのが気がかりだけど、私達は概ね、幸せに暮らした。
そうそう、兄の家には日記と同じ装丁の本が、壁四面ずらりと埋める部屋があって、時々、兄がそこに閉じこもって泣くのだけど、幸せだ!




