60 No title2022/02/02
私は1年前から徐々に体が縮んでいく呪いにかかっていた。毎朝「目覚めると体が縮んでしまっていた!」と、某名探偵のセリフを言えることに初めは喜んでいたけど、1日で縮むのはほんの少しだけ。目に見える程の変化はなく気分は直ぐに冷めた。どうやらあと50年で親指姫サイズになるようだが、それだけ生きれるなら上等な人生だろう。
そして、実を言うと私はこの事をまだ兄に話していない。話せなかったのだ。兄は2年前から南の島へ仕事に行っていたし、しかも何故かその島で探偵活動を営み、かと思えば島の洞窟で行方不明。そしてつい先日、日本の我が家に直接帰ってきたところなのだ。
「南の高校生探偵をしてたって本当ですか?」
「それ俺のドッペルゲンガーか何かだろ」
果たしてこのいい加減な兄に呪いのことを打ち明けられるだろうか? いや出来ない。
幸い呪いの進行は遅れている。毎日見ることになる相手ならともすれば変化に気付かないかもしれなかった。進んで話したいことじゃないし、出来ることなら秘密にしたい。
そうして私は口を噤むが「次は一緒に南の島へ行こう」と言ってくれる兄が嬉しかった。
「1年前、南の島で呪いのマトリョーシカなる物を壊してしまったからな。近々また赴かないといけないんだ」
果たして、この兄を殴ることを私は許されるだろうか。あと50年、上等な人生を兄と共に生きようと思うなら、私は兄を殴っておくべきだろうか?




