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Notitle癖  作者: 碧郎
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No title2022/01/27関係ソムリエ

 私が関係ソムリエに出会ったのは、全くの偶然だった。ソムリエは紳士的な物腰で、どんな関係がお好みですか、と私に尋ねる。生ける都市伝説をお目にかかれるなんて、まるで夢のようだ。


 店内は薄暗く、壁も床も、照明の色も白だった。ソムリエの服すら真っ白である中、しかし、店内で唯一色彩を放っていたのは、小さなハンガーに巻き付けられた色とりどりの刺繍糸たちだ。壁一面、ずらりと色が渋滞している。

 私はか細く言う。


「私には、兄がいるんです」


 そして、ソムリエは繰り返し質問を寄越した。私と兄の距離感や、熱量や、差、重さ深さ長さについてだ。

 私は事細かに関係を語り、時には兄なる人とのちょっとした思い出話も披露した。そうそう、それに兄はですね、お菓子の包み紙で折り紙をするタイプのひとなんですけどね。


 帰り際に渡されたのは、アイボリーに近い色の糸だった。長く、手触りがよくて、無数の細い糸が編みこまれた1本だった。

 安直に赤い糸を渡して来なかった当たりが個人的にポイントが高い。


 すっかり遅くなって帰宅すれば、兄はリビングで工作をしていた。手には私と同じような、ただし、私より赤い色の糸がある。それと紙コップ。

 糸電話······?


「おかえり」


 兄は微笑む。

 安易に小指に結ぼうとしないところが、個人的には大好きだ。

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