No title理想主義者による疑似関係論
私と彼は、そりゃあ深く愛し合っていた。死ぬまで共に生きたいと思ったし、私が死ぬまでを彼は看取りたくて、私は彼に看取られたかった。
私たちは無敵だった。これが運命かと思える程の、充足感、万能感、予定調和感。私たちは2人で1つなのだと確信していた。愛し方や愛の質はそれぞれ異なっていたけど、私たちはお互い、自分なりに相手を愛していたのだ。
そんな私たちが間違えたのは、よりにもよって私たちの関係のことだった。
かつての冬、私と彼は恋人になった。しかし、私たちはたちまち破局する。隣合っていれば無敵な筈なのに恋人になると何故だかギクシャクするのだ。
それから私たちは様々な関係を試した。お互いにベストな関係性を見つける為の、疑似関係ごっこだ。先輩後輩、ライバル、親友、上司部下、親子、師弟。それはそれは長い時間をかけて、たくさんの関係性を試した。
一番有り得ないと思ったのは、私が先生をした時の関係だ。これは逆に面白かった。だって、前提として私あいは恋と錯覚するほどの愛を抱いているのだ。私たちが漫画みたいな禁断の恋だなんて、違和感が果てしない。
けどまあその甲斐あって、私たちは最適解に限りなく近い関係を、今では10年近く続けられていた。
「こうして一緒に集中治療室にも入れるのなら、妹で良かったと思うんですよ」
私は何より、看取られたい派であるわけだし。
私から臓器提供を受けた兄は、尤もだと言うように瞬きをした。




