04
「睦子ー、今日は部活?」
「うん。小雨降ってきたけど・・・見てく?」
「行く!」
私は睦子の後ろを追って、教室を出た。
ついさっきまでは、あんなに晴れていたのに、今になっては、小雨まで降ってくる曇り空。
最近は、天気がころころ変わって、困る。
「江桜さん!」
・・・げ。
私は反射的に硬直した。
振り返りたくない。でも、振り返らなきゃいけない。
「お願いだから、吹奏楽部に入部してください!」
「江桜さんの、絶対音感が、超必要なんです!」
やっぱりか・・・。
小さくため息をついて、睦子を引き止めた。
ん?と言って、睦子は振り返り、私の後ろにいる大軍を見て、明様に顔をしかめる。
私の後ろにいたのは、我校の吹奏楽部部員、計19名だった。
私たちの学校は、陸上やサッカー、野球、その他、スポーツ関連の部活は、実に、名門とも呼べる中学だが、文科系の部活は、あまり人気がない。
そのため、ビックバンドである吹奏楽部は、部員不足に陥っていた。
耳がいい割に、音楽に全く興味関心がないため、そのくらいの人数いれば、十分じゃないの?
って、よく思うけれど、彼女たちからしてみれば、まだまだ足りないらしい。
そこで、一年のときから、絶対音感もちの私を、よく、というより、年から年中勧誘に来るのだ。
・・・迷惑にも、ほどがある。
「あのさ・・・」
「お願いします!」
私は、あきれて物も言えなかった。
何度断ってきたことか・・・。
私の耳は、こんな奴らに利用される為によくなったんじゃない。
「しつこい」
それだけ言い切って、睦子が私を連れて先に進む。私も、それに従った。
「待ってよ!」
「きゃ!」
しかし、彼女たちは、諦めが悪いのか、私の腕を勢いよく引っ張った。
「何するの?!」
「江桜さんは、陸上部の部員じゃないでしょう?!何で、山崎さんに止められなくちゃいけないの?!」
「はぁ?」
私はその腕を強引に振りはらう。
だんだん、腹が立ってきた。
「いい加減にしてよね。私は、吹奏楽部になんか、入る気はさらさらないんだから」
ホント、こんな迷惑なことに巻き込まれるなら、こんな耳、いらなかったな。
私は、心の中で大きくため息をついた。




