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平民の私が戦闘狂な皇帝陛下を助けたら戦いよりも求められて溺愛される存在になりました  作者: 城壁ミラノ


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第六十一話 魔女と転移魔法の練習2

 今度はダンディアスがミネルヴァと同じように、目を閉じて胸の魔力に意識を集中させはじめた。


 サリアのアドバイスも思い出して、自然に動くように体をリラックスさせながら転移してみる、


「んっ? うっ」


 片目を開けてみると、周りの景色は変わっていなかった。


「動いてないな」


 サリアとミネルヴァが残念顔でうなずいた。


「まぁ、最初はみんなそうよ」

「それなら、続けてみよう」


 前向きに言って、また意識を集中させた。


 部屋の端に転移したイメージ、


「あっ!」


 ミネルヴァの歓喜の声が聞こえて目を開けた。


「動けたな。端にはつけなかったが」

「でも、ほんの少しだけど端に近づいたじゃない!」


 サリアが手を叩いて褒め讃えた。


「移動した時、どんな感じでしたか?」


 ミネルヴァの興味津々の質問に、


「体はほとんど動いた感覚はなかった。着地の衝撃のようなものもなかった」


 ダンディアスは感覚を思い出しながら答えた。


「その調子よ! どんどん練習しなさい。感覚が研ぎ澄まされていくはずよ」

「わかった」


 また目を閉じると、


「慣れてきたら、目を閉じなくてもできるようにね」

「わかった」


 気の早いサリアのアドバイスに応じて、さっそく目を開けたまま試してみると、


「ああ!?」


 聞いたことのない慌てた声に、ミネルヴァは慌てて部屋の端に転移したダンディアスに駆け寄った。


「どうしました!?」

「大丈夫だ。驚かせたな」


 ダンディアスは自分も驚いて笑っていた。


「目を開けたまま転移したら、本当に一瞬で移動したのがわかって、驚いてしまってな」


 もう一度、周囲を見て転移できたのを確かめた。


「上手くできてるわ。続けて!」

「ああ――」


 返事をした次の瞬間には、


「また少し、端に近づいた」

「はい!」


 ダンディアスに笑いかけられて、ミネルヴァは跳ねるように応えていた。


「戻って」


 サリアの手が示した元の位置。


「今度は一気に端までいけるかしら?」

「やってみる――」


 目的地に視線を向けた次の瞬間には、


「できたぞ」


 部屋の端から二人に笑ってみせた。


「凄いです!」


 ミネルヴァは目で追うのもやっとで、急いで体を向けた。


「これくらいの転移なら、サリアの言う通りにやれば危険はない。ミネルヴァももう一度やってみるといい」

「はい!」


 ミネルヴァは緊張してきて、背筋を伸ばした。


「楽な気分でやるのよ、ミネルヴァ」

「は、はいっ」


 即座に入ったサリアの忠告に、深呼吸をする。


 目を開けると今度はダンディアスが、


「転びそうな時は、俺がまた受け止める。ここまで来てくれ」


 手招きしたのはすぐ目の前。


 自分に向かい、広げて伸ばされた両手。


 まるで、胸に飛び込んで来てくれと言わんばかりに見えて――


 一瞬でダンディアス様の腕の中に!?


「えっと、その……!」


 行きたいけど行けない!


 まばたきを繰り返してだじろいでいると、


「ちょっと!」


 サリアのトゲのある声が飛んできた。


「またイチャイチャするつもりなら、今度こそ本当にどちらか石にするわよ?」

「サリアさん!」


 石と聞いて、ミネルヴァは反射的にサリアのほうを向いた。


「やめてくださいっ、イチャイチャしていません!」

「そお? じゃあ、真面目にやってみてごらんなさい」


 サリアの挑発を受けて、ミネルヴァは真面目な顔をダンディアスに向けた。


 そのまま目を閉じて、ダンディアスの姿を思い出してみる。


「えいっ、くっ、えいっ!?」


 何度近づこうとしても、想像のなかの自分も、現実の体も全くダンディアスに近づけない。


「あれ?」


 恥ずかしさと不甲斐なさに下を向き、ダンディアスを見れなかった。


「あらあら」


 サリアのニヤついた声が聞こえてきた。


「イチャつくのを心配する必要なかったわね。一歩も近づけないなんて」


 一歩も近づけなかったのは悔しい。


 ミネルヴァは奥歯を噛んだ。


 手を広げて待っていてくれたダンディアス様には申し訳なくて。力なく彼を見た。


「ごめんなさい」

「焦ることはない」


 ダンディアスは慰める笑顔で手をおろした。


「代わりなさい、私が受け止めてあげるのはどう?」


 サリアは腰でダンディアスを押しのけて場所を奪い、


「さぁ、私の腕に飛び込んできなさい!」

「くっ」


 完全に面白がってる笑顔。

 両手を広げた姿はさっきのダンディアス様相手にした想像を読んでるようにしか見えず、ミネルヴァはちょっとサリアをにらんだ。

 ダンディアスでなくなったことを、残念にも思いながら、


「わかりました」


 心を鎮めて目を閉じる。


 思い浮かべたのはサリア。

 今度は緊張もためらいもなかったのに、


「あっ、と?」


 ちっとも、近づけていない?


「ちょっと、できてるわよ」

「ああ、できてるぞ」


 ミネルヴァにも二人の笑顔が近づいているのがわかり、


「じゃあ、もう一度!」


 また目を閉じて、開けてみる。


「うっ、と!?」

「今度はさっきより動けてないわよ」

「ああ、どうした?」

「さっきと同じ想像をしたんですけど……」

「ミネルヴァは習得に時間がかかりそうね」


 サリアの判断に、反論できずに肩を落とすと、


「なぜだ? なにか、俺と違いがあるのか?」


 ダンディアスのほうが納得できずに首をかしげた。


「そうねぇ、ミネルヴァはあなたと違って簡単な治癒魔法くらいしか普段使ってないから、単純に色々な魔法を使いこなすのに慣れてないんじゃないかしら」

「なるほど」


 ダンディアスと一緒にミネルヴァもうなずいた。


「何度も練習して、慣れればできるようになるはずよ。転移魔法のセンスがこれじゃなければね」


 これじゃないことを祈りつつ。


 ミネルヴァはサリアに笑顔を返した。


「頑張ります」

「うん。ミネルヴァはこのまま部屋の中で練習ね。ダン様のほうはセンスが、ずば抜けてるみたいだから」


 サリアはダンディアスのほうを向くと、


「今度は、壁を抜けて庭に出てみない?」


 後ろの壁を指差し、ダンディアスとミネルヴァもそちらを向いた。


「わかった」


 ダンディアスはまず窓から庭の風景をよく見た。


「よし」


 部屋の中央に戻り、まずは目を閉じてやってみることにしたが、


「うっ!?」


 バンッと音と衝撃がして目を開けた。


 壁にへばりついてるのに気づき、不可解なままに体を離した。


「大丈夫ですか!?」


 ミネルヴァも凄い音と壁にぶつかった姿に驚いて、急いで駆け寄って手を伸ばした。


「大丈夫だ。また、やってみる」


 ダンディアスは優しくミネルヴァの腕を掴んで壁から離すと、また部屋の中央に戻った。


 しかし、何度やってもバンバン壁にぶつかるだけ。


 ミネルヴァは悲鳴をあげそうになりながら、


「もうやめてください……!」


 壁に衝突したところを押さえて止めた。


「痛いところは?」


 激しくぶつかった箇所を見ても、服の上からでは怪我をしているかわからず視線をうろつかせるばかり。


「どこも痛くはない。音の割にはそう酷い衝撃でもなかった」

「でも、ジャムは食べてください」

「わかった。ジャムを食べて休憩しよう」


 ミネルヴァの心配が消えないので、ダンディアスは素直に従って机に向かいながら、


「なぜ、今度は上手くいかないんだ?」


 部屋の中央からこちらを見ながら、腕を組んでニヤついているサリアに聞いた。


「誰でもそうなの。壁抜けは最初の難関よ」

「そうなのか」


 少しほっとして、ジャムを一口食べると、


「よく効くな」


 実はほんのわずかに感じていた痛みが消えて、そばで見守るミネルヴァに微笑みかけた。


「よかったです」


 簡単な治癒魔法だけでも、使ってきてよかった!


 ミネルヴァはにっこりと微笑み返した。


 サリアは二人の様子にもはや突っかかる気力もなく、


「二人とも、今日は部屋の中を移動するだけにしときなさい。そうやって、確実に自信を身につけることが大事よ。そうすれば、もっと上手くなるわ」

「わかった」

「わかりました」


 二人はすぐに再開したが、


「あんまり、変化がないです」


 何度目の挑戦かもわからなくなった頃、ミネルヴァは小さな声で二人に成果を報告した。


「それに、少ししか動いてないのに凄く疲れました。私もジャムを食べますね」


 もう机に転移する余力もなく、歩いていって瓶とスプーンを取った。


「転移魔法は神経を使うからね。連続すると体は疲れないけど頭が疲れるのよ」

「確かに――、ジャムを食べると、神経が癒やされるのを感じます」

「ダン様も疲れたみたいね」


 ダンディアスが答える前にサリアは手を打った。


「じゃあ、今日はこの辺にしときましょ。頭が痛くなって熱を出したら大変だからね」

「――そうしよう」


 すぐに答えられなかっただけ、反射神経が鈍っている。


 それを認めて、ダンディアスは素直に従った。


「わかりました」


 ミネルヴァも異論はなかった。


「では、ミネルヴァ、帰ろう」

「はい」


 差し出された手に引き寄せられるように、ダンディアスの隣に行くと、


「結局、手を繋いで帰るのね。まぁ、転移魔法を覚える間だけ、イチャイチャしてなさい」


 サリアは目の前に立ちはだかり笑った。


 ミネルヴァがキッと照れ隠しに睨むなか、


「今日は助かった。思いの外、親切でわかりやすい教えだったぞ。ありがとう」


 ダンディアスが笑いかけ、ミネルヴァは心を入れ替えてお辞儀した。


「ありがとうございました」

「フン、これからは、お師匠様と呼びなさい」


 ふんぞりかえる要望には答えずに、二人は扉を開けて魔女の屋敷から脱出をはじめた。

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