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平民の私が戦闘狂な皇帝陛下を助けたら戦いよりも求められて溺愛される存在になりました  作者: 城壁ミラノ


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第四十四話 元皇帝陛下の後悔

 二人が家に帰りついて中に入ると、ダグとフィオレが来ていた。


「あ、ミネルヴァ、ダンさん」


 イザベルと話していたフィオレがダンディアスに駆け寄り、画帳を差し出した。


「ドレスのデザイン画、早いほうがいいと思って持ってきました」

「ああ、レブナンに渡してこよう」


 ダンディアスが笑顔で受け取ると、フィオレは深々とお辞儀した。


「ありがとうございます。本当に、嬉しくて、光栄です……」


 目元をこするフィオレの姿が、先程のミネルヴァと重なって見えたダンディアスは。

 頭を撫でて慰めようと、思わず動きそうになった手をグッと自重させて、


「泣くことはない」


 そう言うに留めて、フィオレの肩を抱くダグに慰めるのを任せた。


 気持ちが落ち着いたフィオレは、ミネルヴァににっこりと笑顔を向けた。


「ミネルヴァはお城に行くのよね、来て行く服はあった?」

「うん」


 ミネルヴァも笑顔を返して袋を掲げて見せてから、


「それから、レブナン様への贈り物も買ってきたの」


 別の袋から本を出して見せた。


「ああ、よかった! レブナン様へのお土産を言い忘れたと思っていたのよ」


 胸を押さえてほっとするイザベルに、ミネルヴァは顔を向けた。


「パパが書いた防御魔法と回避魔法の本よ」

「えっ? パパが書いた本!? いいのかしら?」


 イザベルの視線を受けたダンディアスはうなずいた。


「レブナンは魔法書をよく読んでいるからな、喜ぶと思うぞ」

「ああっ、皇帝陛下に読んでいただけるなんて! パパも天国で泣いて喜ぶわ!」


 イザベルは天に向かって言うと、ミネルヴァと飛び跳ねるように笑顔を交わした。


「俺にも、部屋にあるのを読ませてくれ」


 ダンディアスの頼みは二人の耳に届かなかった。


 先代皇帝陛下という立場上、少し控えめな申し出になってしまったか。


 少しショックを受けながらも、ダンディアスは自分を納得させて引き下がった。


「それから、ベリーの他にナッツと、お菓子も作って持っていくことにしたの。ダンさんが、レブナン様に食べさせてあげたいって」


 向けられたミネルヴァの笑顔に、ダンディアスはハッとして笑顔を返した。


「レブナン様に食べていただくなら、ベリーは摘みたて、ナッツも綺麗なものを選り分けて、お菓子は最高のものを作らなきゃね!」


 意気込むイザベルにフィオレが進み出た。


「皇帝陛下へのお菓子作り、私も手伝わせてください!」

「ええ、三人で美味しいと言ってもらえるものを作りましょう!」

「私、それから、その後か明日の朝か美容室にも行きたいの」


 ミネルヴァは髪を撫でた。


 ダンディアス様に褒められた髪をもっと綺麗にして、レブナン様に見せたかった。


「行ってきなさい、行ってきなさい」

「また町に行くなら、ついて行くぞ」


 ダンディアスはここぞと足を踏み出したが、


「いえ、美容室はお待たせしますから……」

「私がついて行きますよ。買い物ついでにね。ダンさんはお留守番していてください」

「わかった……」


 あえなく、また引き下がるしかなかった。


「さぁっ、さっそく、お菓子を作りましょう!」

「はい!」


 見たことのない盛り上がりを見せる三人を見守るしかないダンディアスに、


「城に行くまでのことは、三人に任せましょう」


 ダグが隣に寄り添って言った。

 

 ダンディアスは彼に尊敬の目を向けた。


 俺より年上だけに、ダグは寛大というか余裕がある。

 俺は、皇帝皇帝と言ってはしゃぐ三人を見て、皇帝の座を退いたこと少し早計だったと後悔してしまった……


 力なく笑ったダンディアスがまさかそんな風に考えているとは思わず、ミネルヴァは笑顔で言った。


「それじゃ、作って来ますね。ダンさんとダグさんはゆっくりしていてください」

「ああ」


 彼女の笑顔に回復したダンディアスだったが、


「では、私はレブナン様に贈る防具を考えます」


 ダグまで――!


 またショックを受けてしまった。


「ダン様、ご意見を賜りたいのですがよろしいですか?」

「あ、あぁ」

「どうしました? お疲れですか?」


 珍しく余裕のない表情を見てダグは聞いたが、


「いや、大丈夫だ」


 ダンディアスはすぐさま動いて、ダグとリビングのソファーに座った。


 そうだ――レブナンが皇帝ともてはやされているのは、自分が身勝手に皇帝を退いたため。


 そう思うと気持ちが落ち着いてきた。


 そこへ、ミネルヴァがお茶を運んできたので、ダンディアスはお茶を飲んで完全に平常心を取り戻した。


 自分が招いたことなら仕方ない。

 俺も、レブナンに尽くそう。


 そう決めて一息つくと、お茶を飲んでいるダグに向き合った。


「どんな防具にするかは決まったか?」

「はい。鎧にしようかと思っています」


 ダグの表情は硬くなった。


 皇帝の身を守る鎧。盾に比べて作るのが難しい。

 しかし、こんな名誉は二度ない。

 妥協せずに作りたかった。


「お時間をいただきますが……」

「いくらでも掛けて、納得いくものを作ってくれ」

「はい!」


 決意を込めて応えると心が落ち着いてきて、さっそく鎧のことに意識が向いた。


「鎧は魔石で作ろうと思っています」


 身を乗り出したダグに対し、ダンディアスも真剣な表情で考えながら応じた。


「うむ、材料はレブナンが用意してくれるだろう。そのレブナンの要望も聞きたいのではないか? 明日、共に城に行くか?」

「そう思ったのですが、時間がかかるかもしれませんので後日余裕を持って、お伺いさせていただきたく思います」

「わかった。ならば、話し合いの日はいつがいいか聞いてこよう」

「ありがとうございます、いつ何時でも向かいます」


 丁寧に頭を下げたダグは、持参していた画帳を開いた。


「鎧のデザインをいくつか用意してきましたので、見ていただけますか?」

「うん」


 ダンディアスは喜んで画帳を覗き込んだ。


 そうしてそれぞれ過ごしていると時間が経ち。

 贈り物の用意ができるとフィオレとダグは帰って行った。


「さぁ、これで明日を待つだけね」


 二人を見送ったイザベルが両手を擦り合わせる。

 ミネルヴァはソファーに置いていた袋を取ってきた。


「私、荷物を置いてくるわ」

「ミネルヴァ、二階に行くならダンさんを部屋に案内してあげて」

「はい」


 そうだった、ダンディアス様は今日から家に泊まる。

 レブナン様のことで忘れていたけれど、思い出したらドキドキしててミネルヴァは呼吸を整えた。


「い、いきましょう」


 なんとかダンディアスを誘って階段をあがり、亡き父の仕事部屋に入った。


「この部屋をどうぞ、使ってください」


 部屋の壁は本棚で埋まっていて、窓に向かい仕事机、隣にベッドがあった。


「ありがとう、使わせてもらう」


 ダンディアスは部屋を見回した。

 その視線が本棚にいったのでミネルヴァは告げた。


「本は、どれでも読んでくださいね」

「ああ」


 さっそく本に視線を這わせはじめたダンディアスは、ふと気づいてミネルヴァを見た。


「本を読んでいるから、その間に美容室とやらに行ってくるといい」

「はいっ、それじゃあ、行ってきます――」


 静かに本を読むのに丁度いいかもしれない。

 ミネルヴァはお言葉に甘えてイザベルと出かけた。



 ダンディアスは椅子に腰を据えて、レブナンに贈るのと同じ本を読みはじめた。

 防御魔法は一度覚えただけでおざなりだったので、改めて学ぶのに丁度よかった。


 集中力が切れると、一息ついて夕日の当たる窓を見る。


 本当に、結構待つものだな。


 気になって外に出て今日の作業を終えて帰っていく職人達を見送って、また部屋で本を開いていると扉がノックされた。


「戻りました」


 ミネルヴァの声に立ち上がる。


「ああ、今開ける」


 姿を見せたダンディアスに、


「お待たせしました。綺麗にしてもらってきました」


 報告しながら、ミネルヴァは色んな角度から髪を見せた。


 一目でわかる、さっきより綺麗に整った髪型の艶やかな輝きと嬉しそうな笑顔が合わさり――ダンディアスの目を惹きつけた。


「いっそう綺麗になったな」

「えっ、ありがとうございます……」


 目を見て言われてドキンとしたけれど。


 髪のこと髪のこと。


 言い聞かせて髪を撫でて気持ちを落ち着かせても、嬉しさに笑顔がとけそうになる。

 そんなミネルヴァにつられて、ダンディアスの笑顔も柔らかくなっていた。


「後は、城に行くだけか」

「はい」

「そういえば、イザベルの言っていたことが気になるな、気絶しないように落ち着いていくのだぞ」

「はっ、はい」


 そう言われて深呼吸をはじめたミネルヴァに、ダンディアスは笑って片手をかざした。


「興奮して眠れないようなら、また治癒魔法をかけてやろう」

「そ、それは!」


 ミネルヴァは肩を跳ねさせて硬直した。


 前に魔法をかけてくれた時の、近づいてきたダンディアス様の顔を一瞬で思い出したから。


「あの、それは……!」


 断ろうと手を振ったけれど。


 でも、眠れなさそうだった。

 寝坊したり寝不足で行きたくもなかったから、


「お願いしますっ」

「わかった」


 快く引き受けたその夜。


 ミネルヴァを寝かせたダンディアスはベッドに入ったが。

 目を閉じるとレブナンとミネルヴァの姿が浮かび――なぜか寝付けず、自分にも魔法をかけて寝むりについた。

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