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平民の私が戦闘狂な皇帝陛下を助けたら戦いよりも求められて溺愛される存在になりました  作者: 城壁ミラノ


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第四十話 喜び

 レブナンと兵達に見送られて、ダンディアスは転移魔法でミネルヴァ達と別れた場所に戻って来た。


「ご苦労だった。また迎えに来るときは、この家に来てくれ」


 ミネルヴァの家を指して教えると、転移魔法で送ってくれた兵を見送る。


 視線はすぐに、自分の家が建つ場所に向いた。

 イザベルが切るように言った木がなくなっていて、スペースができており、そこにいた数人が近づいてきた。


「ダンディアス様、でしょうか?」


 ダンディアスは鎧姿から黒い普段着に着替えていた。

 職人達はよく見たことはないが、常人とは違うダンディアスの珍しい瞳と立ち姿だけで見当をつけていた。


「ああ。レブナンの手配した職人達だな? よろしく頼む」


 職人達はやはりと、うやうやしく礼をした。


 職人の中からリーダーが進み出た。

 図面を見せて計画を説明しダンディアスが了承すると、魔法による家づくりが始まることになった。

 それをしばし見物しようとダンディアスは道に立った。

 その時、森に続く道から駆け寄ってくるダグに気づいた。


「ダン様! お戻りでしたか」


 そばに来たダグに、ダンディアスは笑顔でうなずいた。


「ダグ、気にかけて見に来てくれたのか。俺のいない間、ご苦労だった」

「これしきの事、またいつでもいたします。ダン様は、蛮族共を無事ご牽制できましたか?」

「ああ、俺が死んだと思っていたようでな。姿を見せただけで帰っていった」

「さすがですね」


 感嘆するダグに、ダンディアスは何でもない事と微笑んでみせた。


「こちらは、何事もなかったか?」

「はい。何事もなく、いつも通りでした」

「よかった」


 安堵したダンディアスは職人達に目を向けて、


「レブナンに会って聞いたぞ。家を建てること、教えたそうだな」


 多少意地悪く流し目をくれてやった。


「は、いっ」


 口止めを忘れていたダグは、焦って固まった。


「皇帝の手配した職人の建てる家だぞ。高くつくではないか」


 ダグには遠慮なく言ってやってから、


「そうだ、金額を聞いてなかった」


 職人の方へ足を踏み出したダンディアスをダグは引き止めた。


「金額なら聞いています。金貨10枚と半金貨5枚でございます」

「そんなに要るのか?」


 やはり、高くついた!?

 相場を知らないダンディアスだが、サッと顔色を失った。


「今回の任務で、金貨1枚と銀貨10枚しか貰ってないぞ」


 他の兵士と同じようにしろと命じての額で、通常の二日分の給料と遠征時に特別に払われる金貨だった。


「まるで足りないではないか。また行かねば」

「お待ちください」


 家が建つ前にと急ぐダンディアスを、ダグはまた引き止めた。


「一度に払う必要はありません。庶民には、分割払いというものがあります」 

「分割払い?」


 首をかしげるダンディアスに、ダグはニヤリと笑ってみせてうなずいた。


「はい。一ヶ月いくらなど、払う日にちと額を決めて少しずつ払っていくのです」

「なるほど」

「これなら急いで稼ぐ必要はありません。兵士の給料から払える額を設定することもできます」

「それなら助かるな」


 二人はさっそく、職人のリーダーに交渉に行った。


 リーダーはダグからダンディアス自身が払いたがっていると聞いていたとはいえ、ダンディアス様が分割払い? と言いたげに目を丸くした。

 それでも話が着くと、ダンディアスは安心して作業を見守ることができるようになって一息ついた。


 並んで見守るダグは思いついて、


「家が完成した暁には、完成祝いに家具などを作ってお贈りいたします」


 家具を買う金を浮かせるべく、そう申し出た。


「ありがとう」


 礼を言ったダンディアスだったが、


「祝いといえば、ダグには俺の祝いではなく、レブナンが皇帝に即位した祝いに盾か鎧かなにか防具を作ってやってほしい。頼めるか?」

「レブナン様への祝いの品!」


 新たな皇帝陛下への献上品。

 ダンディアス様の時は師匠と共に作ったが今度は一人で……

 ダグはプレッシャーに息を呑んだが、覚悟を決めてうなずいた。


「心を込めて作らせていただきます」


 深々と礼をして受けるダグに、ダンディアスは微笑みかけた。


「頼むぞ」

「はい!」

「それから、ダグの結婚祝いの品をレブナンに用意してくれるよう頼んでおいた」

「えっ!?」

「なにか望みのものはあるか?」

「いえ! 望みのものなど、お気持ちだけで」

「遠慮するな」

「…………」


 確かに、こんな事は二度とない。

 思い直したダグの脳裏にフィオレが浮かんできた。


「では、私よりフィオレが喜ぶ物をなにか」

「フィオレか。やはり、髪飾りがいいか?」

「あ、髪飾りなら既に私が贈っていまして」

「あぁ、そうだったな。これはお前のアイデアだった」


 ダンディアスは髪飾り以外浮かばない自分に笑ってから、


「では、他の部分を飾る物にするか?」


 自分のアイデアで何を? と不思議そうな顔をしているダグに聞いた。


「……そうですね、結婚式でつける物など……」


 そこでダグは閃いて、職人達を見てからダンディアスに笑顔を向けた。


「結婚式で着るドレスをお願いできないでしょうか? フィオレは自分でデザインしたドレスを着たいと言っていまして、それを作って贈っていただければ大変喜んでくれるかと!」


 ダンディアス様の家を作る職人のように、レブナン様の手配した優秀な職人に作ってもらえれば!


 期待に輝くダグの瞳に、笑顔でうなずくダンディアスが映った。


「わかった。ドレスを作ってくれるように頼もう」

「ありがとうございます! では、フィオレに言ってデザイン画を貰ってきます。それから、レブナン様の防具も考えますので、今日はこれにて失礼いたします」


 お辞儀をしたダグは、町に続く道を駆けるように消えていった。


 喜んでもらえそうだな。

 見届けたダンディアスは、職人達の作業を眺めながらミネルヴァの家に向かい扉を叩いた。


 すぐに足音がして、


「どなたですか?」


 ミネルヴァの声がした。


「ダンだ」


 そう答えるとダンディアスから森の住人ダンに戻った気がして、楽しくなってきて笑った。


 そこに扉が開いて、笑顔のミネルヴァと目があった。


「ダンさん!」


 その呼びかけも、にっこりした顔も、ダンディアスの喜びを掻き立てた。


「変わりないか?」

「はいっ」


 元気な様子を目で見て確認する間、ミネルヴァもダンディアスの姿を確認した。


「お怪我はなかったですか?」

「大丈夫だ、心配ない。蛮族の一団は蹴散らし、(おさ)は俺の姿を見ただけで帰って行った」


 ダグに話した時より、多少自慢げに言っていることにダンディアスは気づいた。

 それがなぜかまではよくわからず、動きを止めて考えてみる。


「よかった」


 ミネルヴァの方は、ダンディアスの笑顔を見たら抱えていた不安が消えていって。

 ほっとしたら泣きそうになってしまい、指先で目元をこすった。


「よかったです」

「泣くことはない……」


 驚いて動き出したダンディアスは。


 どう慰めようか、今度こそ抱き寄せるか、肩に手を置くくらいがいいかと両手をまたもだもださせると――

 

 泣き顔に引き寄せられて両手で頬を包むと、指でまつ毛を濡らす涙を拭いた。


 感謝の気持ちからミネルヴァがにっこり笑うと、今度はその頭を撫でてみた。


 少し、子供扱いし過ぎたかとダンディアスは思い。

 子供みたいと、ミネルヴァは恥ずかしさに少し視線をさげた。

 

 それでも、大きな両手から伝わる温もりの中。

 安心感から落ち着きを取り戻したミネルヴァは、ダンディアスに視線を戻すとようやく想いを口にできた。


「ごめんなさい、ほっとしたら涙が出てしまって」

「心配かけたな――、蛮族とは何度も戦っているのだ、そう気にすることはない」


 なんなく言ってのけるダンディアスに、ミネルヴァは頼もしさに包まれつつ素直にうなずいた。


 ダンディアスはさっき思っていたよりもっと喜ばせてやりたくなった。

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