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幽霊事務所へようこそ  作者: 相藤自由
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クローゼット④

 翌日、森口が龍司の事務所を訪れた。

連行された荏本は素直に口を開いてすべて白状したらしい。

森口によると、女と家賃で揉めたことが始まりだった。


女は油島香苗(ゆしまかなえ)。当時二十七歳。

彼女は勤務態度が悪く勤めていたキャバクラをクビになって家賃が払えなくなった。

借金もありながら酒浸りになって働こうともせず、荏本は半年待ったそうだが改善も支払いもされなかったために退去を願い出た。

だが彼女は従わず、訪ねた際に口論の末、荏本は彼女に酒瓶で殴られた。

荏本はそれでスイッチが入り、油島香苗を殺害。

クローゼットの中に遺体を隠したのはいいが、警察に連絡したら逮捕されると同時に悪い噂が立つことを恐れて裏業者を雇った。

それからその部屋を借りた人は不審死を遂げるようになり、その度に裏業者に遺体処理を任せていたそうだ。

失踪届を偽造し、部屋が空いたと見せかけて次々に貸していたらしい。


リビングのソファで話を聞いていた龍司は「なるほどね」と灰皿に煙草を押し付ける。

森口は懐から茶封筒を取り出し、ローテーブルの上に置いて「今回も助かった」と言った。

茶封筒の厚みを見て龍司は「多いぞ」と新しい煙草に火を点ける。


「表沙汰にならなかったとはいえ十年分の事件だ。相当の価値はあるだろ」


用が済んだ森口は「じゃあまた頼むぜ」と玄関へ向かう。

キッチンにいた託也が彼の後を追い、「あの」と声をかけると森口は「どした?」と振り向いた。


「いい加減“幽霊事務所”って呼ぶのやめてもらえませんか。ちゃんと黯藤(あんどう)心霊事務所って名前でやってるんですから」


託也が不服そうにそう言えば森口はハー…と溜息をついて「いいじゃねぇか」と言う。


「だってこの“ゴーストタウン”に好んで事務所を置いてるのなんざアンタらだけだぞ?“幽霊事務所”で十分だろ」


託也が「何が十分なんですか⁉」と訊き返すが、森口はさっさと「じゃあなー」と出て行ってしまった。

溜息をついた託也が「全く…」とこぼしながらリビングへ戻ると龍司は「まあまあ」とクツクツ笑う。


「どうせ扱ってるのも幽霊関係なんだし、一緒だろ?」


「義兄さんはそうやっていつも適当なんだから」


託也はブツブツ小さな声で文句を言いながらキッチンへ戻り、料理の続きを再開する。

龍司が「飯なんか適当でいいよ」と言うと託也は「エナジードリンクとかで済ませるから絶対ダメ」と強く言った。


「俺に作ってもらうの嫌ならもう少し生活力つけてよ」


託也が心配そうに言うと龍司は「そりゃまた無理な話だ」と灰皿に煙草を押し付けた。





読んでいただき誠に感謝申し上げます。

次話からまた新しい事件が始まります。



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