恋をしちゃいました!
こんにちは!私、天使です! 名前はカスピエルって言います!言っちゃいます!!
愛称は『カスピ―』 『カスカス』 『ピエル』 色々と呼ばれてきましたけど・・・やっぱり私的には~『エル』が良いかなって思います! 呼んでくださる方も呼びやすい方が良いですもんね!ね!ね!?
いやまぁ~ぁ?欲を言っちゃえば『エル』から更に派生させちゃって『エルちゃん』って呼んで欲しいんですけどね!
まぁそんな話はさておき、私、恋しちゃったんですぅ!もー!恥ずかしいー!でもでもでも~やっぱり女の子だから恋くらいしちゃいますよね!?当然のことですよぉ!そこに天使も人間も関係ありません!
でも、他の方々からすると・・・やっぱりよくないらしくてぇ・・・これって不公平じゃないですかぁ・・・?
そこで!あなたに私の恋物語を観て頂いて判断していただきたいんです! あっ!私の恋物語をあなたに観ていただくってことは・・・あんな恥ずかしいことも観られちゃったりするってことですよね・・・?
・・・・・・いえ!やはりお願いします!そういうのも含めて判断していただきたいです!というかもう開き直っちゃいます!さあ!私の恋物語を存分に楽しんじゃってください!
大きな噴水、それを遠くから囲む様に木々が生えている その木の1本の下で白くて薄い布のローブを着ており、水色のショートヘアの女の子が同じく白いローブの女性の膝に頭を乗せている
「カスピエル...カスピエル...エルちゃーん? 起きてー?」
そんな優しい声をかけられた私は重い瞼をゆっくりあける 開いた視界には優しい笑顔をして私を見つめている女性の顔が見える 透き通るような美しく肩まで伸ばされている金色の髪とまるで空を映しているかの様な水色の瞳 私よりも先輩の天使・ウリエル様です そういえばウリエル様に膝枕をしていただいていたのでした
「ぅぅん...にゃぁ...ウリエルしゃまぁ...ぉはょぅごじゃぃましゅぅ...」
「おはよう。」
「おやすみなしゃぁぁい...」
「こーら。今日は下界に下りて様子を見に行くのでしょう?」
ウリエルはカスピエルの頭を撫でてそう言った
「!! そうでした!ウリエル様!おみやげいっぱい買ってきますからお待ちになってて下さいね!」
「えぇと...様子を見に行くのよね...?」
「はい!おみやげを買うついでに様子を見ます!」
ウリエルは苦笑いをする
「その...程々にね?」
「はい!」
私達、神様にお仕する天使達は神様に代わってお仕事をするのです 特に私みたいな下級天使は下界の様子を見に行くことが命じられています!命じられちゃってます! つまり『視察』というやつですね!
頻度は大体下界で言うところの1ヶ月くらいです!
視察で主に見るのは人間達が一体どれくらい成長しているのか? 争いは起こっているのか? また、起こっているのならその状況を確認し報告することになっちゃってます!
このままの姿で下界に下りちゃうと私がとてもとても美しい天使だとばれちゃいます 人間に天使が実在することが知られてしまっては神様から罰を受けてしまいます 一体どんな罰が与えられるのかはわからないんですけどぉ~先輩の天使の方達からお聞きした話だと禁忌を犯してしまった天使が過去に居たらしく、なんでもその天使は下界で人間の女性と恋に落ちてしまったとか...
私には恋をするということが理解出来ません 恋ってなんなんでしょうか? あ! ウリエル様にお聞きしたら良かったですね! ウリエル様ならきっと恋が何なのか知っていらっしゃるはずです! 視察から帰ったらウリエル様にお聞きしてみましょう!
カスピエルは両目を閉じる するとカスピエルの頭の上にある白透明の輪と背中の天使の翼が青白く光りだし、やがて頭の輪と翼が消える 次はローブが青白い光に包まれて水色を基調としたひらひらしているドレスへと変わった カスピエルは目を開ける
「うん!これで大丈夫!! 行ってきまーす!」
カスピエルは木々の奥にある大きな光の柱の中へ入る 次の瞬間、カスピエルは下界へと到着していた
誰も居ない裏路地から表へと出る
カスピエルの視界に映った景色は色々なお店が並んでいる商店街だった 今日は休日なのだろうか、商店街にはお店を大勢の人々が行き交っている
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!お店がいっぱいですぅ!」
カスピエルの目が輝く
「どうしましょう!? どうしましょう!? ま、まずは何か美味しいものが食べたいです! どのお店にしようかな...そうだ! 目の前のお店から手当たりしだいに行ってみましょう!」
カスピエルは目の前にある牛丼屋に入る カスピエルを見た眼鏡をかけた男性店員はいらっしゃいませ!と大きな声で言う カスピエルは店内を見渡して写真付きのメニュー表が貼られているのを見つけた
うーん・・・どれにしましょう? どれも美味しそうで迷ってしまいます... そうだ!お店の方におすすめを聞いてみましょう!
「あのー...」
「はい?」
「あなたのおすすめのメニューをお聞きしてもよろしいですか?」
「おすすめですか?...そうですね、私のおすすめは今限定でお出ししているメニュー・『焦がし味噌チーズ牛丼』ですね。」
「『焦がし味噌チーズ牛丼』ですか?」
「はい。とても美味しいですよ。」
「わかりました。それを1つお願いします。」
「かしこまりました!ご注文を確認させていただきます。『焦がし味噌チーズ牛丼』が1点でよろしかったでしょうか?」
「はい!」
「『焦がし味噌チーズ牛丼』が1点で540円になります。」
カスピエルは右手を後ろに隠した すると、右手が青白く光って1万円札が握られていた
「これからお願いします。」
「お預かりいたします。こちらお先に大きい方から5,6,7,8,9千円のお返しと、460円のお返しです。お好きな席にお座り下さい。」
「はい。」
店内にはカスピエル以外に客は居なかった
すぐ前でいいや
カスピエルは目の前の椅子に座る
天使の私がなぜ下界のお金を持っているのか不思議ですか? ふっふっふっ...! それはですね、実は視察をする私達下級天使は自分の師匠の先輩天使から下界のお金を支給されているからなのです! 視察にはお金が必要なこともありますからねぇ~! 天使としての力を行使すれば下界のあらゆることは難なく突破出来ちゃいますが、そんなことをしてしまうと先程も言った通り私がとてもとても美しい天使だとばれてしまいます...そういったことを防ぐ為に支給されているのです! 私の場合はミカエル様から支給されています ですが私の師匠はミカエル様ではありません 私の場合だけ特殊なんです 私の師匠はウリエル様なんです! 私も~ウリエル様の様に美しい天使になりたいです~!
「こちら『お水』です。」
「ありがとうございます。」
「こちら『焦がし味噌チーズ牛丼』です。」
「あり…ってはやっ!?」
「うちは『早い・美味い』がモットーなので。」
カスピエルは店員の眼鏡が光って見えた
「あ、ありがとうございます。」
「ごゆっくりどうぞ。」
店員は厨房へ去っていった カスピエルは左手で割りばしを持ち、焦がし味噌チーズ牛丼の丼を持つ カスピエルは割りばしを使って上からチーズ・牛肉・ごはんの順番で丸めながら挟んで口へ頬張る
「!!」
こ、これは...! 焦がし味噌のコクがチーズのまろやかさで包まれて牛肉とごはんの美味しさを別次元のものへと進化させています! させちゃってます! この店員...やはり只者ではなかったですね...!
カスピエルの箸は焦がし味噌チーズ牛丼を完食するまで止まらなかった
「ごちそうさまでした!!」
「おそまつさまでした!!」
カスピエルは素敵な焦がし味噌チーズ牛丼を提供した素敵な牛丼屋を跡にした
「...フフ!またのお越しをお待ちしております。」
「焦がし味噌チーズ牛丼美味しかったです~。次は何を食べましょうか...」
「おにぃ~~ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!どこぉ~!?」
「むむっ!?」
声のする方向を見ると4歳くらいで黒髪ショートヘア、そして水色の幼稚園の制服を着ている女の子が居た 女の子は牛丼屋の右斜め前にある裏路地への通路で立って泣いている
「あれは・・・もしかしてもしかして迷子ですか!? 迷子の子猫ちゃんですかぁ!?」
「うーん...助けてあげたいのは山々(やまやま)なのですが...私達下級天使が下界の者に深く関わるのはあまりよくないんですよねぇ...。」
「...ぇっぐ...っ......ぅぅっ...」
「...いやまぁー、焦がし味噌チーズ牛丼の件でもうめちゃくちゃ深く関わっちゃってますしぃ...1回関わるのも2回関わるのも変わらないですよね...?」
カスピエルは女の子の方へ歩く 女の子の目線に合わせてしゃがみ、顔を覗き込む
「ねぇねぇ、どうしたのかな?」
カスピエルこと私、エルちゃんは言葉通り天使の様な笑顔で聞きました 聞いちゃいました
「......ううっ...!」
「お、落ち着いて...! ね!?」
「...おにぃちゃんがっ...! 迷子なのぉ...!」
予想外の返答でした
「あなたが迷子じゃなくて、あなたのお兄ちゃんが迷子なの?」
「わかんないー!!」
「あらら...」
恐らくこの子が迷子で間違いないでしょうね... お兄さんの特徴を聞いてみましょう
「お兄ちゃんの服はどんな服かな?」
「...しろ...」
「模様とかはあるかな?」
「もよう...?」
あー...模様が何なのかわからないかぁ... 違う特徴で聞いてみましょう!
「ズボンは何色ですか?」
「あお!」
「なるほど...! 服は白色でズボンは青色ですか。 髪の毛は短いですか?」
「......ふつう...?」
「そうきましたか...普通ということはつまり短髪と長髪の中間ということでしょうか...? お兄ちゃんはどれくらい背が高いのかな?」
「たんぽぽよりたかい!!」
「大抵の人は蒲公英より高いと思うよ...?」
「......っぅぅ...」
「ああ!ごめんごめん!泣かないでぇー!」
「.........うん...。」
特徴がこれだけとなるとこの子のお兄さんを捜すのも大分時間がかかりそうですね......なら先ずはこの子の心を落ち着かせてみましょう!
「うーーん......」
カスピエルは辺りを見渡す
幼い子の心を落ち着かせそうなもの...いったい何でしょうか...? お洋服とか? それともおもちゃとかでしょうか? うーーん...わかり
カスピエルが必死に考えを巡らせているその時だった
ぐぅー...
お腹の音が鳴ったのだ
「お腹空いてるの?」
「ううん...。」
あらら...意外と素直じゃないのですね それとも知らない人であるこの私を警戒してのことなのでしょうか? だとしたらこの子は将来、有望ですね まあ私は人じゃなくて天使なんですけど それも普通の天使じゃなくて、とてもとても美しい天使なんですけどね・・・って、そんなこと考えている場合じゃありませんでした!
「お兄ちゃんを捜すためにもお腹いっぱいにしよ?ね?」
「...うん。」
カスピエルは女の子の頭を撫でる
「よしよし。それじゃあエルお姉ちゃんがあなたの好きなものを食べさせてあげます! あげちゃいます! 何が食べたいですか? ほらほら何でも言ってください! 言っちゃってください!」
「なんでもいいの...?」
「はい! 遠慮せずに何でも言ってください。」
「・・・お子様ランチ...。」
「オコサマランチ・・・? それはどんな物なんですか?」
「えっとね...! ハンバーグやポテトがあってね...オムライスに旗がたってるの!」
ハンバーグ、ポテト、オムライス・・・1枚の皿にそれらすべての食べ物が少しずつ盛り付けられているのでしょうか? 下界の食べ物は豪華ですね...そもそもそういった発想をするようになったのも人類の進化と言えるのではないでしょうか...? これは報告しなくてはですね!
「な、なるほど! つまり豪華な食べ物なんですね! それはどこに行けば食べれるのでしょうか?」
「レストラン...。」
「レストランですね? よーし、それでは早速レストランに行きましょう!」
カスピエルは左手で女の子と手をつなぐ
はわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ちっちゃくて温かくて可愛い手ですぅ!! 私の身体に変化が見られます! 高揚感に動悸、息切れ!? これはきっと運命です! この子を今すぐ天界に連れて帰って私の妹にしたいです! いやしちゃいましょう! だってこの子の可愛さは正に天使です!とてもとても美しい天使の私・カスピエルことエルちゃんが言うんですから間違いありません!
「...おにぃちゃん......」
はっ! しまった! 私としたことがついうっかり忘れていました! 不覚です! 今はこの子の空腹を満たしてお兄さんを捜すのが優先事項です
「さ、行きましょう。」
「うん...。」
カスピエルは迷子の女の子としっかり手をつないで商店街にあるテーブル席が10席程の大きなファミリーレストラン・『ファミレス』へと訪れた お店へ入ると20代前半程の女性店員がカスピエルと女の子の方へ来た
「いらっしゃいませ! 何名様でお越しでしょうか?」
「2名です。」
「2名様ですね? お席は喫煙席と禁煙席がございますがどちらになさいますか?」
「えっと・・・ヨクワカリマセーン。」
カスピエルは喫煙席と禁煙席が分からなかったのでカタコトで日本語が分からない外国人のふりをした カスピエルからすればそれは『周囲の人が見たら見苦しい誤魔化しをしている美少女』と見られるだろうと思ったが実際の周囲の人達は違った なぜなら、周囲の人達から見たカスピエルは本当に『日本語にあまり慣れていない若い外国人の女の子』に見えているからであった カスピエルの見た目は水色のショートヘアに紫色の瞳、そして水色を基調としたドレス姿なので十分外国人に見える というか外国人にしか見えないのであった 更に幼い女の子を連れているのもポイントが高い
女性店員が煙草を吸うジェスチャーをしながら
「スモーク?」
と聞いた
ああ! 煙草を吸うかどうかですね!
「吸わない方でお願いします!」
ジェスチャーが伝わったことが嬉しかったのか、女性店員は笑顔が強くなった
「禁煙席ですね!それではご案内いたします!」
カスピエルと女の子はファミレスの奥にある席に案内されて向かいあって座る
「ご注文がお決まりになりましたらこちらのボタンを押してお呼び下さい」
カスピエルは間髪を入れず呼び出しボタンを押した
「え!? えぇ...と...ご注文を伺います。」
「オコサマランチを2つお願いします」
「お子様ランチをお2つですね?」ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい!」
「かしこまりました。お水はセルフサービスとなっております。それでは料理が出来上がるまで少々(しょうしょう)お待ち下さい。」
女性店員が注文のメモをして去っていった
「・・・お水はセルフサービスと言ってましたけど、セルフサービスってなんですか?」
カスピエルは女の子の聞いてみた
「じぶんでみずをいれにいくんだよ...?」
「な、なるほど...! じゃあエルお姉さんがお水を入れてきてあげますね! 待っていて下さい!」
「うん...」
「・・・ところでどこにいけばいいんですか?」
「あっち...。」
女の子は水専用のサーバーを指さす
「ありがとうございます!」
カスピエルは立ち上がって先程女の子が指さしていたサーバーの方へ向かう
無色透明のグラスを手に取りトングでグラス置き場の左にあった氷入れの氷を3個入れる そしてグラス置き場の右にあるサーバーに氷の入ったグラスを置き、さらにその右のテーブルの上に貼られていたサーバーの手順通りにボタンを押して水を注ぐ
「おおー!! すごいです!! ウリエル様...! 人はこんなにも進化しています...!」
カスピエルは注ぎ終わったグラスをテーブルに置いて、2個目のグラスを取る 1個目のグラスと同じように氷を3個入れてサーバーに置き、ボタンを押して水を注ぐ 注ぎ終わったグラスを両手に1個ずつ持って女の子の居るテーブルに戻る
女の子は他のテーブルに座って料理を食べている家族を見ながら静かに座っている
もしかしてお兄さんと一緒に来て食事をしたかったのでしょうか...
カスピエルがそんな風に考えていると女の子の口から涎が垂れた
あ、普通にお腹が空いて料理見てただけだ・・・
「はい、お待たせ。お水ですよ。」
カスピエルが水を女の子の前に置く
「ありがと...」
「いえいえ、どういたしまして~。」
女の子は氷と水が注がれたグラスを両手に持って一生懸命飲んでいた
水は無くなった すごい飲みっぷりだった 女の子は氷だけになったグラスを悲しそうに見つめている
「わ、私のお水あげますから! 泣かないでください!」
「いいの...?」
「いいんですよ! また注いでくればいいだけですから。」
カスピエルは女の子にまだ口のつけていない自分のグラスを渡して氷だけになったグラスを受け取った カスピエルは再び水を注ぐ
「・・・あの子が口をつけたグラスなんですよね...」
カスピエルはグラスをじっくり見つめていけない考えをする
「ただいま~。」
「おかえりなさい。」
テーブルの上には料理が運ばれていた プレートにメロン味のゼリー、ハンバーグ、ポテト、山型に盛られたオムライスがのっていた オムライスの上には星のマークの旗が刺さっていた カスピエルの席にあるプレートのオムライスには三日月の旗が刺さっていた
女の子はお子様ランチを見ながら涎を垂らしていた
「もしかして...食べずに私のことを待ってくれていたんですか?」
「うん。」
なんてかわいい子なんでしょう!! お腹が空いているのに私なんかを待ってくれていたなんて...!
「さあ!食べましょう!」
2人は両手を合わせる
「「いただきます!」」
女の子はとても忙しく食べており、口の周りにはハンバーグのソースが付いている それを見ていたカスピエルはテーブルの端に置いてある紙ナプキンを手に取って女の子の口の周りに付いているソースを優しく拭き取る
「口の周りにソースが付いちゃってますよ、急がずに落ち着いてゆっくり食べてください。」
「...ありがとう。」
「はい。どういたしまして。」
カスピエルは優しく笑う
2人は食事を終えたので外に出て商店街を並んで歩く
「お子様ランチ...ありがとうございました。」
「いいんですよーそれくらい。 腹ごしらえも済んだことですし、早くお兄さんを見つけましょう!」
「うん!」
「蒲公英!!」
2人の前から高校生くらいの男の子が走って来た 服装は白一色のTシャツに藍色の長ズボンだった うなじ位まで伸ばされた髪が走った風の影響で揺れている
「おにいちゃんっ!!」
女の子がその男の子に抱き着く
「いったいどこに行っていたんだ!? 心配してたんだぞ?」
その声は震えてはいながらもとても温かく優しいとカスピエルは思った そして涙を流していた
「よかったですね・・・!」
どうして私は泣いているのでしょうか...? お兄さんが見つかって嬉しいはずなのに...
「蒲公英...この人は?」
「エルさん!」
「エルさん?」
「たんぽぽと一緒にお兄ちゃんを捜してくれてたの。お子様ランチも食べさせてくれた...。」
「えっ!? すみません! ご迷惑をおかけして申し訳ありません!」
「そんな...! 全然迷惑なんかじゃなかったですよ! 寧ろ楽しかったですよ~!」
「蒲公英が食べたご飯代を払わせてください!」
男の子は自分の財布を取り出す
「そ、そんな・・・! 大丈夫ですよ! 気になさらないでください!」
「そういう訳にはいきません!」
「本当に大丈夫ですから!」
「えと...じゃあ、せめてなにかお礼をさせてください。」
「そ、そんなこと言われても...あ! それじゃあ美味しい料理が食べられるお店を教えていただけますか...?」
「・・・? そんなことでいいんですか?」
「はい! 私、遠くから来ているのでわからないことだらけなんです。だから教えていただけると私とても嬉しいです。」
カスピエルは微笑む この微笑みは男の子と女の子にとってまさしく天使の様に見えていただろう
きっととてもとても美しい天使の私のこの微笑みはこの2人にはとてもとても美しい天使の様に見えていたでしょう
「美味しい料理・・・」
「コロッケ。」
女の子が男の子にそう言った
「コロッケですか!? 楽しみです!」
「それじゃあこちらへ。」
男の子は商店街にある惣菜屋を案内した
「おじさん、コロッケ3個お願いします。」
「はいよ!」
店主が揚げたてのコロッケを1個ずつちょうどいい大きさの紙袋に入れて男の子に渡す
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
カスピエルはコロッケを受け取って口に頬張る コロッケは衣がサクサクで、中がジューシーだった
「んー! とても美味しいです!」
「はっはっはっ、当然さ!」
カスピエルはお土産にコロッケを4個買った
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそ蒲公英を助けていただいてありがとうございました。」
「おや?」
カスピエルのドレスの裾を左から引っ張っている女の子が居た
「・・・また会える?」
はわわあああああああああああああああああああああああああ!! かわいいれす! かわいすぎます! ええ!? 私はどうすればいいんですか!? どうするべきですか!? この子をやっぱりもちかえるべきですかあ!? そうですよね!! 持ち帰って妹にするべきですよね!? とてもとても美しい天使ととてもとても可愛い天使の天使姉妹になるべきですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
「もちろんです! いつになるかは分かりませんが必ずまた2人に会いに行きます!」
「・・・ということがあったんです!」
カスピエルは天界の噴水近くの木の陰でウリエルと座りながら報告した
「エルちゃん。」
「はい! なんでしょうか? ウリエル様!」
「何をしに行ったのかしら?」
「視察です!」
「今のエルちゃんの報告を聞く限り、食べ物を食べていただけのように聞こえるけれど?」
「女の子も助けました!」
「蒲公英ちゃん達に料理店聞いていたわよね?」
「え?」
「・・・まさかとは思うけれど、女の子の名前は覚えているかしら?」
「? 教えてもらってないですよ?」
「・・・確かに名乗られていなかったけどわかるでしょう?」
「・・・いえ。分かりません...。」
「蒲公英よ。」
「・・・あははっ! ウリエル様っ...蒲公英っていうのは下界にある花の名前ですよ?」
「・・・じゃあその女の子がお兄さんに再会した時、どうしてお兄さんは下界の花の名前を言ったのかしら?」
「・・・」
「あの女の子の名前は蒲公英よ。 もし次に会う時があればちゃんと呼んであげるのよ?」
「はい...。」
「次はいつになるかは分からないけれどね。」
「あ! ウリエル様にお土産があるんでした! どうぞ!」
カスピエルは惣菜屋で購入したコロッケが4個入った紙袋をウリエルに渡す
「あ、ありがとう...。」
「きっと美味しいですよ!」
ウリエルは紙袋からコロッケを取り出して個包装を半分くらいのところで破って小さく食べる
「ウリエル様、どうですか!?」
「・・・ええ。とても美味しいわ。」
ウリエルは優しく微笑む その言葉と笑顔を見てカスピエルは満面の笑みになる
「・・・!! よかったです!! 今度また下界に視察に行った時にはコロッケを買いに行きますね!」
「程々(ほどほど)にね...。」
ウリエルは苦笑いをする
「はい!」
「そういえばエルちゃんが下界の視察から戻ったら、自分の所へ来るようにミカエルから言われてたわ。」
「ミカエル様がですか?」
「珍しいわよね。エルちゃん何かしたの?」
「わ、私なにもしてないですよ~。」
「本当にー?」
ウリエルがカスピエルの左右両方のほっぺたを両手で引っ張る
「ほうぉ...ぇすよー!」
「ならいいでしょう。 さぁ、行ってらっしゃい。」
「はい! 行ってきます!」
天界はとても広い それこそ下界より広いと言えるだろう 天界は天使が居る世界のことです 天使とは下界を創造された神様の代行者のことで、それぞれ階級があります 私、カスピエル等の新米天使は『下級天使』、私達より先輩で『天罰』と呼ばれる不思議な力を手に入れた天使達は『上級天使』と位置づけられています そして、それよりも高い階級に位置づけられている天使が4方、存在します その最上位の階級名は『熾天使』 今現在の熾天使は『ウリエル様』・『ミカエル様』・『ガブリエル様』・『ラファエル様』の4方です なんでも熾天使の方々(かたがた)は『天罰』の他に『神様の力と同等の力』をお持ちになられているという噂があります 噂ですけどね
そしてその熾天使の方々のためのお城があるんです 4つのお城はそれぞれ離れた場所に存在しており、今から向かうのは熾天使の1方 『ミカエル様』のお城です
ミカエル様は私の最初の師匠だったのですが、神様のお告げでウリエル様と交代ということになったのです それでも私にとってはとても偉大な師匠の1方です
カスピエルが歩いていると銀色と赤色を基調とした城が見えた その城はミカエルの城だった
「着きました...。ミカエル様のお城...久しぶりに訪れました。」
カスピエルは城のドアを叩く
「カスピエルです! ウリエル様からミカエル様にお呼びされていることをお聞きしてお伺いしました!」
カスピエルがそうドアに叫ぶと ドアがゆっくりと開かれた 開かれたドアの先には赤色のショートヘアに青い目 鍛え抜かれた美しい肉体 『熾天使 ミカエル』だった
「待っていたぞカスピエル。中に入るといい。」
「はい!失礼致します!」
カスピエルはミカエルの後を歩く 通路には黄金の槍が2メートル程の等間隔で両端に立てかけられている その黄金の槍はとある部屋のドアの前まで続く その部屋とはミカエルの城の1階の中心にある大広間だ 大広間の規模は約100人程でパーティーが行えるくらいで、部屋の中央には半径1メートルのガラスで作られた円形テーブルが置かれている その円形テーブルの周囲には等間隔で背中置きが付いている金色の椅子が8脚ある
「さぁ、椅子に座りたまえ。」
ミカエルがカスピエルが立っている所からガラステーブルを挟んだ向こう側の椅子に座ってそう言った
「はい!失礼致します!」
カスピエルは目の前の椅子に座る
「視察に行っていたそうだな?」
「はい!」
「どうだった? 争いは起きているか?」
「いいえ。 特に争い等は起きていませんでした。」
「なにか変わったことは?」
「人の考えと技術に進化が見られました。」
「ほう? 進化とは一体どんな?」
「はい!料理がとても美味しかったです!」
真面目な顔でカスピエルはそう答えた
「・・・クックックッ!アッハッハッ! そうかそうか! いやすまない。俺の予想外の返答だったんでな、つい笑ってしまったよ。」
ミカエルは豪快に笑う
「そ、そんなに意外でしたか...?」
「まぁな。うむ、カスピエルはカスピエルなりに頑張って視察を行っているのだな。」
「は、はい!」
「それでは本題に移ろう。カスピエル、神様からお前に通告があったのだ。」
「か、神様から私にですか!?」
「そうだ。」
「わ、わ、私、何か至らないことがあったのでしょうか!?」
「安心しろ。そういうことではない。」
「え...じゃあ一体どういうことなんでしょうか...?」
「嬉しい知らせだ。先日、ガブリエルが神様から通告を受け取った。その通告の内容とは『熾天使ウリエルの弟子である下級天使・カスピエルのこれまでの功績を称え、カスピエルは本日をもって階級を上級天使に昇格とする。』」
「私が・・・上級天使・・・?」
カスピエルは呆然としている
「大丈夫か?」
「し、信じられません...。」
「ハッハッハッ! みんな最初はそんなものさ。 だがここで驚くのはまだ早いぞ。 まだ通告には続きがあるからな。」
「えっ?」
「続きにはこう書かれている。 『上級天使となったカスピエルには天罰・《運命の書》を授ける。 それと同時に天界の書庫の司書に命ずる。 引き続き視察の任にも励むべし。』」
「『天罰・運命の書』の授与と天界の書庫に司書として任命...こんなことがあっていいんでしょうか?」
「神様が決められたことに不満があるのか?」
「と、とんでもないです! 私なんかには幸福過ぎて戸惑っています...!」
「神様はカスピエルが相応しいと考えられたのだ。 お前の師であるウリエルも鼻が高いだろうよ。」
「ありがとうございます。」
「天罰は既に与えられているはずだ。使い方はこの紙を見るといい。」
ミカエルは1枚の紙を渡す カスピエルはその紙を受け取った
「話は以上だ。 早く帰ってウリエルに伝えてやるといい。」
「はい!! そうします! ミカエル様! ありがとうございました!」
「ああ。」
カスピエルは走ってウリエルのもとへ戻る
噴水の近くの木々の下に座っているウリエルの隣でカスピエルはミカエルの城での出来事を話した
「やったわねエルちゃん! さすが私の弟子だわ。」
ウリエルはカスピエルの頭を優しく撫でる カスピエルはウリエルに頭を撫でられて気持ちよさそうだ
「うにゃ~...」
「フフ...猫じゃないんだから。」
「ウリエル様に撫でられるなんてとても嬉しいことですから! あと気持ちいいですし。」
「あら? それじゃあもっと撫でちゃいましょうか?」
ウリエルはカスピエルの髪をクシャクシャと撫でる
「えへへー。」
「・・・本当におめでとう。 あなたが私の所に初めて来た時のこと、今でも昨日のことのように覚えているわ。 おとなしいというか人見知り...いえ、それも違うわね。 まるであらゆることに怯えている子猫のようだったわ。 それが今じゃこんなにも人懐っこい猫になるなんて...。」
「例えは全部猫なんですね...。」
「あなたが最初に『うにゃ~』って言ったからでしょ? ダメかしら?」
「いえ!私が猫のようにとてもとても可愛いということですよね!? ありがとうございます!」
「エルちゃんはすぐに自画自賛に持っていくわね。」
「それはなんたって私はウリエル様の弟子ですからね!」
「なるほど。 さすが私ね。」
2人は笑い合う
「そういえば、天罰の使い方は分かる?」
「いえ、分かりません。 ミカエル様は確か『神様は既に天罰を私に授けてくださった』とおっしゃっていました。」
「そうね。 私が初めて神様から天罰を与えられた時もそうだったわ。 上級天使に昇格するという知らせと同時に既に与えられているという知らせを受けた...天罰の使い方の紙も渡されてね。」
「そうでした! ミカエル様からその紙を頂いたのでした!」
カスピエルは紙を取り出す その紙には『天罰・運命の書 使用方法』と書かれている
「運命の書...それがエルちゃんに与えられた天罰...。」
「ウリエル様、聞いたことおありなんですか?」
「いいえ、ないわ。 というか恐らく私達に与えられる天罰に同じものはないと思うわ。 私が知る限り同じ名前の天罰を持っている天使はいないもの...上級、熾天使共にね。」
「そういえば以前からお聞きしたかったんですけど、ウリエル様の天罰は神様のお力に等しいとは本当のことなんでしょうか?」
ウリエルは右手の人差し指をカスピエルの唇にあてた そしてカスピエルに囁く
「ダメよエルちゃん。 ここは天界、誰がいつどこで聞いているかわからないのだから神様に対してのそんな言葉を絶対に口にしちゃダメ。」
カスピエルは真剣な表情になって小さく頷く
ウリエルは頷いてゆっくりと人差し指をカスピエルの唇から離す カスピエルは頬が紅潮しており、どこか名残惜しそうな表情だ
「・・・確かにそんな噂が天使達の間で流れているのは知っているわ...。 でもあくまで噂にとどめておくべきよ。 それにエルちゃんはもうすぐ熾天使になれるかもしれないのだし、その時になれば満足するわよ。」
「ウリエル様、まだ気が早いですよー。 ようやく下級天使から上級天使に昇格できたばかりなんですからー。」
「そうだったわね。 そうだエルちゃん、今から書庫に行きましょうか! 案内するわ。」
「はい! 是非お願いします!」
カスピエルはウリエルに書庫を案内された 書庫は円柱になっており、本棚もそれに沿って設置されている 本棚は高さおよそ10メートル程まで繋がっている
「そういえば私、この書庫に来たことありませんでした...こんなにもたくさんの本があるんですね。」
「そうよ。 神様の叡知が詰まっていると言っても過言じゃないわ。」
「そんな書庫の司書が私だなんて...私に務まるでしょうか?」
「エルちゃんなら大丈夫よ。 なんたって私の弟子なんだから!」
「もう、ウリエル様そればっかりですね~。」
「エルちゃんに教えてあげる。 私の強さの秘訣は謙遜せず、謙虚にならず、自分を褒めて自信をつけることなの。」
「な、なるほど...肝に命じておきます。」
「ええ。この書庫の司書になったんだから、エルちゃんは基本的にここにいることになるわね。」
「そうなると視察の時はどうすればいいのでしょうか? 確か神様からの通告には視察も引き続きするようにとありました。」
「代わりの天使は居ないから閉めることになるか、或いは今みたいに解放したままになるかね。」
「・・・そういえば私が司書に命じられましたけど、私より前にここの司書に命じられた方は今までいらっしゃらなかったのですか?」
「私が知る限りは居ないわね。 たぶんエルちゃんが1人目の司書なんじゃないかしら?」
「私が初めての司書...余計にドキドキしてきちゃいました...。」
「フフッ...大丈夫よ。 ......そういえばエルちゃんに教えておかないといけないことがあったわ。」
「なんでしょうか?」
「この天界の書庫には特定の者しか読んではいけない禁書があるの。 それはたとえ天界の書庫の司書に命じられたエルちゃんも読んではいけない。」
「わ、私でもですか!? いったいどなたが読めるのでしょうか...?」
「神様が再確認のために読まれるわね。 あとは天使なら階級が熾天使の者と神様に許可をいただけた者ね。」
「つまり、ウリエル様はその禁書の内容をご存じなのですね?」
「まあね。 でもあまりいい内容ではなかったわ。」
「うぅむ...そう言われると気になって読みたくなってきました...。」
「ダメよ。 それでももし読みたいのであれば熾天使になることね。」
「? しかしウリエル様は先程、熾天使以外は神様に許可をいただけた者なら読むことができるとおっしゃっていましたよね?」
「ええ、確かにそう言ったわ。 でもよく考えてエルちゃん。 普通は熾天使のみが読むことを許されているということは、少なくとも熾天使に相当する資格がある者ということにならないかしら?」
「・・・つまり可能性は限りなく低いということですね...」
「そういうこと。 さっ、それじゃあ私は戻るわね。」
「はい! ありがとうございました!」
1週間後 カスピエルが天界の書庫にて本をよんで過ごしていた時だった
「パラパラパラパラッラッラッパラー!!」
ラッパを鳴らす音が聴こえてきたのだ
「ななななんですかー!?」
カスピエルが慌てて窓の方へ目をやるとそこには、誰もいなかった
「? ラッパの音がしたのに誰もいません...。 おかしいですね...。」
カスピエルがそう疑問に思っていると、背後から声をかけられた
「いったいなにがおかしいんだい?」
「・・・うわぁお!?」
カスピエルが振り返るとそこには肩まで伸ばされている緑色の髪の男性がいた 白いローブを着ており、鎖がつけられている小型のラッパをネックレスのように首からぶら下げている
「ガ、ガブリエル様!? お、おはようございます!」
「おはよう。 でも女の子が『うわぁお!?』なんて驚き方しちゃいけないよ。」
ガブリエルは微笑む
いや、あなたが驚かせたからです!!
「あら? ガブリエル、それはイメージの押し付けじゃなくって? 女の子だって『うわぁお!?』くらい言うわよ?」
「ウリエル様!?」
「でもウリエル、俺達天使はイメージも考えないといけないんじゃないか? 『うわぁお!?』はやっぱりないよ。」
やめてください! うわぁお!?を掘り下げないでください!! 私が恥ずかしいですぅ!!
「わざわざ下界の人間のイメージを気にしちゃいけないなんてむかつくじゃない!関係ないわよ! 大体そんなんだからあなたはラファエルにふられるのよ。」
ここにきてまさかの新事実!? でもウリエル様、それは関係ないんじゃ...
「うぅ...。」
泣きました!! ガブリエル様意外と打たれ弱いです!!
「ウ、ウリエル様! いくらなんでも言い過ぎですよぉ...!」
「てへっ!」
ウリエルは左目でウィンクをし、左手の握りこぶしで自分の頭を軽くコツンとする
可愛いです! でも絶対今じゃない!
「それでカスピエルになんの用よ? 耳障りなラッパを鳴らしてたってことは神様から通告があったんでしょう?」
そしてウリエル様の当たりが強いです! ガブリエル様が可哀想すぎます!
「ああ。 神様が上級天使カスピエルに通告をされた。 その通告の内容は下界の視察だ。」
「視察ですか? しかし前回の視察から1週間しか経過していませんよ?」
「確かに今までは約1ヶ月程での間隔だったけれど、なにも明確にそう決まっているわけじゃないしね。」
「・・・。」
「どうかしたかい? ウリエル。」
「その視察は他の天使もなのかしら?」
「? いや、カスピエルしか俺は聞いていないな。」
「私だけ?」
「なにかひっかかるわね...」
「ウリエル。 これは神様の決定なんだぞ? その発言は危険だ。」
「批判じゃなく疑問よ。 それくらいなら問題ないでしょう?」
「大ありだ。 神様の考えに疑問を持つことなど許されない。」
「うるさい男ね。 だからあなたラファエルにふられるのよ。」
「ウリエル様!? さすがに今の流れでそれは八つ当たりなのでは!?」
「エルちゃん、私は天使のトップ・熾天使ウリエルよ? これくらい許されるわ。」
「ええ...」
絶対にトップがしてはいけない発言です...
「ま、まあ今回下界で何か起きているからカスピエルを向かわせるのかもしれない。 なんだかんだ言って一番下界に視察に行っているのはカスピエルだからな。」
「そうなんですか?」
「ああ。他の天使は半年に1回の間隔だったりするよ。」
「やはり優れた私の優れた弟子であるエルちゃんだから神様も期待してらっしゃるのかしら?」
「すごい自信と評価だね...。」
「だからあなたラファエルにふられるのよ。」
「今の発言は関係ないよね!? 何!? ウリエルは俺のこと嫌いなの!?」
「まあ否定はしないわ。」
「してよ!」
「ガ、ガブリエル様...私でよければ相談に乗りますのであまり気を落とさないで下さい...!」
ガブリエルはカスピエルの両手を両手で包むように握る
「本当かい!? カスピエル! 君はなんていい子なんだ! ウリエルと違ってまさに天使のようだよ!」
「いえ、私も一応天使です...。」
「私のエルちゃんに気安く触るな。」
ウリエルはガブリエルのお腹を右足で蹴る
「ぐふっ...!」
ガブリエルはお腹を抑えてゆっくりと倒れる
「だ、大丈夫なんでしょうか...?」
「大丈夫よ。 こいつは仮にも熾天使なんだから残念なことにこれくらいじゃ死なないわ。」
「ウリエル様、ガブリエル様と何かおありだったんですか?」
「別に。 ただこいつに何度も告白されてるラファエルが可哀想で...!」
「そうなんですね...。 ラファエル様ってそんなにも美しいお方なんでしょうか?」
「あれ? エルちゃんはラファエルに会ったことないの?」
「はい。 そもそも下級天使は熾天使の方々(かたがた)にお会いすること自体が滅多にありませんから...上級天使の方にお会いすることも多くはないですね。 まぁ私の場合は特別な気がします。 ミカエル様にお会いしてガブリエル様から神様の通告を受けてウリエル様とお会いできたのですから。」
「そう言われてみたら私もエルちゃん以外の天使達には中々(なかなか)会うことはなかったわね」
「ですからラファエル様がどういったお方なのかも私は知りません...。」
「ラファエルがなんて言われているのかも知らない?」
「はい。」
「ラファエルはまさに美少女ね。 下界の人間達の持つ天使のイメージに一番近いんじゃないかしら? いくらとてもとても美しく凛々(りり)しい熾天使の私でもあの可愛さには勝てないわ。」
「ウリエル様よりもですか!?」
「ええ。 現に私もラファエルにメロメロよ。」
「な、なるほど...。 ? 結局ラファエル様はなんとお呼びされているのですか?」
「『癒しのラファエル』...そう呼ばれているわ。」
「癒し...ですか。 うぅむ...これだけだと美しいお方としか分かりませんね...。」
「一度会ってみる? 私ならラファエルにエルちゃんを会わせることができるわ。」
「いえ! ただでさえ熾天使の方々とお話するのは心臓が張り裂けそうですから!」
「あら? それじゃあ私とお話している時もエルちゃんの心臓は張り裂けそうなのかしら?」
「いえ! ウリエル様はもう慣れました!」
「そ、そう...」
ウリエルは気を落とす
「それでは下界の視察へ行ってきますね。」
「ええ。」
カスピエルは以前と同様に下界へと降りた
「さて、どこへ行きましょうか? ん?」
カスピエルは数メートル先に蒲公英の兄を見つける
「あの人は蒲公英ちゃんのお兄さん! おーい! 蒲公英ちゃんのお兄さーん!!」
カスピエルは蒲公英の兄を呼びながら走る 蒲公英の兄は振り返る
カスピエルは地面につまずいて顔から盛大の転んだ
「いてて...。」
「大丈夫ですか!?」
学ラン姿の蒲公英の兄は転んだカスピエルのもとへ慌てて駆け寄る
そして右手をカスピエルに差し出す
「あ、ありがとうございます!」
カスピエルは差し出された手をとる しかし、蒲公英の兄の想像以上にカスピエルの勢いが強かった 蒲公英の兄は後ろに背中から倒れる 右手を握っているまま倒れたため、カスピエルは蒲公英の兄に覆いかぶさる様に倒れた
「いてっ...!?」
蒲公英の兄の胸の上にカスピエルが密着している 触れ合っている柔らかく温かい感覚に蒲公英の兄は照れる
「いてて...!? ご、ごめんなさい!」
カスピエルは照れてすぐに離れる 2人は立ち上がった
「改めて、お久しぶりです! 蒲公英ちゃんのお兄さん!」
「えと、俺の名前は紫苑です...。」
「なるほど! 紫苑くんですね!」
「は、はい。」
「どこかへ行かれていたんですか?」
「いえ。 学校から帰っている最中でした。」
「帰宅中だったんですね!」
「エルさんは何をされていたんですか?」
「遊びにきました!」
「成る程...。」
「でも特に行きたい所がないんですよね~...。」
「・・・よかったら案内しましょうか?」
「え!? いいんですか!? ぜひお願いします!!」
カスピエルが紫苑に顔を近づけて満面の笑顔でそう言った 紫苑は照れた
「ど...! どんな所が良いとかありますか? 食事をしたいだとか遊びたいだとか...。」
「まずは遊びたいです!」
「それじゃあゲームセンターに行きましょう。」
「げーむせんたー?」
紫苑は商店街にある2階建てのゲームセンターにカスピエルを案内した
「なんですかこれ!? なんですかこれ!?」
カスピエルは猫のぬいぐるみが入っているUFOキャッチャーを見てはしゃいでいた
「こうするんです。」
紫苑は100円玉を2枚入れて猫のぬいぐるみを取ってみせた
「す、すごいです! 紫苑くんは天才ですね!」
「誰でもできますよ。」
紫苑は微笑んだ
カスピエルは銃で撃つゾンビゲームをする
『GAME CLEAR!!』
「100円でクリア!?」
「えへっ! すごいですか?」
カスピエルは両手を後ろで組んで笑ってみせた 紫苑はその笑顔に思わず心を奪われた
「紫苑くん! あれはなんですか!?」
カスピエルはプリクラの機械を指さす
「あれはプリクラです。 写真を撮れるんです。」
「なるほど! じゃあ撮りましょう!」
カスピエルは右手で紫苑の左腕を引っ張る カスピエルは右手で紫苑の左腕を抱き寄せ、左手でピースをする カスピエルは無邪気な笑顔で 紫苑は少し恥ずかしそうな笑顔でプリクラを撮った
そして2人がゲームセンターから出ようとした時だった 紫苑とは違う学ランを着ている男2人が絡んできた 2人のうちの1人がカスピエルの腕を掴む
「ねーねー、俺達と遊ぼうよー。 こんな奴ほっといてさー。」
「やめてください!」
紫苑がカスピエルの腕を持っている男の腕を掴み握力で離させる
「エルさんから手を離せ!!」
「!!」
紫苑くん...! とてもかっこいいです...!
「て、てめえ...! 調子のってんじゃねえ!!」
男2人は紫苑に殴りかかる 紫苑は右足でお腹を蹴って1人ダウンさせる
もう1人の拳が当たる直前、カスピエルは男の右脇腹に左手で触った
「...運命の書!」
その声は紫苑に聞こえない程の小声だった 男の動きが止まり、脇腹に『気絶する』と文字が浮かび上がった
男は倒れた 紫苑は振り向いて不思議に思う
「紫苑くん、帰りましょう。」
「そうですね。」
2人は並んで歩く
「それじゃあ私はこれで失礼しますね。 紫苑くん。 今日は楽しかったです! 本当にありがとうございました!」
「あ、あの!」
「はい?」
「エルさん...また、会えますか...?」
紫苑は寂しそうで切なそうな表情で聞いた カスピエルは笑う
「もちろんですよ! またお会いしましょう!」
「・・・ということがあったんです!」
カスピエルは天界の書庫でウリエルと今回の視察を話していた
「・・・エルちゃん。」
「はい? なんでしょうかウリエル様?」
「恋愛ってしたことある?」
「そういえばウリエル様に恋がなんなのかお聞きしようと思っていたんです!」
ウリエルは頭をかかえた
「・・・恋っていうのはね、その...『この人と一緒に永遠を過ごしたい』とか『幸せになりたい』とか『誰にも渡したくない』って思うことかしら...。」
「なるほど...わたしもいつかそう思える方に巡り会えるでしょうか?」
「エルちゃんはもう恋してるわよ。」
「え?」
「今日の出来事をよく思い返してみて。」
「今日の出来事をですか?」
『エルさんから手を離せ!!』
「・・・っ!?」
な、なんででしょう...? 紫苑くんのことを思い出すと...身体が熱くなってきます...!?
頬を紅潮させたカスピエルを見て、ウリエルは言った
「エルちゃん、あなたは紫苑君に恋をしたのよ。」
「ーーーーーーっ!?」




