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9 僕が勝者?

 バタバタバタバタ


 ものすごい慌てた様子のルッカに手を引かれ僕はどこかに向かっている。


「ちょっと……そんなに慌てなくても……」


「何言ってるんですか! もう既に遅刻してるんですよ、この試験は担当士様だけでなくトキマル様まで見にくるんです、遅れたら大変なのに」


「そんなこと言ってもさ、久しぶりの布団はやっぱり寝心地が最高で……」


「もう……一年前と全く変わってないんだから」


「やっぱり試験受けなきゃダメなのかな……?」


「しょうがないじゃないですか、ドグルさんをあれだけ怒らせちゃったんですから、あそこで受けないなんて言ったらそれこそ何をされるかわかりませんよ」


「はぁ……」


 難しいなぁ人間関係って……



「着きました、こちらの広間です」


「あっ、ゴルさんがいる、トキマルさんも」


 トキマルさんを中心にズラッと10人近くの人が飾り付けられた豪華な椅子に座ってる。


「あの方達は『世界樹』の幹部ですから。トキマル様がリーダーで、ゴル様を含めた7名のサブリーダー全員が立ち会いでこの試験は行われるんです。 遅刻なんて絶対にダメなんです!」


「そんなこと言われても……聴いてなかったしなぁ」


「説明しようとする前に寝ちゃったからです! もう、本当に全然変わってないんだから……」


「うわ……すごい人の数……」


 広間の中に入ると、正面に座ってる幹部だけでなくたぶんひらの人達が床に大勢座ってる。


「入れ替え試験でこんなに人が集まることは普段ないんですけど……リミト様、なんだか注目されているらしいですよ」


「僕が?」


 何かやっちゃったのかな……?

 嫌だな、これ以上変なことに巻き込まれるのは……



「遅えっ!!」


 ものすごい怒鳴り声がした。

 対戦相手のドグルさんだ……


 広間の中心で一人立っている。

 もしかして、もう試合開始ってことなのかな?


「すみません、ひさしぶりの布団が気持ちよくて寝坊しちゃいました」


 怒ってる相手には素直に謝ろう。

 これ以上嫌われて変に絡まれるのはごめんだ……


「相変わらずナメた奴だな、偶然ダンジョンのモンスターを全滅させたくらいで調子に乗るなよ」


「はい……すみません」


 僕の姿を見てトキマルさんがゆっくりと立ち上がった。


「はーい、じゃあこれから試験をはじめるよー」


 大勢の前でもこの人ってこんな感じなんだ……

 なんか肩の力がぬけちゃうなぁ。


「一応ね試験って言ってるけど手は抜かないようにね、本気でやらないと意味がないからさ。じゃあどうぞ〜」


「えっ? 今ので始まり?」


 ゆるっ! でも観戦に来た人達が静かになった。本当に今ので始まりなんだ……


 試合が始まってドグルさんは意地悪そうにニヤついた。


「もうこれで何をやっても公認だ……俺を馬鹿にしたこと、たっぷり後悔させてやるからな」


「してません。ちゃんと謝ったじゃないですか」


 結構しつこい人だなぁ……めんどくさい……


「お前、俺が世界樹で一番下って言ったよな? それは間違いだ。俺は自分で立候補して世界樹に入ろうとする奴らを潰してるんだよ、弱いくせに粋がってる奴は見てて腹が立つからな!」


「そっか、ドグルさんはそのことに怒ってたんですね」


「あぁ……!?」


 うわっ、怖い顔……

 またドグルさんが苛立いらだってる……難しいなこの人……


「お前は人をムカつかせる天性の才能があるみたいだな!」


 ドグルさんが両手を広げて、体を覆うように魔法陣を浮かび上がらせた。


「おー、おっきい……」


 ドグルさんの体を遥かに上回る巨大な魔法陣が僕に向けられている。

 赤色の術式、これは火属性の中級魔法あたりかな……


「こんな巨大魔法陣見た事ないだろ? 魔法の威力ってのは魔法陣に依存するだよ、俺は誰よりもでかい魔法陣が作れる! 要は最強なんだよ!」


「そうなんですね……」



 巨大な魔法陣が向けられ静まり返る中、スッとトキマルさんが立ち上がった。


「勝負はついたみたいだから俺は行くね」


 出て行っちゃうの? 嘘でしょ……


 誰も止めることなく、トキマルさんは笑顔でスタスタと広間を出て行ってしまった……


「始まったばかりなのに……いいのかな?」


「この魔法陣を見りゃ当然そう思うだろうな! お前にこんな事できるはずもないんだからな!」


「確かに……する必要がないですし」


「あぁ……!?」


 ダメだ……また怒らせてしまった……

 この人の沸点が全くわからない……


「いいか! 俺の|フルフレイム(火属性中級魔法)は一味違うぞ! 死んだって知らねえからな!」


 魔法陣から大きな魔法陣に劣らないほど巨大な火のかたまりが放たれた。


「すごい…………これって|フレイム(火属性低級魔法)の何発分くらいの威力なんですか?」


「はぁ? フレイムなんて比較になるか! 百発打ち込んだところでこいつは超えられねえ!」


「じゃあ千発ならどうですか?」


「うるさいんだよぉぉぉ!」


 ジュォォォォォォォォォォォォッ!!!


 ドグルさんのフルフレイムに飲み込まれた……


 確かによく練られたいい魔法だ。


 シュゥゥゥゥゥ………………


「あっ、もう終わっちゃった……」


 フルフレイムが消滅しちゃった。

 フレイム百発じゃ足りないっていうからもっとすごいと思ってたのに。


「お、お前なんで全く効いて無いんだよ……」


 なんだかすごく驚いてるみたいだ。

 

「ドグルさん、今の魔法、百発分の威力は無いです、せいぜい十数発くらいしか……」


「そんなことどうでもいい! なんで俺の魔法が効いて無いんだ!? まさかお前、魔法が効かない特殊体質でも持ってるんじゃ……」


「そんなもの存在しません、魔法で防御しただけです」


「バカな! だってお前魔法陣が出てなかったじゃないか、しかも俺の魔法を無傷で受け切れるはずが……」



「はーーい、終了しゅーりょーー!」


 ドグルさんの話してる途中でゴルさんが割って入ってきた。


「終了!? ゴル様、どういうことですか?」


「トキマル様も言ってたろ、もう勝負は着いた、君自身が一番分かってるんじゃないか?」


 ドグルさんが目を大きく見開いた。


「俺は……くそぉぉ! くそぉ…………」


 そう言うと糸が切れたようにその場でべたりと膝をつき天を仰いだ。


「ドグルさん、大丈夫ですか?」


 まだ何もしてないのに急にどうしちゃったんだろ?


「リミト、勝者が敗者を慰めるもんじゃない」


「僕が勝者……?」



 そういえばさっきから試合を見てた人達がざわざわと騒ぎたててる。


 すごい見られてる……


 ドグルさんに怒られないように必死であまり意識してなかったけど、これだけの人達に注目されているのが恥ずかしくなってきた……



「ということで、君は正式に『世界樹』入り決定だ。面倒なことも多いけど頑張ってよ」


 あ、そっか……

 この試合に勝ったら『世界樹』に入るんだっけ……


 世界樹ってのんびりできるのかな?

 そもそもここって何するところなんだ……?


ここまでお読みいただきありがとうございます。


少しでも興味を持っていただけたようなら、ブックマークや下の☆にチェックしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。

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