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8 対戦相手のドグルさん

 抱きついてきたルッカは僕の胸で泣き出した。


「ちょっと……ルッカ、どう言うこと? なんでこんなところにいるの?」


 今はパゾの使用人をしていたはずなのに……一年の間に何かがあったんだ。

 泣き崩れるルッカはグシグシと涙を拭って僕と顔を合わせた。


「本物のリミト様だ……うれしい」


「それよりさ、なんでルッカはここに?」


「リミト様が屋敷を出てからすぐ、トキマル様に認められて世界樹の一員となれたんです」


「ルッカはもう世界樹に入ってるんだ。ダンジョンには行かなかったの?」


「えっダンジョン? そんなものは行ってませんよ」



「試験前の訓練はトキマル様が判断し、各々にあったものを用意するんだ。ルッカはすぐに素質を認められて世界樹入りすることになった」


「あああっ! ゴル様、説明をしていただいてありがとうございます! 申し訳ありません」


 ゴルさんがちょっと喋っただけでルッカは過剰なほど頭を下げた。

 もしかしてゴルさんも結構えらい人なのかな。


「いーや、ちょうどよかったよルッカ、トキマル様に面倒な案内をやらされちゃって大変だったんだよね、二人知り合いなんだろ? この建物のこと、案内してやってよ」


 嘘だ、ゴルさん全然案内してくれてなかったぞ……


「わかりました! じゃあ世界樹の中のことは私が案内させていただきます!」


「うん、よろしく〜。あっ、でも待てよ、試験のことはどうしようかな、リミト君試験受ける気ないんだってさ」


「えええっ! リミト様、世界樹に入らないんですか?」


「うん……だって試験って闘わなきゃいけないんでしょ?」


「確かにそうらしいんですけど……」


「無理して戦いたくないからなぁ」


「そうらしいよルッカ。久しぶりに会えたのに残念だろうけど、ここでまたお別れかもね」


「そんな……でもリミト様がそういうのなら……」


「そんな悲しそうな顔しないでよ……」


 ここにルッカがいるなんて思わなかったからなぁ……

 ルッカがいるならこの場所にいるのもちょっとは悪くないような気はするけど、やっぱり血統っていうのはなぁ……


「あっ……」


 ルッカが急に下を向き顔を背けた。


「えっ、急にどうしたの? 大丈夫、ルッカ?」



「ルッカ? おっ! こんなところにいたのか、探したぞ!」


 なんだ? また誰か来た……

 ダミ声でルッカを呼ぶ声の先から子綺麗な服を身につけた金髪の男が近づいてきた。


「あっ、ゴル様もいたんすね! こんちは〜」


 軽っ……こういう人もここにいるんだ。

 ルッカと同じくゴルさんもこの人のことが苦手そうで、返事もせず身を引いてる……


 僕のことにも気がついて話かけてきた。


「おや……見ない顔だねぇ、もしかしてこの世界樹に入りたいって人かな?」


「考え中です……」


 そう答えると、この人の顔がにやけて笑った。


「悩んでるくらいならやめておいた方がいいよ、なんせ次の試験の相手は俺だからな」


 この人が世界樹に入るための試験の相手なんだ……


「入れ替え制の試験を受けるってことはあなたが世界樹で一番下ってことなんですか?」


 こんなに自信満々な態度なのに……


「なんだと……?」


 あっ、まずいことを言ってしまったみたいだ……この人の顔が一気に赤くなった。


「クハハハッ! リミト君、面白いねぇ、トキマル様も困ったと言っていただけのことはある!」


 ゴルさんまで急に変な笑い方をし始めた……そんなにまずいことを言ってしまったのか僕は……


「もう! リミト様! 失礼じゃないですかそんなことを言ったら!」


「えっ、ルッカまで……僕の何がいけなかったのかさっぱり……」


「ドグルさんはプライドが高いんです。一番下とか言ったら失礼ですよ!」


「プライド高いとかっていうのはいいの?」


「あっ……」


 ルッカと同時にドグルさんっていう金髪の男の人の顔を覗き込んだ……


「てめえ……なんでルッカと仲良く喋ってるんだよ……」


「へっ? 気に入らなかったのはそこだったんですか?」


 変な人だなぁドグルさんって……


「そこだ! 馬鹿野郎!」


 怒られちゃった……

 騒ぎを聞きつけてあちこちから世界樹の人達が様子を見にきた。


 はぁ……なんでこんなことになるんだ……


「面倒だなぁ……」


 あっゴルさんと気持ちが被った。


 大きくため息をついた後ゴルさんがドグルさんにむけて話だした。


「ドグル〜、興奮するのはいいけど、ここで試験の相手に手を出したら失格になるから気をつけてね、失格ってことはどういうことかはわかってるよね?」


 冷静に伝えるゴルさんの顔を見てドグルさんの顔からさあっと血の気が引き「チッ」と舌打ちをした。


「わかりました……手は出しません」


 ドグルさんはそう言ってから僕に顔をグイっと近付け凄みながら話かけてきた。


「絶対に逃げるんじゃねえぞ。もし試験を受けないっていうんならこの場でお前のことやってやるからな」


「……」


 何も返事できなかった……下手なことを言ってこれ以上怒らせたらいけないって感じた。

 たった一瞬でここまで人に嫌われたのは初めてだ……ちょっとショックだなぁ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


少しでも興味を持っていただけたようなら、ブックマークや下の☆にチェックしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。

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