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3 トキマル

「処刑か……」


 殺されるのを喜ぶ人なんていない、当然僕だって嫌だ……


 父様は誰かが来るのを待ってるような感じだった。

 その人が来た後に僕は処刑される。


 その前になんとかできなければ本当に終わり……



 パゾの気持ちを変えることができたら回避できそうだけど、もうここに来てくれることなんてないだろうな……

 父様だって同じ、兄様達の声は全然聞こえてこないからもう帰ったんだろうな。


 ルッカもあれから扉の前に来なくなった、話ができないんじゃ解決しようがない。



 せっかくのんびりできるかと思ってたのに、まさかこんなことになっちゃうなんてなぁ……



 もういっそこの家から出て行った方がいいのかな。


 残念だけどもうそれくらいしか逃げ道がない……



 この部屋は一階、壁さえ壊してしまえば外へは簡単に出れる。



 鉄で覆われた壁だけど、バレないように大きな音を立てず壊せれば……


 外壁側の壁に手を触れて目を閉じた。


 やってみよう……

 この家から出て行く……


 壁に魔法陣を浮かび上がられる。


 『地』属性の低級魔法『アース』。

 地震や地割れ、土の柱を作ったりできる魔法だけど、これを最大限弱めて壁に使う。



 やさしく……可能な限り弱く発動する……



 ガガガガッ!



 壁の内側から金属と土のこすれ合う音がする。

 どうしても無音とはいかないけどそんな大きな音ではなかった……これくらいなら耳でも澄ましてなければ聞こえないはず。


 壁の内側をシェイクしてだいぶもろくなったはず。

 次は『風』属性の低級魔法『ウインド』の風の力で壁を切り刻む。


 ビュビュビュッ!!


 よし、計算通り!

 柔らかくなった壁を切りつけても大きな音をさせずに崩すことができた。


 砂の山のように壁のもろくなった部分が崩れて行く。


 崩れて行く壁から光が漏れてきた。

 外に繋がったんだ。


 壁はどんどんと崩れていき、出ていける程度まで広がっていく。


 |グランドル家(この家)を出て行く……


 僕は捨てられたんだ……



 穴の空いた壁から顔を出して外を見渡したけど、人影はなさそうだ。


 誰にもバレてなさそうだ、このまま出て行こう!



 地面を力強く蹴り上げ、壁から抜け出した。



 父様は僕を大切にしてたんじゃなくて、僕の才能を大切にしてたんだ。

 だから思ってたより才能がないと分かった途端、僕への興味を失ってしまった。


 この家のこと嫌いじゃなかったけど、もうここにはいられない……



「あれあれ、君はグランドル家の人かい?」


 声!?



 誰かに見つかった?



 大急ぎで声の方向へ振り向くと兄様達くらいの年齢の半纏はんてん羽織はおった男の人が僕の真横に立っていた。


 周りを見渡したときにはこんな人いなかったはず……

 というかいつの間に僕の横に?



 まだ家の前だ、こんな場所で父様にだけは見つかりたくない……

 慌てて家を振り返って見たけど人影はない、まだ見つかってないみたいだ。


「急いでるんで、すみません……」


 この人が誰だかわからないけど、今は関わっていられない。

 うちに用があるみたいだけど、もう僕には関係のないことだ。


 半纏はんてんを来た人を無視してその場から駆け足で走り去った。


「ところでさあ、あの家の中で魔法を使ったの君だよね?」


「えっ……?」


 なんでこの人、僕についてくるんだ?

 しかも僕が魔法を使ったことを知ってる……


「その顔、やっぱり君だったんだ!」


 僕は全力で走ってるのにこの人、ごく普通に僕に合わせて走ってしかも話しかけてきてる……

 とにかく……今は家から少しでも離れたい!


「さっきの魔法さ、中々珍しいことをしてたろ? 魔法の連続発動をさ」


 えっ!?


「うっ! ゲホッ……! ゲホォッ!」


 驚きのあまりむせて足が止まってしまった……

 この人、何者なんだ、なんで僕の特技を知ってる? ルッカにしか見せたことのない一度魔法を使っただけじゃ消滅しない魔法陣のことを……


「『不壊ふえの魔法陣』をまさか見れるなんてね」


「ふえ? 僕は楽器なんて使ってません」


「違う違う、楽器のふえじゃなくて消滅しない魔法陣のことを不壊ふえって言うんだ」


「そうなんですね、勉強になりました……では、失礼します」


 とにかくここを離れなきゃ……僕の魔法陣のことなんてどうだっていいんだ……

 走るのは疲れる、できるだけ早歩きでここから、父様に見つからない場所まで離れないと。


「ねえ君、ちょっと待ってよぉ」


 この人……まだ着いてくるつもりだ……


「すみません、急いでるんです……」


「グランドルの屋敷から離れればいいんだろ?」


 半纏はんてんの男の人がギリギリまで僕に顔を近づけて楽しそうに笑みを浮かべた。

 その直後、ぐいっと体が持ち上がる……


「えっ? ちょっと、何を!?」


 えりを掴まれ片手で持ち上げられてる?

 さっきからなんなんだこの人は……僕をどうしたいんだ?


「決めたよ、君に来てもらうことにした」


「えぇ?? どう言うことで……うっ!!」


 ものすごいスピードで走り出した。

 襟を掴まれたまま僕は子犬のように片手で担がれ進んでいく。


 とんでもないスピードだ……走るってというより飛んでるって言った方があってそうなくらいだ。一歩で100メートルくらい進んでる。

 そんな状態でこの人はまた僕に話かけてきた。


「一応自己紹介をしておくね、俺の名はトキマル。悪い奴じゃないから安心してよ」


 トキマルって確か、父様が会う予定だった人……

 自分で悪い奴じゃないって言われても……





 グランドルの屋敷は平静なままだった。

 リミトの父、トマロフ・グランドルも閉じ込めていた部屋からリミトが脱出したことに気ずくことなく、優雅にコーヒーを飲みくつろいでいる。


 そんな中、使用人のルッカはいち早く音もなく空いている大きな壁の穴を発見し涙を流していた。


「リミト様……どこへ行ってしまったんですか……」


 誰もいないリミトの部屋でルッカはしばらくの間立ち上がることができないほど泣き崩れていた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


少しでも興味を持っていただけたようなら、ブックマークや下の☆にチェックしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。

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