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2 家族がみんな変わってしまった

 一瞬で全てが変わってしまった。


 部屋がパゾと交換になって、使用人のルッカもパゾにつくことになり僕の世話をしてくれる人はいなくなった。


 鉄で作られた外から施錠される扉、狭い上に窓ひとつない何も置かれていない室内。まるで監獄……パゾはこんなところで今まで過ごしてたんだ……


 まあいいっか……


 部屋が狭くなって窮屈に感じるけど、狭い空間って嫌いじゃない。

 何より変に期待されずに済むって気が楽だ。


 産まれて初めてこんな開放された気持ちになれた。

 今までずっと期待に応えなきゃいけないってどこかで思っていたから無理してたけど、もう頑張らなくていいんだ!


「リミト様……」


 部屋の外から呼びかけられた、この声はルッカかな。


「どうしたの?」


 目に涙をためて僕のことを見つめてる。


「どうしてこんなことに……」


「泣かないでよ、この生活も悪くなさそうだから僕は気にしてないよ」


「すみません、私がもっとしっかりしていれば、こんなことにならなかったのに……」


「いや……鑑定の結果は生まれ持ってのものだからルッカのせいじゃないよ」


「私、もっとリミト様の元にいたかったです」


「そう言ってくれるのはありがたいんだけど……パゾも物静かだけど真面目な子だからこれからはパゾをよろしく頼むよ」


「それが……パゾ様は……」


 ん、パゾがどうかしたのか?



「お〜〜〜〜い!! 早く来いよ!」


 えっ? このでかい声、まさかパゾ?


「はい! すぐ行きます」


 ルッカが今の声に反応したってことはやっぱりパゾだったんだ。

 なんて考えてる間にパゾがこの部屋の前までやってきた。


「なんだルッカ、こんなところにいたのか」


 パゾってこんな口調だったか? なんか人が変わったな。


「すいません、ちょっとリミト様と話がしたくて……」


「リミト? ああ、このグランドル家の面汚しのことか」


 面汚し……すごいこと言うな。

 鑑定からまだ数日しか立ってないのに父様達からの影響をかなり受けてるのかな。


「そんなこと言わないでください、リミト様はパゾ様の悪口をいったことは一度もありませんよ」


「違うな、こいつはこれまで俺のことをずっと見下してたんだよ! 自分が俺よりも劣っているとも知らずになぁ!」


 人の変わってしまったパゾが肩で風を切りながら僕の前まで近づいてきた。


「才能もないくせに、今まで優雅な生活をしていた罰だ、お前見たなボンクラは父様に言って処刑してもらうことにしたからな」


「処刑!?」


 さすがにそれは嫌だ。

 何もしたくない僕だけど、当然死にたくなんてない。


「クハハハハ! そうそうそういう顔が見たいんだよ!」


 僕の顔を見てパゾは無邪気に大笑いし始めた。

 それを遮るようにルッカが話かける。


「おかしいです! なんでリミト様が処刑されなきゃいけないんですか!?」


 かばってもらっている僕の方が驚いてしまうくらいの勢いでルッカが迫っていく。


「こんなやつグランドル家にいたらいけないんだ、うちに無能は必要ない」


「リミト様は無能じゃありません!」


 ルッカがすごい怒ってる……でもこのままじゃ。


「もういいよルッカ、落ち着いて」


「リミト様。いいんですか? 処刑されてしまうって言われてるんですよ」


「僕のことはもういいから……」


 これ以上パゾに刃向かったらルッカの居場所までなくなっちゃう。


「そんな……そうだ! 前見せてもらった消えない魔法陣は? あれ、すごいじゃないですか!」


「ルッカ、もういいんだ」


 魔法を唱える時に魔力を使って魔法陣を浮かび上がらせ、そこから魔法を発動させる。

 普通は一つの魔法陣につき、一回魔法を発動させると魔法陣は壊れてしまうんだけど、僕は一つの魔法陣で何発でも魔法を発動させることができる。


 これ以上期待されるのは嫌だったから父様に伝えないって約束でルッカにだけ見せたことがあったけど……

 そんなこと今のパゾに伝えたところで絶対に伝わらない……



 パゾが僕の部屋の鍵を閉めた。


「もう話は終わりだ、戻るぞルッカ」


「待ってくださいまだ話が! ああ、リミト様ぁぁ!」


 無理やり腕を引っ張りパゾはルッカを連れていった。



 これでいいんだ……あれ以上僕のことをかばっていたら本当にクビになってしまうかもしれない。

 それくらいパゾは変わってしまった。


 処刑って言ってたよな……

 さすがに父様もそこまではしないと思うんだけど……



「なんだ……ずいぶんと騒がしいと思ったら貴様だったのか」


 また誰か来た……今度は父様だ。


 父様も鑑定の日以来人が変わってしまった。『貴様』なんてこれまで僕は言われたことなかった……

 これまでは何もしてもしかられなかったのに、もう目を合わすのも嫌そうなくらい僕に関わろうとしてくれない。


「すみません、ルッカとパゾがここに来たので話してました」


 一応、謝ったのに父様は返事もしてくれなかった。


 父様は部屋の鍵が掛かっているか扉をガチャガチャと開け確認すると、独り言のように呟いた。


「私の知らないところでパゾをいじめていたなんてな……」


「どういうこと? 僕がパゾをいじめた……?」


 そんなことする訳ない……むしろ父様達が散々やってたじゃないか。

 まさか……パゾが嘘ついてこんなことを……


 僕の質問には答えず父様はにらんで来た。


「貴様は処刑だ、才能もない癖に散々ふざけて来た報いを受けさせてやる!」


「ちょっと待ってください! 僕はパゾをいじめてなんかいません!」


 どうして僕が殺されることになってるんだ?

 どうかしてる……おかしいだろ。



 それだけ告げると父様は部屋に背を向けた。


「トキマル様が来るまでいざこざがバレたらまずいか……あの方は鋭いからな」


 ボソリと呟きながら父様は部屋の前からいなくなった。



 処刑される……


 パゾが勢いで言っているだけだと思ってたけど、このままじゃ本当に処刑されてしまうかもしれない……


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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