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10 ルッカの実家

「ようこそリミト君! ようやくここに来てくれたんだね!」


「あの……トキマルさん、さっき用があるからって出て行ったんじゃ?」


 ドグルさんとの試合を終えてすぐ僕はトキマルのいる部屋へ連れてかれた。

 試合中忙しいって言って出て行ったのに、なんでこの人ゆったりとしたリクライニングチェアーに座って本読んでくつろいでるんだ?


「いやいや、もしさあの戦いでリミト君が勢い余って殺しちゃったりでもしたら大変だろ? そんなところ見たくないからさ俺は」


「じゃあ『用』ってのはウソだったんですね?」


 この人の事は全くわからない……

 年齢だって世界樹の幹部達の中でも一番若そうに見えるのに一番偉い、うちの御先祖様を知っているのも不思議だ……


「そんな目で見るなよぉ……」


「トキマルさんはなんで僕を世界樹に入れようと思ったんですか? それとなんで僕の家のことを知ってるんですか?」


「ふふふ……」


 またこの笑顔だ……

 いくら質問しても、いつもこうやって微笑んではぐらかされてしまう。


「リミト君、君は特別なんだ」


「僕が、特別?」


「俺は君を探していた、世界樹に……いやもっと言うと俺の右腕になってもらえる存在だと思ったから強引にでも連れてきた」


「なんで……? 才能がないって鑑定を受けたのに」


「君の能力は鑑定で測れる程度の器を超えてる、それだけの話だよ」


「はぁ……勘違いならいいんですけど……」


「あら、連れないね。他の世界樹のみんななら飛び跳ねて喜ぶような話なはずなんだけど」


「みんなと一緒でいいです、出来すぎても出来なすぎても大変そうなんで……僕はのんびり過ごしたい」


「あら、そうなのね……まぁここにいる以上期待はさせて貰うよ」


 やっぱりこの人の事は読めない……

 常に笑ってるけど底が測れない。


 それでも特に行く場所なんてないしなぁ。


「居場所もないんで、居させてもらえるなら……よろしくお願いします」


「うん、よろしくね。じゃあさっそくだけど、リミト君にやって貰いたいことがあるんだ」


「えっ……いきなり?」





☆☆☆





 はぁ……やっぱりトキマルさんの事はよくわからない。


「リミト様……これは?」


「あぁルッカ、ごく普通の魔法陣だよ」


「それはわかりますけど……なんでその魔法陣の上に乗ることができるんですか? しかもこの魔法陣、空を飛んでるし」


「風属性の魔法の力だよ、上手く出力を調整して魔法陣に乗っても大丈夫なように風を起こしつつ、空を飛べる程度に移動もさせてるんだ、わかるかな?」


「全然わかりません……リミト様、この一年でますます魔法が上手になったんですね」


「そうなのかな、特に意識してなかったけど……」


「あの……本当にいいんですか、私の実家に行くなんて……」


 トキマルさんやれと言われた事……

 それは休みを取れということだった。


 世界樹にいるといつ時間が取れるかわからない、家族達と会える機会も減るからと言う事で世界樹に入る前の人はみんな休みを貰えるらしい。


 僕は今更帰るところもないから必要ないと言ったんだけど、そしたら同じような人がもう一人いるってことでルッカも一緒に休みを取らされることになってせっかくだからルッカの実家へ向かうことになった。


「僕が家に帰っても父様も、パゾのも喜ばないだろうから……久しぶりにおば様にも会いたいしルッカの家まで送ってくよ」


 ルッカの母親であるマーサおば様は小さい頃から僕の世話をしてくれた人だ。

 本当の母様と会ったことがない僕にとってある意味本当の母親のようなものと言っても過言じゃないのかもしれない。


「ありがとうございます、リミト様。世界樹に入る時、グランドル家を勝手に出ていってしまったので実家に顔向けできなかったんです……せっかくの機会なんで親にも謝っておきたいとは思ってたんです」


「そっか、パゾに嫌がらせをされて家を出たときにトキマルさんとあったんだもんね。マーサおば様怒ってないといいね」


 マーサおば様には僕もよく怒られた、間違ってることは誰に対してもはっきり言う人だったから僕の父様に対しても物怖ものおじせずに意見してたのをみたこともある。


「絶対怒ってると思います……」


「そうだよね……僕も一緒に謝るよ、僕のせいでルッカも大変な思いさせちゃったみたいだから」


「フフフ、リミト様のせいじゃありませんよ……なんて言うか久しぶりですね、こうやってお話しするの、嬉しいです」


「そう? 世界樹についた時も話したし久しぶりと思わないけど……」


「フフ……そういうところ、変わってませんね……」


 ルッカは唇を噛み締めながら嬉しそうに笑ってた。

 何が嬉しいのかよくわからないけど、幸せそうで何よりだ。


「あっ、もうすぐ着くよ」


「えっ? もうですか? 結構距離あるのに……すごい……」


「時間もったいないからね、ちょっと飛ばしたんだ」


「あれ……なんだか焦げ臭い……」


「本当だ……なんだろう」


 もうルッカのいる街の住宅街まで進んできてる。

 人影が全然見当たらない上に何か燃えるような臭いがする。


「何これ……」


 ルッカが声を詰まらせてる。

 いくつかの家が燃えて柱だけになってる。焦げ臭かったのはこのせいか……モンスターにでも襲われたのかな。


「そこが私の家です」


 どうやらルッカの家は火事の被害にはあってなかったみたいだ。


 ルッカは魔法陣から飛び降りて急いで家に向かっていった。


 ちょうどその時、ルッカの実家のドアが開き、マーサおば様が出てきた。


「お、お母様……」


 慌ててはいたが、思わぬタイミングでマーサおば様と鉢合わせてしまいルッカは少し怯んでる。


「ルッカ……」


 そう呟くとマーサおば様はルッカのことを抱きしめて。


「ちょっと、何? どうしたのお母様?」


「ルッカ、無事でよかった……」


 なんだろ……マーサおば様泣いてる?

 様子が変だぞ……

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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