奪われた僕の全てを悼む
ああ、一体僕は何をやっているのだろう。
マンションの屋上に一人、ぽつんと佇んでいる自分がそこにいた。
僕はもう疲れた。
だから休ませてほしい。
ただそれだけのことなのだ。
なのに、なぜ皆はそれを阻止するのだろう。
なんで、そんな無慈悲な行為をいつまでも継続しているのだろう。
なぜ途絶えない。
僕を散々弄んできたくせに、荒唐無稽な話を淡々と並べたてて。
身勝手にもほどがある。
僕が何をしたっていうんだよ。
もう何も信用できない。
世間に対する憎悪が深まる。
しかし、それと共にこの奇想天外な世界に恐怖さえ覚える。
さっさとこの理不尽な世界から離脱しよう。
今の時間帯なら邪魔をする人も現れないから速やかに事を済ませることができる。
もうこの人生に未練はない。
パッとしない退屈な人生だった。
だからここで僕の壊され穢された人格にも終止符を打とうと思う。
僕に未来や将来は存在しなかったのだ。
他者に寄って奪われた人権も名誉も、今となってはただの欠陥品だ。
もはや需要など皆無だ。
形骸化した命など、死んだも同然じゃないのか?
生と死の定義を教えてよ。ねぇ。
そんな質問も皆、口を結び返答を拒む。
汚くないか?都合の悪いことは徹底的に潰して。
醜くて仕方がない。
暗黙の了解というヤツだろうか。
弱肉強食であるこの世界の摂理に便乗して黙って従えとでも言うのか?
嫌だね。いるだけ損だよ。
虐げられた僕はもう何も残ってやしない。
彼らに生きる気力も未来も奪われたのだから。
強いて言うなら、虚無感と憎悪かな。
所詮、命なんてのは儚いもので刹那的なものなのだ。
命なんて言ってみればただの消耗品だ。
だから死は運命づけられたものであり、誰しもが必ず通る道。
僕はその道を予定より、少し早めに歩むだけなのだ。
屁理屈かな?
ならおまえらのそれだって同じことじゃないのか?
自分らの意見は棚に上げて、僕は咎めるのか?
それってお門違いじゃないのか?
結局世間ってのはご都合主義でしかないんだよ。
おかげ様で僕はその被害を諸に受けたけどね。
こんな皮肉めいた思いも空回りして消え失せる。
この世知辛い世の中は嫌悪感しか抱かないよ。
この世界に存在してると実感するだけで反吐が出る。
だからってこの世界に復讐はしないよ。
そんな大層なことはしないよ。
でも何もしないとは言ってない。
僕にとってこのチェーンという世界から解放されることが、精一杯の抵抗だ。
気づけば僕は屋上の柵を乗り越え、一歩踏み外せば落下するところに僕は立っていた。
これで漠然とした悩みからも、煩わしい他人の視線からも解放される。
そう思うと、少しだけだが、リラックスできた気がする。
これで完全なる自殺を成立させることができる。
高層マンションなだけあってこの夜景は迫力がある。
数多の忙しなく道路を走る車や人々を呆然と眺めながら僕は思った。
みんなごめんね。
僕は一足先に向かうよ。
その直後、僕は屋上から地面に向かって飛び降りた。