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天津国(アマツクニ)  作者: 遊遊
第1部 オワリ駐屯地
2/3

1話 い組の朝

本編スタートです。

◯オワリ駐屯地 第二小隊い組事務所 07:45

 初夏に入って、暑くなりだした今日この頃、俺も新しい仕事をもらって初めての勤務だ。これからどんな日常になるか楽しみで仕方ない。


 そう胸を躍らせて事務所に一番乗りで出勤してきた青年・リョウマ サイカ(人間, 20歳)はやる気に満ち溢れていた。理由は先日の昇格試験に合格して、士長から3曹へ昇格、併せて第二小隊 い組のリーダーを任命されたのである。

 

 彼は自分のデスクに座り、手帳を開いて緑茶をすすりながら本日の予定を確認する。

「ええっと、朝一中隊長の部屋に行って研修生仮配属の話を聞いてから09:00に受け入れか。デスクとかの配置は終わってるから、あとは小隊長が持ってくるテキスト類を渡せば一旦完了だな。」

予定を確認し、「どんな奴か来るんだろ〜」と色々想像していると一人の青年が部屋に入って来た。

「おはよっ、レン。」

「あぁ、おはよう。リーダー殿。」

「やめろよ、なんか改めて言われるとなんかムズムズするんだよ。」

 リョウマより少し背が高く、髪を後ろで結んだ青年・レン シドウ(人間,20歳)は彼の同期で同じい組のメンバーである。

「てか何でお前じゃなく、俺がリーダーなんだろうな。お前の方が強いし冷静だし。」

「俺は指揮官には向かない。俺は適任だと思うが?」

「うーん、自身はあるんだがなんだかこう不安でよ。」

「慣れないうちはそんなもんじゃないか?」

「そうか、まぁ、真面目にやりゃなんとかなるか。」


レンがリョウマの向かいに座ると一人の女性が部屋に入ってくる。

「おはようございます。リョウマさん、レンさん」

 彼女の名前はユキヒメ フユキ(魔人, 40歳)、年齢はチーム最年長だが魔人族では若手の部類。見た目も20代後半に見えるくらい若い。

「おはよう、ユキヒメさん。」

「おはよう。」

「ふふっ、今日からリーダーさんですね。改めてよろしくお願いします。」

「お、おう。こちらこそよろしくな。」

 本当は大先輩だが、出会って初日に「あの。。もしよろしければ、敬語を使わずお話して頂けますか?」と言われてから気楽に話している。


 そしてぼちぼちもうすぐ08:00なる頃。

「まぁにあったのニャー!先輩、おはようございます!」

 作業時間ギリギリに滑り込んできた少女はシノ コナカ(獣人, 18歳)である。猫人族の娘でチーム最年少。

「シノぉ。てめえ、新任リーダーの初出勤に堂々と遅刻たぁ、いい度胸してるじゃねぇか・・・」

「ニャに!先輩、ギリセーフでしたよ。ほら、時計を見たら・・・」

「5分遅れてんぞ。」

「・・・・・、テヘッ♡」

「テヘッ、じゃねえ!お前オペレーターだろうが。時計の時間くらい正確に合わせといてくれよ。遅刻するなら、音楽隊の朝練に混ざるの禁止にするぞ?」

「ふニャァ!それはご勘弁を〜次から気をつけますのでぇ・・・」

 シノが目をウルウルさせ、じっと見つめてくる。この視線の破壊力は凄まじく、リョウマは毒気を抜れた。

「うーん、はぁ。わかったよ、2度目はないぞ。」

「ありがとうございますニャ!やっぱり先輩は優しいですぅ。」

「調子に乗るな!」

 大体こんなやり取りが繰り広げられるのが朝の日常である。

 

 「おっと、やべぇ。中隊長のとこにいかないと。みんなすまないけど今日の予定は掲示板に書いたから各々確認してくれ。」

「了解」

「わかりました」

「先輩、行ってらっしゃいニャ」


 リョウマは小走りで事務所を後にした。


◯オワリ駐屯地 中隊長執務室 08:30

 リョウマは時間ちょうどに執務室前に到着し、ドアをノックする。

「・・・入れ」

「失礼します。リョウマ サイカ3曹、参上致しました。」

 執務室には緑髪のウルフヘアの青年が一人と、白髪オールバックのいかついおじさんがそれぞれ応接机に向かい合って座っていた。青年の名はウコン キョウダ(魔人, 33歳)、リョウマ達第二小隊の小隊長である。そして、白髪のおじさんがカンジ ゴウダ(人間, 45)。オワリ駐屯地の中隊長である。


「うん、時間ちょうどだな。そこに座れ。さて、先日連絡した通り本日から3ヶ月、第二小隊い組にて研修生を受け入れることになった。わかってると思うが、ついこないだ養成所を卒業したばかりのまだまだ素人だ。戦闘を伴う作戦行動への同行は認めるが可能な限り、前線への投入は避けるように。無茶して潰すようなことはするなよ。」

「了解しました。肝に命じます。」

「ならばよし、下がっていいぞ。あ、そうそう忘れるとこだった。これが本日仮配属される研修生の資料だ目を通しておけ。」

「ありがとうございます。ってうえぇ?!」

「まぁ、そういうことだ。じゃ、頼むな。」

「は、はい。失礼します。」


 何か物言いたげなリョウマだったが、カンジに促され部屋をあとにした。


「流石に驚いてましたね。」

「そりゃそうだ。まさかいきなり実の妹が部下につくとは思わんさ。」

「かなり強引に引っ張ってきたと噂ですが。」

「まぁな。あの胸糞悪いデブ司令も権力だけはあるからな。三日間機嫌取りまくって王都本部配属だった所を引っ張ってきてやった。」

「そこまでしてなぜ彼女を?」

「あんな、王都の温室ぬくぬく研修生活を覚えちまったら、折角の才能が錆びつく。それに、どこぞの馬の骨とも知らんやつに預けるのも癪だしな。」

「ふふっ、親バカですね。」

「なんとでも言え、元上官との約束なんだよ。あの兄妹を頼むってな。」

「15年前の魔物襲撃事件最大の功労者、マゴイチ サイカ、殉職により最終階級は准将でしたっけ。」

「そうだ。迎撃作戦が長引いて皆が疲弊している時、中隊長から"カッコいい俺に憧れてせがれ達が警備軍に入隊するかもしれねぇ。その時は面倒見てやってくれ。"と俺に言い残して敵陣中央に特攻して敵の親玉巻き込んで自爆。いやはや、リョウマが本当に入隊してきた時は驚いたよ。」

「ましてやリョウマ君の戦い方が父親と同じですしね。」

「ほんと大したもんだよ。大楯にメイスなんて我流以外で鍛える術がないのに、一人でよくここまで練り上げたもんだ。あ、これは絶対あいつには言うなよ。」

「ふふっ、わかってますよ。では、私もそろそろ行きますね。人事が彼女を連れて到着する頃ですので。」

「あぁ、よろしく頼むな。」


 ウコンが執務室を後にし、部屋に静かさが戻ってきた。束の間の平和な時間を噛みしめながら窓の外を眺めた。


ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

これからも不定期ですが、連載しますので宜しくお願いします。

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