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「医者を連れてきた」


 突然扉が開き、カイルがバタバタと戻ってきた。カイルを見た瞬間、アリスは思わずブルッと震えてしまった。


「カイル殿下、そこでお待ちください!レディにむやみに近付くものじゃ有りません!

 さあさあ、アリス様、大丈夫ですからね。お医者様に見てもらいましょう」


 アリスが一瞬震えたのを見逃さず、マーサがカイルの接近を止めてくれた。

 マーサが一瞬医者に何か呟いたように見えたが、すぐにアリスに向き直り、ベッド横の椅子に医者を促した。


「大先生、彼女はアリス様と言うそうです。先程、起きてすぐに嘔吐しましたが、体調不良というよりも混乱しての事だと思います。

 お腹もすかれているということで、胃に優しい食事を用意して貰っているところです」


 仙人のようなおじいちゃん先生が椅子に座り、助手なのか黒い髪の若い女性がその隣に立った。


「ふむ……魔力の淀みは無くなったようですな。随分長い間、魔力の相性がいい者が近くにいなかったようですな。さぞ辛かったことでしょう……

 淀みの影響で睡眠不足と食欲不振になっていたようですが……失礼ですが、お年をうかがってもいいですか?

 栄養不足で成長不良も心配です」


「はい……母が亡くなってから徐々に淀みが溜まっていったんだと思います。

 おっしゃる通り、酷い頭痛で食欲も年々落ちていました。年は先日15歳になりました」


「なるほど、15歳になったばかりと言うことであれば、それほど成長不良というわけでも無いようですな。

 これから栄養バランスのいい食事をしっかり食べるようにすれば、すぐに解消されるでしょう。

 淀みの影響で少々痩せすぎですからな、内臓も弱っておいでですので暫くはゆっくり過ごされてください。

 この国には殿下を始め、魔力の相性がいい者が多いようですので、アリス様にとって過ごしやすい環境だと思いますぞ。

 文化もホシノ王国とは随分と違うので、気分がいい日は散策などされてはいかがですかな?

 暫くは毎日体調を見させてください。では、今日はこれで……

  

 マーサ殿、アリス様の食事の内容を毎食記入していただきたいのですが……何をどのくらい食べたのかなど、出来れば詳しくお願いします。では、また明日」


 そう言って、大先生はコケティッシュな美人助手と共に部屋から出ていった。

 アリスは大先生の言葉を反芻し、思わず自身の体を見下ろした。


 “わかってる、わかってるよ大先生。胸ですね、絶対胸ですよね?まぁ……確かに栄養不足で標準より背も低いし痩せてるけど……ささやか程もないこの胸を見て成長不良だと思ったんですよね?

 前世でもささやかにしか無かったしね!記憶の中のアリスのお母さんはぼいーんってしてたから期待してたんだけどね!はぁ……”


「アリス様、大丈夫ですよ。栄養たっぷりのご飯をたくさん食べると、すぐ元気になりますからね。

 髪や肌だって、すーぐ艶々になりますから、安心してください」


 アリスの落ち込んだ姿に慰めようとマーサが優しく声をかけてくれたが、それはアリスにとって明後日の方向だった。

 いや、アリスの落ち込みポイントが明後日なので、マーサは決して悪くないのだが。


 “は、肌と髪……そんなに傷んでる!? 確かにお小遣いなんて貰えないから、購買で売ってる必要最小限の物しか使えないし艶々ではないと思うけど……

 若さゆえに水も弾くキュア肌だと思ってた……それに、侍女長のテレサが時々差し入れてくれる香油を、ちゃんと使ってるんだけどな……

 ああ、テレサや執事のセバスが心配してないかな?


 て言うか……もしかしなくても、もう帰れないのかな?

 正直、あんな父親の所になんて帰りたくないし、ホシノ王国だと何処に行っても噂が付きまとってめんどくさいから、いつか遠くに行きたいななんて思ってたけど……

 まさか拐われて別の国に来ることになるとは……しかもニジノ王国って何処だよ?聞いたことないし……ホシノ王国から結構離れてるから地図に載って無かったのかな?

 部屋の雰囲気といい、服装といい、ホシノ王国とは随分違うんだな~。着物ドレスみたいでちょっと可愛い。

 

 ちょっと見ただけでもこれだけ文化が違うのに、片翼を見つけた瞬間拐うのは、やっぱり同じなんだね~。片翼を拐うように連れてきた父親と同じとか……ちっ!”


 はぁ……とアリスは重いため息をついた。


「失礼します。軽食をお持ちしました」


「ありがとう。

 アリス様、ホシノ王国とは違うと思いますが、食べられそうですか?

 味付けなど、遠慮せずにおっしゃってくださいね?美味しく感じられないとたくさん食べられませんからね」


 マーサがメイドからトレイを受け取って、ベッドサイドのテーブルに運んできてくれた。

 アリスが目覚めてからずっとこれでもかと言うくらい気を使ってくれていて、世話をやかれることに慣れていないアリスにはこそばゆかった。

 アリスは居心地の悪さを誤魔化すように、マーサからトレイに目を移した。


「え?これは、お米!?」

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