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 アリスがカイルを番と認識してから1ヶ月が経った。アリスの身長はさらに3cm伸びたが、どうやらそこで止まったようだ。

 体重も順調に増え、標準より少し細い位で落ち着いた。嬉しいことに胸も成長し、今ではちゃんと服の上からでも膨らみがわかる程度にはなった。

 こちらはまだ成長期のようで、張るような痛みがあったり固く大きなしこりのような物があったり揺れると痛かったりする……だが、嬉しい痛さでもあった。

 

 あの日からずっとカイルと共に寝ているが、宣言通りちゃんと一線は越えないように守っていた。

 時々カイルの手が不埒な動きをするが、頑張って耐えているようでそれ以上はしてこなかった。

 

 結婚式は1ヶ月後に決まった。早すぎるように感じるかもしれないが、普通番と出逢った男女は抑えが効かなくなるため、子供が出来る前に急いで結婚するのだとか。

 なので王族の結婚準備期間は普通より短いのが伝統なんだそうだ。今回は第3王子であることと、本人達が望まなかったので、王族としては異例なほど小さな結婚式になる。

 結婚式が終わると、カイルが賜った公爵領へ向かう。公爵領と言っても人より家畜が多いような土地で、広大な自然に囲まれて、少人数の使用人達と共にのんびり過ごす予定だ。

 

 結婚式用のドレスも、今最終段階に入っているそうだ。まだまだ胸が成長しそうだが、この国のドレスはカシュクールになっているため、その辺の調整は着付けでいくらでも可能らしい。

 花嫁の色である真っ白のドレスに、淡い色や銀糸で花や蝶などの刺繍が施されている豪華な逸品になる予定だ。

 髪には母の形見の髪飾りをつけ、指輪はカイルの髪と同じ色の宝石の横に、アリスの髪と同じ色の小さな宝石が飾られた物を注文した。

 アリスの見た目も肉付きが良くなったことで、ちゃんと15歳に見えるようになった。

 

 今日はレイカとお茶会の予定だ。あれからレイカとは3回お茶をしたが、末っ子のレイカは妹が出来たようで嬉しかったらしく、嬉々として色々教えてくれた。

 一応大人だった記憶はあるものの、全く常識の違う世界だし、マナーやら何だも10歳以降は学園でしか習う機会がなかったので、とても有り難かった。

 ニジノ王国の貴族社会のことも色々教えてくれた。兄や従兄に囲まれて育ったため、女子トークが出来るほど身近な友人も居なかったらしく、とにかくレイカはアリスに会いたがった。

 その度に着せ替え人形にされそうになるのを、毎回やんわり……前回はかなり強めに断っている。

 アリスは、今回もそんな展開になるんだろうかと若干ぐったりしつつも、この世界で初めての友人に浮かれてもいた。


「アリス様、レイカ様がお見えになりました」


「ありがとう。カイル、また後でね」


「ああ、楽しんでおいで」


 お茶をする庭園までカイルにエスコートして貰い、別れ際に軽いキスをしてレイカに向き直った。


「は~、相変わらず暑苦しいくらいラブラブね~。見ててこっちが恥ずかしくなるわ」


 この通りレイカとはすっかり砕けた口調で話すほど親密になった。


「レイカも私達の結婚式が終わったら、いよいよ番探しの旅に出るんでしょう?楽しみね」


「そうね……すぐ見つかればいいけど……今となっては15になってすぐ旅に出れば良かったと後悔しているわ」


 レイカはカイルに叶わぬ恋をして時間を無駄にしてしまったことを後悔しているのだ。


「たった1年じゃない。初恋は尊いものなのよ!うふふ、それにそのおかげで私達は出逢えたし、こんなに仲良くなれたしね」


 それもそうねと呟いて花を見るように顔をふいっとそらせたが、耳から首にかけて真っ赤になっていてとても可愛かった。


「やあアリス、お茶をしていると聞いてね。こちらがレイカ嬢かい?アリスの叔父のマットです。いつもアリスと仲良くしてくれ……て……っ!?っは……」


「叔父様?大丈夫ですか?」


 話の途中で急に苦し気に止まってしまったマットが心配になり目を向けると、目を見開き、信じられないものを見たと言う表情でレイカを見ていた。

 視線をたどりレイカを見ると、こちらも驚きで目と口をあんぐり開けていた。

 微動だにしない2人に困惑していると、近くに控えていたテレサが話しかけてきた。


「お2人はもしかして……?まぁ大変だわ!誰かカイル殿下を……いえ、王弟様はいらっしゃるのかしら?とりあえず皆様中に入りましょう」


 何やら慌てた様子で応接間に連れていかれ、何故かマットとレイカが隣同士に座ったので、向かい側に座っていると慌てた様子のカイルと王弟様がやって来た。

 カイルはアリスの隣に座り、王弟様は1人掛けソファに座った。


「レイカ!マット殿と番のようだと聞いたのだが……」


「やはりそうですのね……先ほどからマット様を見ているとおかしくて……」


「私もです……これが番と言うものなんですね。これ程狂おしいものだったとは……」


 もはや2人の瞳にはお互いしか映っていないようだった。


「なんと、こんなに早く見つかるとはめでたいな!城の客間を用意させたからそちらへ行くといい。

 結婚式の話はこちらの方で進めておこう」

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