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キョトンとした顔でレイカに問いかけられた。
“うん、キョトンとした顔も超絶美少女!泣きじゃくってたのに美少女ってあり!?”
「えっと、先日15歳になりました……」
「ええっ!1個下!?……っす、すみません、大きな声を出して、はしたなかったですわね……」
思わず大きな声を出してしまったようで、レイカは真っ赤になってうつむいた。
“胸か?やっぱり胸なのか?っく……15歳なのに絶壁って……ああ、レイカ様のあの大きな膨らみが羨ましい……”
「いえ……大先生によりますと、魔力の淀みで成長不良だったようです。この国に来てカイル殿下に日々魔力を分けていただき、体調が凄く良くなったんですよ。
ご飯もたくさん食べられるようになったので、少しは成長すれば良いんですけど……」
「そうでしたのね……失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。大先生には私も子供の頃からずっとお世話になっていますの。
素晴らしい先生ですので、すぐに良くなりますわ!」
「レイカ様……そろそろ……」
2人のやり取りを見守っていたメアリがレイカに声をかけた。
「そうですわね、突然押し掛けて長居してしまい申し訳ありませんでした。
今度は事前に先触れを出しますので、ゆっくりお茶でもご一緒させてくださいませ……」
「ええ、もちろんです。この国の事を色々教えていただけると嬉しいですわ」
それではまた後日と、レイカは来たとき同様嵐のように去っていった。ドアの外にはレイカの護衛らしき人達もいた。
来た時はいなかったようだけど、あの人達をまいてきたのだろうか?
「仲直りできて良かったですね!レイカ様は普段は使用人や平民、誰に対してもとてもお優しくて、国民にも人気の姫なんですよ。
ですので、先程の庭園での事は驚きました……まさかあのレイカ様があのようなことを言うとは思わず、止めるのが遅れてしまい申し訳ありませんでした」
メアリにとっても驚きの出来事だったようだ。マーサにアリスの事を頼まれていたのに、このような事件が起こってしまい、恐縮している。
「気にしないでください。レイカ様はとても真っ直ぐな方なんですね……始めこそ驚きましたが、話していてとても良い方なのが伝わってきました。またお会いできると良いのですが……」
そうですねとメアリは嬉しそうにお茶を片付けていた。きっとレイカのことが好きなんだろう。
アリスも短い時間だったがレイカと過ごした時間をとても心地よく感じていた。
もう一度会いたいと言うのは、アリスの心からの本心だった。
「そろそろホシノ王国の使者の方が面会に来られると思います。応接間でと言うことだったのですが、アリス様の暮らしぶりを見たいと言うことで、急遽こちらの部屋で対応することになりました」
“暮らしぶりが見たい?どう言うことだろう……?”
不思議な提案に首をかしげながら使者を待つこと数分、マーサが使者を連れて戻ってきた。
「「「アリス(様)」」」
「まあっ!先生にセバスにテレサ!あなた達が使者だったのね!」
嬉しさのあまり先生に抱きついてわんわん泣いてしまった。やはりこの国に来て知らず知らずのうちに、気持ちが張り詰めていたようだ。
学園にいた頃のように、先生の膝に乗せられソファに座った。数日離れただけなのに、先生の魔力が懐かしく感じられる。
「アリス、元気そうで良かった。顔色もすっかり良くなったんじゃないか?
アリスにはもう番が見つかったんだから、簡単に男性に抱きついたりしちゃいけないよ?」
「番?」
耳慣れない言葉に首をかしげた。
「ああ、この国では片翼の事を番とも呼ぶらしい。国外から来た花嫁に合わせて近年では片翼と呼んでいたらしいけどね、この国の文化では番と言うのが正式な名称だそうだ。
先程マーサ殿に教えてもらったよ。鳥の番などと聞いたことがないかい?」
「鳥の番……なるほど、聞いたことあります!」
「うん、さすがだね。ほら、アリスの番のカイル殿下が寂しそうにこちらを見ているよ?膝から降りられるかい?」
「は、はい勿論です!叔父様すみません、ついいつもの癖で……あ、先生!」
「いや、叔父様でいいよ。もうここは学園じゃないからね?」
「「叔父様?」」
マーサとカイルが不思議そうに呟いた。
「ええ、私はアリスの叔父です。アリスの母親の弟なんです」
「そうだったんですね!私はてっきり……いえ、何でもありません!メアリ、お茶をお願い」
珍しくマーサが取り乱していた。どうしたんだろう?
「さてアリス……とりあえずここに座ってくれるかい?隣に君の番を座らせても大丈夫かな?」
番……番……そう呟きながらアリスはまじまじとカイルを見た。うん、大丈夫そうだ。
「はい……あの、座るだけでしたら……」
そうは言っても3人掛けソファにマット、アリス、カイルの3人で座ると、必然的にカイルとの距離は近く、男性に免疫の無いアリスはドキドキしてしまった。
「ちょっと君の家で色々起こりそうでね……とりあえず身の安全を守るために、先に婚姻届けにサインして欲しいんだ。
幸いなことにアリスの番は他国の王族だ。侯爵家と言えど手は出せなくなるからね」
「ええ?結婚すると言うことですか?」
「とりあえず書類上ね。まだ体調が万全ではないから結婚式は落ち着いてから挙げる予定だ。
まぁ、番が見つかったんだから遅かれ早かれ結婚するんだから、何も問題無いよね?」




