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8の続きになりますので、sideレイカから少し遡ります。

「レ、レイカ様っ!?」


 メアリが叫ぶと、レイカと呼ばれた美少女は焦ったように走り去った。


「アリス様、申し訳ありません。あの方はレイカ様と言ってカイル殿下の従妹です。

 兄妹の様に仲の良いお二人ですので、大好きな兄を取られるようで、寂しかったのかもしれません。

 とりあえず、お部屋へ戻りましょうか?」


 メアリが何か言っていたが、アリスはぼんやりしてしまい、メアリの言葉が頭に入って来なかった。


「喉が乾いていませんか?すぐにお茶をご用意しますね」


 気付けば部屋に戻り、ソファに腰かけていた。


「我がニジノ王国の王族は、片翼以外の恋人を持つことは許されておりません。後に王位継承権を巻き込んでの悲劇を生むからだと言われております。

 悲劇はもちろんですが、少しでも女性との噂があれば片翼が見つかった時に悲しませるからだとも言われております。

 カイル殿下もしきたりに従い片翼を探し求めた15年間、女性の噂など全くございませんでした。もちろん、その前もです。

 それに、年のほとんどを国外で片翼探しの旅をしてお過ごしのカイル殿下に、他に恋人を作る余裕などございませんでした。

 ですので、カイル殿下を信じてはくださいませんか……?」


 “ええ!?15年?15年間探していたって言った?そんなに長く探していたなんて、初めて聞いたわ……

 でも逆に心が折れて癒しを求めたくなったんじゃないかな……?レイカ様……めちゃくちゃ美少女だったし……”


 悪い方に悪い方にどんどん思考が沈んでいっていたその時、大きな音がして部屋のドアが開けられた。

 そこには、何故か号泣しながら騎士に腕を掴まれているレイカがいた。


「ごめんなさいー!!アリス様ー、さっきは本当にごめんなさい!」


 泣きながら涙も拭かずに謝る姿に、アリスはもちろんその場にいた侍女達も護衛騎士達も驚きで目を丸くした。

 護衛騎士が腕を離すと、レイカはアリスの座っているソファの横へ来て、ドレスが汚れるのも気にせず床に膝をつき、アリスの手を握りしめた。


「アリス様、何も知らずにあんな酷いことを言って本当にごめんなさい!私カイルお兄様が好きだったのーっ!


 だから悔しくて、でもお祝いしようって来たのに、アリス様がお兄様を拒んでるって噂で聞いてカッとなってしまったの!本当にごめんなさい!


 お兄様が私が片翼だったらよかったのにって言ったのも、私が9歳の時なの!8年探しても片翼に出会えなくて、ちょっと落ち込んでる時に子供相手に言っただけなの!わざと誤解するような言い方して、本当にごめんなさいー!うえええええーんっ!ひっく……ひっく……ごめんなさい……」


 その後、レイカは何度も何度も謝り続けた。


 “どどどどどうしよう!超美少女に号泣されとるー!

 落ち着け、落ち着くのよ!レイカさんはカイル殿下が好きだったのね。でも、片翼が現れたから諦めてお祝いしようと来てくれたのに、カイル殿下が片翼に拒まれていると聞いて心の蓋が一気に外れてしまっちゃったのね……

 相手への気持ちが大きければ大きいほど、その気持ちに蓋をするのは大変だったと思う。

 それなのに、蓋をする原因になった女は大好きな彼を拒んでいる。うん、私でもぶちギレるな。

 要らないなら私にちょうだいよって思っちゃう。でも、それを素直に認めて恥もプライドもかもかなぐり捨てて、こんな風に謝ることは出来ないと思う……この子は凄いな……

 きっとたくさんの愛情を受けて、真っ直ぐ育ったんだろうな……私も前世はそうだったな……優しい家族に友達に……当たり前に幸せな家庭だった。

 それが普通で当たり前だと思っていた。まぁ、女子校だったから男性との接し方が分からずに拗らせ喪女だったけどねー!”


 冷え固まった心が溶けていくのを感じながら、アリスは無意識にレイカの髪を撫でた。


 “ふおっ!なんだこの手触りは!?ちょっと私もここに来てからツルツルふわふわになったと思ってたけど、これは……まさに絹糸のようだわ!

 って絹糸の束なんて触ったこと無いけど。さすが生まれながらのお姫様ね~……この感触……うう、癖になる。失礼だからやめなきゃと思うのに……可愛い~!

 そう言えば女子校だったからこんなふれ合い普通だったけど、この世界ではボッチだったもんな~……誰かに触れるのって久しぶりかも……しかもレイカ様の魔力が心地良い”


「あっ!ごめんなさいいつまでも床に座らせてしまって!ここに、ソファに座ってください!」


「いえ、私にそんな資格ありませんからー!っううう」


「ええ!意外と強情!私の精神も持たないし、お願いだからこっちに座って?」


「うっううう、わがりまじだ……ぐすっ……」


「ちょっ、誰か濡れタオル持ってきて上げて。

 その、レイカ様、私怒ってませんからね?驚きましたけど、すぐに誤解を解きに来てくださいましたし……私だったらこうやって謝りに来る勇気はありませんわ……レイカ様は凄いですね。

 同じ年くらいなのに……私も逃げてばかりいないでしっかりしないといけませんわよね!」


「いえそんな、悪いのは私ですから!傷付けたまま放っておくなど……

 えっ?あれ……?アリス様は11歳くらいでは無いのですか……?」

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