ハンター (後)
リーダーっぽい人はライオンかな、赤茶けた肩までの髪が広がるように伸びてるし。でも耳やしっぽは見えないね。背も高いけど筋肉も凄いワイルド系お兄さんだな。
服装も革の胸当てやすね当て、グローブの一部に金属がついてる。全身金属の鎧を着たり大きな盾を持ったりはしないんだなぁ。
隣の、語尾を伸ばして話してる女の人は人族かな。動物的な特徴は見えるところにはないみたいだし。長くて青い髪はリアルで見ると凄いな。眉もまつげも青いよ。ちょっとだけ髪より濃い色だけど。
矢筒は背負ってるけど荷物はウエストポーチしかつけてないな。これも拡張してあるバッグかな。弓を持ってるのはエルフのイメージなんだけど、胸はエルフっぽくないよね。
このにゃんこは間違いなく獣族だな。耳も尻尾も真っ黒な毛で覆われてるから黒猫さんだね。なんかリバイバルされた武○士ダンサーみたいな格好だなぁ。でも上は半袖のチュニックに肘までのグローブ、サイハイソックスだからあれよりは肌が見えないや。虫刺されとか大丈夫かな、マントじゃ防げないよね。
斥候とか偵察とかが似合いそうだけど、にゃんこだから『飽きたにゃ』とか言ってひなたぼっことか始めそうだよなぁ。
こっちの優しそうなお兄さんは人族にしか見えないね。どこかに特徴はないかな。弓を持ってるからこの人もエルフさん? でもサークレットはしてないし耳も尖ってないなぁ。
さらさらな白金の髪に青い目で、私のエルフのイメージにピッタリなんだけど。
そういえば長命種の人族の耳が尖っているかどうかを聞かなかったね。
それにしても杖を持ってる魔術師はいないんだね。
『来年五の月までは、ソロのハンターはここまでは来ねぇぞ』
ライオンさんの声は大きいな。怒ってる感じじゃないけど。
『そうね~、特にいまは東には行かないわね~』
ゆるふわお姉さんは頬に手をあてて考え込んでるみたいだな。
『アタシも東側は気をつけてるけど大型は増えてないわね。湖のあたりまではパーティーを組んでるなら大丈夫だと思うわ』
プリ先生は皆に囲まれた真ん中にいる。よく緊張しないよね。
『守護者様も大変な時期に、ありがとうございます。ギルドに報告させていただきますね』
エルフっぽいお兄さんは所作がキレイだね。見習わないと。
『ええ。でもソロでの狩りは控えた方がいいわ。まだ東までは手が回らないのよ』
プリ先生はなんか困ってるみたいだ。なにかトラブルかな。
『口開けて見てるにゃ。キョロキョロしてておもしろいにゃ。スリカータみたいにゃ。ラムスはどう思うにゃ』
『…………』
黒いイケメンがにゃんこに頷いている。このふたりは別の話をしてるみたいだね。
他の人たちが真面目な話をしてるっぽいのに、さっきからこの人だけしゃべらないで頷いてるだけなんだよね。怪我とか病気で喋れないのかな。
黒いイケメンも獣族だけどムキムキっていうよりしなやかな黒豹みたいな感じだなぁ。背は一番高いな。しっぽもちょっと癖のある髪も黒いし、服装も黒っぽい。
武器は槍を持っていてライオンさんみたいに装備品の一部に金属が使われてる。
獣族だからスピード重視なんだろうか。重い装備じゃそのスピードが活かせないもんなぁ。
私の右はライオン、左は黒豹か。優しそうな女の人の隣が良かったんだけど。みんなプリ先生に注目しているからちょっと近づいてみようかな。
「がうぅ、きゅん」(あり、きをつけて)
きゅうきゅう鳴くガウターをそっと撫でて宥めると、こそこそと黒豹さんに近づいた。
あっ! この人レッグポーチをつけてるよ。ちょっと見えにくいから横に回ってみよう。
格好いいなぁ、こんな感じの欲しかったんだよね。後ろに移動して外ポケットを数えてみた。
ウエストと太もものところをベルトで止めて固定してるんだな。へー、こうなってたんだ。正面に戻って全体を見た。
前世ではバイクに乗ってる人がつけてたのを見たことがあるけど、自分には似合わなかったから持ってなかったんだよね。
また黒豹さんの後ろに行ってみる。
革が飴色になって使い込んでる感じがまた格好いいよねぇ。さらに横から近づいて細部まで確認してみた。
アリは無口なハンターの右足の周りを移動しながら、レッグポーチを気がすむまで観察した。
『ガシッ』
急に頭に負荷がかかったな。満足したアリはなんだか固いものに頭を押さえられた。なんだか嫌な予感がしたので恐る恐る視線をあげた。
『…………』
鋭い目つきの黒豹っぽい男性が、アリの頭を片手でホールドしながら凝視している。
「…………」
ヤバいめっちゃ見られてる。顔怖~。
しばし見つめ合うふたり。
すると無口なイケメン大男はふっと表情を緩めた。
『コバジョンみたいだな』
そう言って二度三度アリの頭を優しくなでた。
その声は低音で腹に響き素晴らしく心地よかったが、アリはなんと言われたのかサッパリわからなかった。
『『『ぶふぁっ』』』
それと同時に他のハンターたちが吹き出した。
『で、では失礼する。ふぐっ、お前らっ、依頼品は確保したんだ。行くぞ』
ライオンっぽいリーダーがなにか言ったあと、プリ先生が私の肩に戻ってきた。ライオンさんは地面に差した剣を払って鞘に収めると、笑いをごまかすようにメンバーに呼びかけ、北の方に歩いていく。
『またにゃ、チュッ』
にゃんこさんがウインクと投げキッスであとに続いた。黒いしっぽがゆらゆらしている。
『では失礼します。守護者様、管理者様』
エルフっぽいお兄さんが丁寧に頭を下げて立ち去る。私も真似して丁寧に礼をしてみた。
『次代ちゃんも~、これからよろしくね~』
ゆるふわお姉さんが背中を向けたらマントがひるがえって、青い髪を挟むようにコウモリっぽい皮膜の羽根が見えた。小悪魔ちゃんコスプレみたいなヤツが。
お姉さんは翼族だったのかぁ。エルフじゃなかったや、たぶん竜人さんなのかな。
『……』
黒いイケメンさんはペコッっと軽く頭を下げていった。
さっきはなんて言ったんだろう。捻り潰すぞ! とかじゃ無さそうだけど。
クスクス笑いながら去っていくハンターたちを、まったく言葉が理解できなかったアリは、ぼんやり考えごとをしながら見送った。
何日も森にいるハンターって、もっと臭いんだと思ってたけどそうじゃないんだね。
男女混合パーティーだからお互いに気をつけてるのかな。嗅覚のいい獣族だと臭いに耐えられないからかな。
そういえば頭部が完全に動物な人はいなかったな。残念だよ。
「さてと」
知りたいことがたくさんできた。ことばを覚えた頃にまた会えたらいいなと思いつつ、ガウターを振り返る。
「くぉん、きゅ~ん」(ありはこばじょんなの?)
ガウターが首をかしげて、こちらを見上げている。
「ん? なあに、ガウター」
「あの大きいの、アンタのことコバジョンみたいだって」
プリ先生がプルプル震えて目を細めながら教えてくれた。
「えー! なんでー?」
そう言われてみれば口がコバジョンって動いた気もするけど、あまりの声の良さにうっとりしちゃってた。
それにしてもなんでコバジョンなの? 憐れっぽいの? それとも茶色いからか。雑魚っぽいとか? まさか顔がまん丸いからじゃないよね。
もちろん自分の周りをクルクルまわるアリの姿が、焦ったコバジョンの動きに似ていたからである。
アリに恋愛フラグが立つのはまだ早かったようだ。
「なんでだよ~~」
アリの叫び声は目の前の海へと響き渡った。
スリカータはミーアキャットのことです。




