漫才「旧一万円札」
漫才15作品目です。どうぞよろしくお願いいたします。
「銀行強盗、うまくいったなあ」
「喜ぶのはまだ早いようだぞ」
「え? なんで?」
「見てみろ、お札が全部聖徳太子だ」
「まじかよ、なんで銀行に旧札が置いてあったんだ?」
「古物商も兼ねてやっているっていうのかねえ、迷惑を掛けやがって」
「戻って新札に交換させようか?」
「だめだ、捕まりに行くようなものだ」
「他の銀行に行って、両替してもらうか?」
「旧札の大量持込みは危険だよ」
「でも、お金には違いないんだぜ」
「量が問題なんだ」
「タンス預金だって言い張ればいいだろう。一か八か、それでやってみようよ」
「そうしたけりゃそうしな。半分持っていっていいからさ」
「半分だけ?」
「お前の取り分だよ」
「もしも没収されたら?」
「イコール逮捕だな」
「お前はどうするんだ?」
「とりあえず、残りの半分を持って逃げるよ」
「ずるいぞ」
「そう思うんだったら、他の方法を考えることだな。銀行のことは忘れろ」
「うーん。旧札でも、使えることは使えるんだよなあ」
「もちろん。だけど、店からは怪しまれる」
「そうだよなあ」
「待てよ、二丁目のおばあちゃんのやっているたばこ屋だったら、大丈夫かもしれないぞ」
「なんで?」
「長く生きているんだから、旧札の方にも馴染みがあるだろうからな」
「なるほど。違和感なく受け取ってくれそうだ」
「あの店にはお前のほうがよく通っていたよな」
「やだよ、俺、せっかくたばこをやめたんだぜ」
「吸わなくていいんだよ」
「これだけあれば相当な数買えるな。持って帰ってこれるかなあ」
「一度に全部は使わなくていいんだ。おつりを貰ってくるのが目的なんだから、一個買ってお釣り受け取る、それの繰り返しだ」
「十億円もあるんだぞ。いったい何回通えばいいんだ?」
「考えない方がいい」
「計算してみようか」
「しないほうがいい。とにかく今はこれでいくしかないんだ、一度試してきてくれ」
「わかった、行ってくるよ」
「ただいまー」
「どうだった?」
「お釣り貰って来たぞ」
「でかした、うまくいったんだな」
「千円、五百円、それと百円、すべて古いお札でくれたよ」
読んでいただき、どうもありがとうございました。