期限とは
「シアラの買い物ってこんなに長いのか……」
「シアラというより、女子の買い物がが長いんだと思う…」
ショッピングモールに着き各々買い物をするはずだった……。
しかし二人は、シアラの荷物持ちとして連れまわされ、家電売り場にいた。
シアラは初めからそのつもりで、二人を買い物に誘ってきていたのだろう。
周りには同じ境遇の男達がたくさんいる。
「いろいろ見る割に全然買わないな」
「確かヘアアイロンは何個も持ってたはずなんだけど」
「何個もいらないだろ」
両手に重い荷物をたくさん持ち、ガレンは思わず不満を漏らす。
この時、ガレンはシアラがドSの中のドSという事を知らなかった。
「二人とも何か言った♡?」
シアラは笑顔で、ヘアアイロンのコードを握りながら振り返る。
トウゴとガレンは決して霊能力者ではない。
しかし二人には、シアラの周りにおぞましい紫のオーラが、はっきり見えた。
「シアラ、落ち着くんだ、それはムチじゃなくてコードだよ」
「に、荷物持つの楽しいなーって話してたんだよ」
「ホントウ♡?」
「マジだって!」
シアラはどんなものでも凶器にできるのだろうか。
カウボーイのようにコードを振り回す。
コードで出来た輪っかは、完全に二人の首元を狙っている。
「次は絞めるわよ」
「は、はい」
初めてシアラの意外な一面(暴力的)を目の当たりするたガレン。
生まれたての小鹿の様に震えていた。
トウゴも慣れてはいるが、いまだ恐怖心はぬぐいきれない。
買い物に戻るシアラに黙ってついていくしかない二人。
「トウゴも大変だな」
「普段はめちゃくちゃ優しいんだけどね」
トウゴもという発言に、ガレンにも何かあるのかな? と思うトウゴ。
だが、プライベートな事だとまずいのでとりあえずスルーする。
その後2時間ほど経ち、買い物を終えて帰る3人。
トウゴとガレンは疲労困憊。
授業開始が数日先なのが唯一の救いだ。
紅段に五時のチャイム「夕焼け小焼け」が流れる。
「もう五時か」
「ホント買い物って時間たつの早いわね」
めちゃくちゃ長いわ! と突っ込みたくなるトウゴとガレン。
だが、何をされるか分からないのでツッコめない。
シアラは両手に沢山荷物(凶器)を持っているのだから。
同時にトウゴは、5時という言葉にモヤモヤした引っかかりを感じる。
思い出せそうで思い出せない。
「五時? 何かあったような?」
「そう? 気のせいじゃない」
「そーいや、俺も何かあった気がするんだよな……」
思い出せずモヤモヤしながら、寮へ帰る三人。
しかしこの類のモヤモヤは不意に解消される。
「五時…五時…あーっ!」
「びっくりしたぁ」
「耳いってぇ」
急に叫ぶシアラに驚くガレンとトウゴ。
シアラは大切に持っていた買い物袋を道に放り、焦りながらバックの中をあさり始める。普段は冷静なシアラだが、一心不乱に探す。
「どうしたの? 珍しくそんなに焦って」
探している物を見つけたシアラだが、まだ焦っている様子。
「やっぱりそうだ……!」
「だからどうしt……」
「コレよ!」
シアラはトウゴとガレンにプリントを見せる。
そこには【クラス希望書】と【提出期限5時厳守】の文字。
「あ……」
「「「あーーーっ!」」」
三人とも買い物が長引きすぎて、すっかり忘れていた。
「どうしmqはdうuhkふfw」
「おい、シアラが壊れた!」
普段冷静な人ほど、いざテンパると壊れやすいのか
シアラは頭を前後左右に振りながら、腕をブンブンと回す。
「それより今はクラス希望書」をどうするか決めないと」
「gヴyfbvうhkpえ」
「希望書出さないとどうなるんだ!」
入学式で、生徒にあんな事をする学園長がいる学校の教師相手に、普通に叱られるだけで済むとは思えない。
ガレンとトウゴは、道に落ちたプリントをきちんと読み直す。
その後ろでシアラは壊れたまま、訳の分からない呪文的なものを唱え続ける。
「希望がない場合、希望書を出していない場合、は学園側が勝手にクラスを決めるって」
「よかった、ひとまずペナルティーとかは無いんだな」
「シアラ!シアラ!」
トウゴに肩を揺すられ、シアラはやっと正気に戻る。
どうしても不安は残るが、今更どうしようもないという結論に至り、寮に帰る三人。
三日後トウゴ、ガレン、シアラのもとに一枚のプリントが渡される。
【あなたのクラスは四組 花美先生 です】
何かありましたら教えていただけると助かります!