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 少年の朝は早い。

 というより文字通り叩き起こされ続けて、逃げるように目覚めることを覚えた。


 少年の朝は早い。

 夜が明ける前に目を覚まし、夜明けと共に井戸から水を汲む。水は桶半分程度に入れるのがコツだ。それ以上だと、重くて運べない。水を汲む作業は、甕が一杯になるまで続く。


 水汲みが終わると、その水を使っての朝食の準備を手伝いをする。裏から薪を出して竈に火を入れる。

 火付けに使うのは薪の端を切り落とした木片だ。木片を切り出すのは面倒だが、量が少ないと火が薪に燃え移る前に消えてしまう。慣れない間は何度やり直したことか。木片の傍で金属の板に石を擦って火花を飛ばす。これも初めての頃は全然火が付かなくて怒られたが、今では十回以内に火が付けられるようになった。少年には十分な進歩だと思えたが、宿の主人には遅いと怒られる。

 竈の火が安定する頃には、宿の主人が切り分けた鍋の材料が揃っている。大きな鍋に水を入れて竈の上に置き、沸騰するのを待ってから材料を入れる。後は、火の勢いを保ちつつ、鍋の上に浮いてくる灰汁を掬うだけの時間だ。


 鍋を覗きにきた主人が火の通り具合を確認してから塩と麦を入れる。そうしたらもう火の勢いは必要ない。温度を保てるだけの弱火になるように薪の量を加減する。


 その頃には、宿泊客が部屋から出てくる。

 主人に言われるままに、木の器に麦粥を盛っては宿泊客に渡し、一段落ついたところで二度目の水汲みに出かける。使う水の量は泊まっている人数次第だが、大体は甕に半分も残っていない。

 汲み直した水で食器を洗って、朝の仕事が終わりとなる。つまりここまでがアサメシ前だ。


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