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壁を手に持った短剣の柄で叩きながら耳を澄ませる。
「この向こうに部屋があるな」
何度か壁を叩いた後で、男は振り返りそう言った。
「また隠し部屋か?今度はお宝があるんだろうな」
そう返したのは金属製の重そうな鎧を身に纏った男。片手には盾、片手には大降りの槌を持った男。どれもかなりの重量になるだろうに、まったく疲れた様子は見えない。
「また子供が居たりして」
後ろからからかうような声を出したのは、ローブに身を包んだ女性。手にはその体に不釣合いな程、大きな杖を持っている。女性の背よりの高い杖は、長さの割には細いシルエットを見せており、武器にするには心もとない。
「子供か魔物かは分からんが、何かの気配はあるな」
壁を調べていた男が言う。彼の装備は皮で出来た鎧だろうか。要所を守りつつも動きの妨げにならないように、最小限だけを覆っている。
「なら壁をぶち抜いて直ぐに戦闘と思えよ。先制に眠りの魔法を頼むな」
槌を持った男が声をかけると、皮鎧の男は壁から身を離して短剣を構える。
同時に後ろでは女性が杖を構えて、小声で呪文を唱えだす。
「いくぞ」
それを確認した金属鎧の男は、一言そう告げると、壁に向かって槌を振り下ろす。
一撃、二撃、三撃。
一振り事に壁には大きな穴が開いていき、直ぐに人が通れるほどの穴が出来上がる。
「眠りの霧よ」
女性の言葉と共に、一瞬、穴の奥に何かが満ちる。
その直後、3人は次々と穴の中へ飛び込んでいった。




