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風が気になって窓まで歩く。
窓の外に見えるのは中庭と、その向こうにある兵舎。兵舎の横にはいくつかの荷車が並べられ、兵達が荷車の上から荷物を下ろしていた。
今日は帰還日だったか。
その光景を見て思い出す。
臨時雇いの兵達を中心に行うダンジョンの掃除。数日間をダンジョンで過ごし、その間に集めたゴミやアンデットの欠片、死体という言い方も出来るがなにかしっくりこない、壊れているわけだし、だから欠片。放っておいてはまたアンデットとして復活してしまうので、地上へ持ち帰ってまとめて焼くわけだ。
ほかのゴミは鉄であれば溶かして別のものに作り変えるし、皮や布は程度にもよるが大半は燃やしてお仕舞いだ。
この派遣で直接的な儲けはほぼないが、それでもやるのとやらないのとでは、ダンジョンから持ち帰られる肉の量に大きな違いが出る。
始めた年こそ反対する者も多くいたが、数年掛けて肉の値段やダンジョンでの死者の数などを幾つも結果として積み上げた今となっては、反対する者は幾人もいない。
ふと頭に反対を続ける者の顔がよぎる。
「あの頑固者め」
あの老人はダンジョンの存在そのものが気に入らないのだろう。
ダンジョンに関する政策については尽く反対に回る。
そして最後に出てくる言葉は決まっている。ダンジョンなぞ埋めてしまえ、だ。
なにを馬鹿なことを、と思う。
ダンジョンから産出される食料はこの街になくてはならないものだし、まれに発掘される貴重な武具に至っては、まさに一攫千金と言っていい値段で取引される。
それがあるからこそ、他の街よりも豊かな生活が送れていると言って過言ではない。
それに、ダンジョンの中のアンデット達。
出入り口が一つだけだからこそ、警備を置くことで街の安全を確保しているのだ、あの穴を塞いでアンデットを見なかったことにしたところで、存在することまでは否定できない。
数十年後、討伐もされずに増えたアンデット達が新たな出口を作り出し、街に溢れたとしたら。
脅威は脅威として、常に監視し、対応しなければ、未来に大きな厄災となって帰ってくるだけだ。
この街を治める者として、未来に禍根を残す真似は出来ない。
貧しい者はその日の食事、その日の寝床を求める。
日々暮らせる居場所を手に入れた者は、数ヶ月後を考えて蓄えを求める。
自分が生きていく為、そして子供が生きてゆけるようにと求め続ける。
領主の仕事とは何か。
それは安定だと考える。
明日も今日と同じように朝がくる。
明日も今日と同じように仕事をする。
それが出来る場所を守ること。
今の領民達が。その子供達が。その子孫たちが。いつも通りに過ごせる街を守ること。
それが領主の仕事だと考える。




