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 村の入口には申し訳程度の門が作られている。

 それは村の家々を囲う柵の延長で、門に着けられている扉も、柵と大差ない。ただ、開くように作られているだけだ。

 魔物が入り込まないようにと作られた柵は、村の周囲をぐるりと囲んではいるが、街の壁とは比べるべくもない。いくつも立てられた柱に、横に渡した細い丸太を括りつけてあるだけのものだ。

 視界を遮らないその扉の周囲には、珍しく人が集まっていた。

 村長を始めとする村人が数人。

 荷車を連れた村の外の人間が数人。


「仕事、ですか」

「ええ、我々には荷物を運ぶ人手が必要でして」

「しかし、今の街には」

「ええ、ええ、分かっていますとも、ダンジョンのある街には呪いがある。ですが、大丈夫です。行って頂きたいのは海の傍にある街です。別の街ですから、ダンジョンの呪い(・・・・・・・・)のことを心配する必要はありませんとも」


 不安げに顔を見合わせる村人たち相手に、男は尚も言い募る。


「それに近くの街に行けないとなると、いろいろご不便もあるでしょう。本来であれば、報酬は荷物を運び終わってからになるところですが、特別に、今だけですよ、特別に、先払いをしようではありませんか。海の傍にある街で必要なものを買ってくることが出来ます。もちろん、我々がお願いする荷物もありますから、大量というわけにはいきませんが。それに、運んで頂きたいのは塩です。もしよろしければ、そちらも格安でお譲りしましょうか」


 滔々(とうとう)を言う男に、村人たちは顔を見合わせるばかりだったが、一人の若者が口を切る。


「いいじゃねえか、俺行くよ。俺が行って塩買ってくるよ」

「いや、しかしなぁ」

「素晴らしい! ではあなたを雇いましょう。塩が必要でしたら丁度良い。あなたが運んだ塩の一部を報酬として差し上げましょう」


 素晴らしい。よかった。力も強そうです。などと言い続ける男に、若者もまんざらでもない顔で話をしている。村長たちは勝手に決まっていく話に、成す術もなく困った顔を見合わせていた。


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