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「どう思う」

「どうって、革加工ギルドの話かい?」

「それ以外あるまい」


 そう言って男は深く溜息をつく。

 最近の商業ギルドの閑散とした有様は、酷く心に堪える。何もやることがないと、自分には価値がないのかとも思えてしまう。それが、自分にはどうしようもない呪いが原因だとしても。


「そうは言っても、荷運び人には余裕がないな。塩を減らすわけにもいかない」


 塩を始めとした必需品の購入は、この街の商業ギルドが仕切っている。

 売りに来る者、買いに来る者、それぞれは商人の才覚だが、そればかりでは日頃の生活が成り立たない。常に必要とされる物を、必要な分だけ流通させるのは、組織的な動きが必要だ。

 別の物を商ったほうが利益が出るからと言って、商人がこぞって品物を乗り換えては、街の住民の命に関わる。

 呪いが流行ってからも、それは変わらない。

 契約している荷運び人には、一年間で運ぶ量が決められている。呪いが怖いから行きたくないと言っても、簡単には契約を解除出来ないようになっている。


 それ以外の、大抵はダンジョン関係の品だが、については物の流れは流動的だ。売る者、買う者、それぞれが見込んだ量を運ぶ。

 勿論、そちらにも商業ギルドが絡んでいる。

 革加工ギルドから別の街に売りに行ってくれと言われてた。それ自体は今までもやっていたことだ。ここ最近減ったのが、この街に買いに来る商人達で、それが革加工ギルドから見れば物が売れないと見えるのだろう。

 そして、商業ギルドが売りに出している分も最近は減っている。

 それが荷運び人の問題だ。


 塩を始めとした必需品を運ぶ荷運び人であっても、呪いとは無関係とは言えない。

 それどころか、隣街でも呪いが流行っていると聞いている。

 呪いに倒れた荷運び人のノルマを、他の商品を運ぶはずだった荷運び人に振り替えて、品物の量を維持しているところだ。革加工ギルドの話に乗るにしても、人が居ない。


「そうは言っても、断って済む話でもあるまい」


 完全に無視した場合、別の街の商人達と革加工ギルドの結び付きが強くなる可能性もある。この街で加工した革を、別の街の商業ギルドが一手に扱う、その可能性は今はほぼ無いが、将来に渡って無いとは言えない。

 少なくとも、提案を真摯に検討したと見える程度には譲歩が必要だろう。


「冒険者の大半は兵士に盗られただろう。革の量がそれほど用意出来るとは思えないし、荷物の片隅で良いと思うがね」


 塩の対価として売っているのは、この辺りで採れる農作物が中心だ。

 山間にあるこの辺りで栽培される物には、海沿いの街では栽培が難しいものがある。

 そのため、塩を運んで来た荷運び人は、日持ちがするように加工した農作物を担いで街を出る。本来、運ぶ荷物の中に、魔物の革は入っていない。


「それで納得してくれるかね」

「納得してもらうのさ。我々は商人だからね」


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