03
ゆさゆさと揺さぶられて目が覚める。
目を開けるとそこには...予想通りの茜のドアップ。
ぱっちりお目目にふわふわな髪の毛。うん、今日も可愛いわね。
「朝だよー!起きてーー!朝ごはん食べて早くやろうよ!」
「はいはい...慌てないの。まずは着替えさせてちょうだい?」
「先行って待ってるからね!」
そういって部屋を出ていく茜。まったく困ったものね...私の興味を引くために紹介されたはずなのだけど、これじゃ付き合わされてるみたいね。
そのままダイニングへ向かい、朝食を食べる。今日も美味しい夜霧お手製サンドイッチね。
そのまま食べ終わり、茜に手を引かれVRの間(茜命名)へ。
「じゃあキャラ作ったら初期地点集合ね!」
「わかったわ」
開始時刻までゆったりとVRギアに腰掛け他愛もない話をする。そして、時間になったので手元のスイッチを押す。すると上から頭にピッタリと被さるように箱が下りてきて優しく頭を固定される。そして、体から力が抜け、意識が沈み...
--ようこそ【Ultimate Free Online】へ--
割とシャープな現代受けしそうなフォントの文字が浮かび上がりその文字の中心から強烈な白い光が溢れ出す。
視界を埋め尽くし、そして...何も起こらない。
...?初期不良かしら...
そんなことを思っていると文字が浮かび上がってくる。
-目を閉じてください-
あぁ...なるほど。確かに眩しいくらいの光量でしたね。癖で目を開けっぱなしでした。
一旦目を閉じてまた開ける。すると、そこは目の前に大きな鏡が置かれた神殿のような場所でした。
作りが凝ってますね。私が感心していると...
「ようこそUFOへ...ここがアバターをつくる場所よ」
丁度後ろを見まわしていた時に私の正面に見目麗しい女性が現れた。
「随分とストレートに言うわね...世界観が台無しよ?」
「どうせプレイヤーはまだゲームだと思ってるんだからどうでもいいのよ」
ふむ...随分やさぐれてるわね。これは何かあったのかしら?
「...何かあったのかしら?」
「話聞いてくれるの...?」
私は黙って先を促します。口ではなく目で、そのほうが話しやすいのです。
「うぅぅぅ...みんなみんな私のことをよくあるゲームのお助けAIだと思って...!碌に話も聞かずにやれ顔を変えろだのスキルを見せろだの言いたい放題!しかも、ゲームの裏情報を教えろとかワケわかんないこと言いやがって!私は権限が無いからゲームの情報は答えられないのに使えないとか何とか罵詈雑言!きぃいいいいいい!」
これは凄いわね。ここまで感情豊かに思考するなんて...これはとんでもない力の入れようね。
取り合えず慰めてあげるのがいいのかしら。
「こっちに来なさい...ここに座って、よしよし...」
何となく流れで神殿にあった椅子に座り、隣にAIさんを引き寄せナデナデしている。何でこうなったのかしら。
「落ち着く...ハッ」
AIさんは何かに気づくとバッと立ち上がり服装を整えてこちらへ向き直る。
「ん"ん"っ...改めまして、アステラよ。ここであなたのUFO内の依り代を形作ってもらうわ。あと...さっきはありがとう...」
中々可愛い人ね。
「まずは名前ね、そののちに種族、そして姿形と才を決めてもらうわ」
才?よくわからないけどその時になったらわかるわね。
「名前はミオンよ。使えるかしら?」
「ミオン...オッケーよ。被ってないわ」
良かったわ。開始時刻と共にログインしたとはいえ、何故かアステラを慰めてた時間があったからもう取られちゃったかと心配だったのよね。
「次は種族ね...色々あるから選んでちょうだい。一応何選んでも人型よ。」
目の前にウィンドウが出てくる。そこには色々な種族が書いてあった。
人間にはじまり獣人、竜人やエルフなど、死人なんてものもある。そして最後に特殊というカテゴリーがあるがこれはどうやら詳細が見れないようだ。
「特殊とは?」
「それはランダムで選んだときのみに出てくる可能性がある種族ね。かなり色々入ってるから面白いわよ。ただし、外れも多いわ」
ふむ...そんなことを言われては選べと言われてるようなものじゃないですか。
良いでしょう。やってやりましょう。
種族一覧の最後にあったランダムを一瞬タメてからポチっと選択。
そしてアステラの口から告げられたのは...
「あら...天使よ。珍しいとかいうレベルじゃないわね。100万に1つを当てるなんて...」
天使?...リアルと大違いね。
いつも通りの表情でいると...声をかけられた。
「...普通もっと喜ぶものだと思うけど...おめでとう。レアリティ的には最高だわ。これが説明よ」
再び目の前にウィンドウが出てきて、そこにはこう書いてあった。
【天使】
一般的な種族と比べ、全体的に優れている。羽を畳むと人間と見分けがつかない。
雑すぎませんか?もうちょっと能力とかあると思うんですが...
「言いたいことはわかるわ。けれど、このゲームはかなりプレイヤーの能力に依存してる部分があるの。スキルはあるけど、それを使いこなせるかは本人次第。それも自由よ。だからぶっちゃけ種族とかあんまり関係ないのよね...後に決める才のほうが重要よ」
なんと...衝撃の事実。自由と言うのはそういう部分にも当てはまるのね。
「じゃあ姿を決めてもらいましょうか。とりあえずこれが今のあなたそのままよ」
そう言って出てきたのはちょっとツリ目で端正な顔立ちのいつもの自分。サラサラロングの金髪が腰まで下ろしてあります。
体は細身で標準的ですが肩甲骨、背中、腰の辺りから3対計6枚の純白の翼が生えています。うーん、ファンタジー。
「髪の毛を銀色に変えて瞳を紅にしてもらえるかしら」
そこ以外は体の感覚が変わりそうで変えたくないわね。
そう言うと、瞳と髪の色が変わった自分が映る。
「これでいいわ」
ジッと見ていたアステルが口を開く。
「じゃあお待ちかねの才よ。これは武・魔・技の三種類からなるわ。武は名の通り戦いの才能、武器の扱いや戦いの動きに影響してくるわ。魔は魔法関係。技は生産関係ね」
ふむ...これはある程度のお助け要素なのね。ほぼ完全に自由な世界にいきなり降り立ったら絶対進むべき道に迷いそうだし。
「ミオンが思ってる通りよ。これはUFO内のプレイヤーのある程度の指標になる。勿論才を取らなかった分野も修練すれば普通に会得できるわ。自由だもの。んで、この才を決めるってとこにリアルが関わってくるのよね...」
リアルとか言っちゃっていいのかしら。
「個人には向いてる向いてないというのはやっぱりあるわ。なのでそれを脳波から算出してお勧めの才を出すのよ。ただし、これはリアルに影響があるかもしれないし任意となってるわ」
それはそうね。仕事にしてる方とかそれを否定されたように感じてしまうかもしれないもの。
まぁ、私にはしがらみも無いしやってもらおうかしらね。
「わかったわ。結果が出るまでちょっと待ってね」
...さっきから考えてることに対して返事をもらってる気がするのだけど。
「思考操作できるんだから読み取れるわよ。特殊なAI限定だけどね」
良かったわ。誰にでも読めるとかではなくて。
「...出たわ。ってちょっとどういうこと!?全部の才がMAXって...そんなことあるの...!?」
...やはりそうなるのね。
「気にしないでちょうだい。私はちょっと普通じゃないだけだから」
「気にしないでって...えぇ...わかったわ。それでどの才を選ぶの?」
納得いかないながらも抑えてくれたみたいね。いい人だわ。
「そうね...技の才で」
「了解...オッケーこれでミオンの依り代は完成よ。何か質問とかある?」
「武器とかスキルとか無いのかしら?」
「そこらへんは世界に降りたら見つける場所があるわ」
「...究極の自由とはどの辺まで自由なの?」
「作ろうと思えば何でも作れるし極めれるわよ」
「軍事系も?」
「えぇ。ただし、相当な修練が必要だけどね。そういう複雑なものほど気の遠くなるような年数が掛かるわ」
成程、確かに物凄い数の部品で出来てるものね。スキルはあくまで補助だし簡単には作れないわよね。
「わかったわ。質問はもう無いわよ」
「じゃあこれで完了ね...ミオンの行く道に幸あらんことを」
「ありがとう」
そういって私は光に包まれた。
ちなみに魅音もお胸が大きいです。




