02
前振り長いですね。すみません。
VRMMOをプレイすることを決めてから一週間が経った。
今日は注文したVRギアが届く日。そして明日が正式サービス開始日だ。
さっきから茜がソワソワしていて落ち着かないハムスターみたいで可愛い。
紅茶を飲み終え、そろそろ来るかしらね。と思っていた時遠くから門を通ったトラックが来る音が聞こえた。
そして、茜にも聞こえるかな、といった具合まで大きくなってきたとき...
「キタッ!そうだよね!?」
「ええ、来たわよ」
結構距離があるのに中々鋭い子ね。楽しみが感覚を鋭くするのかしら。
でも、興奮しすぎて言動が小学生よ。一応同い年なのだけど。
家の扉の前の広場にトラックがやってきて、チャイムが響く。
「はいはーい!待ってました!」
「お兄さん達が困っているからやめなさい」
チャイムが鳴るとほぼ同時に凄い勢いで開け放たれた扉とテンションに配達の業者さん達も驚きを隠せないようだ。扉から離れていて本当によかった。
「九流 魅音様でよろしいですか?」
「ええ」
差し出された伝票にサインをして、メイドである夜霧を呼ぶ。
「夜霧。案内を頼んだわ」
「畏まりました。それではこちらへお越しください。」
都会から一歩離れた山奥にある我が家はかなり広い。元々は九流家が所有する別荘の一つだったが、色々とあって所有者は私となった。そこにメイドの夜霧と居候の茜と私の三人で住んでいる。
夜霧はとある場所で拾ってきた子であり、メイドとして教育したのだが、何故か家の手入れに関する他の事も仕入れてきており、いつの間にか屋敷全てを一人で管理するようになった。化け物ね。
業者のお兄さんたちがVRギアを運んでいく。行先はこのために空けた私たちの隣の部屋だ。
そして茜お待ちかねのVRギア開封。
「えっ...これって一番上のグレードだよね!?すごい!すごい!!すごい!!!」
茜大興奮。ふふ、喜んでくれると嬉しいものね。
私が用意したのは最新にして最高のグレードのVRギア。ヘルメットのように被るものや目だけ覆うものなど色々あるが、私が選んだのは椅子に座り上から被さってくるタイプの高級モデルだ。
例えるならば飛行機のファーストクラス。その豪華さを突き詰めたような形である。椅子型なだけあってかなりマシン部分にスペースを持ってこれるので処理能力や描画能力もピカいちである。
「お嬢様...」
「大丈夫よ。寄付だもの。茜の喜ぶところが見たかっただけよ」
私の言葉を聞いて夜霧は呆れた顔をする。美人が台無しよ?
ちょっと国にお願いしただけよ。そしたら快く寄付してくれたわ。
UltimateFreeOnline---UFOは前代未聞の規模を実現したVRMMOであり、なんと国が協力しているのだ。
流石にこの規模を一企業がやるのは無理があるだろうと夜霧に調べてもらったところ、未発表ではあるものの国が関与していることがわかった。そこでちょーっと伝手がある私が可愛らしくお願いして居心地を改造してもらった軍用ギアと先行組となる3万アカウントのうち2つを寄付してもらった。
茜も大興奮だし私は満足。国はこんなことで少し借りを返せるのだからみんなハッピー大団円ね。
「ミオンー!大好きー!あーいーしてーるよー!」
「はいはい、私も愛してるわよ」
設置から初期設定、ソフトのインストールまでを全て業者に任せ、私たちは夜霧を残して部屋に帰る。
「いやー、まさかあんな凄いギアを選ぶとは、御見それいたしましたぁー!」
「私は自分の興味には妥協しないのよ。知らなかった?」
「だってそんなとこ一度も見せてくれなかったじゃんよー」
「あら、そうだったかしら」
「どこ行っても何してもあらあらうふふと微笑んでばっかのご令嬢しか見てないよ!火山が目の前で噴火したときも、ジャングルで虎に襲われそうになった時も!」
「そんなことはないのだけど...」
どっちも茜が慌てふためいてるところが可愛かったことしか覚えてないわね。
そしてインストールまで終わり、いつでもプレイできるという報告を受けた。
「明日からゲーム三昧するぞー!」
そして夜が更け次の日が訪れる。
キャラが定まらない...
魅音もかなりお茶目な感じです。