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初投稿です。
「---それでねー!駅前にできたスイーツ屋さんのグレートタイタンパフェがもうすっごくてさー!高さが80cmくらいあんの!」
それは最早パフェなんて可愛らしいものじゃないわよね。
「ほんでもって頼んだ人も下から食べれないからって立って食べてんの!もー笑い殺される所だったよー」
まぁ普通に考えてそうなるわよね。少し見てみたかったかも。
「ハイ!これがその時の写真!」
突き出されたスマホを見て驚いた。1m90cmはあろうかというムキムキ黒人男性が、聳え立つドリルの頂点に今まさに食らいつかんとする場面だったからだ。獲物に食らいつく瞬間のライオンを思い出した。
「...よくこんな決定的瞬間を撮れたわね」
「にゃはははは!この私、茜様にかかればその程度造作もないのだよ!」
そうやって机を挟んで目の前で高笑いしているのが私の親友であり同棲相手でもある高木 茜。まぁ、今は九流 茜だけども。出不精の私と違い、積極的にあっちこっちをふらふらしては面白い話や珍しいものを持ってくる子だ。
そうして取り留めもない話を続け、この話が終わったら寝ようかな...と思っていた時のことだった。
茜が少し雰囲気を変えて話しかけてくる。
「ところで、ミオンさんや...実は飽きてるんでしょ、この世界」
「唐突ね...どうして?」
「3年も一緒にいればそれくらいわかるよー」
そう言って私の目を真っすぐ見つめてくる茜。
私は黙って続きを待つ。
「いっつも遠いところを見てるっていうか、なんか違う世界にいるっていうかそんな感じはしてたんだけどさー...」
ジッと真っすぐ見続けられると...恥ずかしいわね。
「そこで照れるの!?そういう雰囲気じゃなかったよね!?」
もっとシリアスな感じだったのにー!っと頭を抱える茜。可愛いわね。
「ハァ...とにかく!ミオンはつまらなさそうなの!全体的に!」
「...それで?」
「そこで、茜チャンから提案です!ドン!」
宣言通りドンっと置かれたスマホを受け取り、目を通してみる。
「Ultimate Free Online...?」
「そう!この世界がつまらないなら、異世界行っちゃえー!ってワケ」
そのページに書いてあったのは、最近めっきり生活に浸透してきたVR技術の集大成とも言えるもの。
医療や軍事に留まらず、民間のありとあらゆる体験をVRでシュミレートできるようになってきた近代。
そこで集まった膨大なデータ、そして経験と技術を詰め込み昇華させ出来上がった究極の娯楽。
AIすらも超高度な演算処理と脳波の研究により、ほぼプレイヤーと変わらず、ファンタジー要素である魔法や空想上の生き物なども存在する。
冒険もよし、生産もよし、どこにいってもなにをしてもよしの究極の自由をあなたに!
...まさに異世界ってワケね。面白そうじゃない。久しぶりに興味が生まれたわ。
そこで、私が見終わるのを待っていた茜が話しかけてくる。
「どうですー?気に入っていただけましたかぁ?」
「...何でそんなに低姿勢なのよ」
「それがですねー、そこに書いてある通りすっごーいゲームなんだけど、その分すっごーいVRギアがいるんだよねー...」
それはそうね、これだけの規模を実行するとなると、全ての事象をあちら側で処理したとしても描画するだけで大変なスペックが必要ね。
「居候のワタクシとしてはそんな大金あるわけもなくですねー...そのー...何とかお願いします!!」
そう言って器用に椅子から飛び上がり机にフライング土下座を決めた茜。お胸が潰されて苦しそうだ。
「...まぁいいわ、何とかしてあげる。だから机から降りなさ」
「ありがとうございます大好き愛してるーーー!!!」
一気に言い切りながらヘッドオンしてくる茜。それを椅子を後ろにずらしつつ体を左に逸らしながら右腕で受け止め、その勢いのベクトルを上に逃がして回しながら左手で足を広げさせ、私の太ももの上へ。いわゆる対面座位。
美少女の柔らかそうなほっぺたをグニーっと伸ばしながら一言。
「...落ち着きなさい」
「受け止めてくれるってわかってたもんねー!」
そういって私をぎゅっとしてくる。...胸が胸に潰されて苦しいわ。
「...堪能したら降りてちょうだい」
茜が太ももから降りたのはたっぷり10分が過ぎてからだった。
実は詳細な設定とか存在しないんですよね。書きながら考えます。
06/02 高木 茜 が九流 茜である描写を追加。