第九十話 命か倫理か
こんにちわ!
新年初投稿です!
身に覚えのない子供を身籠った愛知県の女性、根本香織から助けを求める知らせを受けて駆け付けた隼人達だったが、今目の前で起こっている状況に驚きを隠せなかった。
「うわぁぁぁぁぁ!」
当の相談者である根本が、エリカによる解析を受けようとした瞬間に突然腹を抱えて苦しみ出したのだった。しかも、腹の中で何かが不気味に暴れているのが外からでも分かるくらいだった。
「まずいぞ!このままだと死んじゃう!」
隼人は焦りの混じった声でそう叫んだ。今も尚、根本は腹を抱えて悲鳴を上げながらのたうちまわっている。
「仕方ありません。隼人、ショック光線を撃って下さい!」
「え、どうして?」
エリカの提案に隼人は驚きながら訊き返した。
「今はまず、お腹の中で暴れている者を大人しくさせる必要があります。それに、今も母体には相当な負担が掛かっているはずですから根本さんも落ち着かせましょう。」
「わ、わかったよ。装甲起動!」
隼人はすかさずウインメタルに変身し、メタリックガンを構えた。
「ごめんなさい、根本さん!少し我慢してください!」
ウインメタルは苦しんでいる根本に詫びると、申し訳なさそうに引き金を引いた。
「メタリックガン、ショックモード!」
ショック光線を浴びせられ根本はそのまま眠るように意識を失い、不気味に動いていた腹の中の胎児と思しき者も動きを止めて大人しくなった。
「すぐに病院へ運んで詳しく解析しよう!」
「「了解!」」
田中の提案に皆賛成し、すぐに救急車が呼ばれて全員名古屋市内にある総合病院へと向かったのだった。
その後、病院へ運ばれた根本はすぐに検査に回された。勿論エリカも検査室に入り、病院の機器の検査と共に更に詳しく正体を突き止めようとしていた。ウインメタル、田中、寺澤達は外で心配しながら結果を待っていた。
「田中さん、一体何なんだろうこれ?」
「私にもさっぱりだ。夢でも見ているようだ。」
「こ、こういう場面にいざ遭遇するというのも精神がエグられますな。宇宙研究家の私でも…。」
ウインメタルや田中だけでなく、最初はノリノリだった寺澤までも深刻な表情をしている。そして、検査が行われていた部屋から医師とエリカがでてきた。
「ど、どうだったの?根本さん大丈夫?」
ウインメタルが心配そうに医師とエリカに聞いた。そして医師は暗い表情で話し始める。
「幸い処置が早かったので命に別条はありません。でも、信じられないことばかりです。医学では説明がつきません。」
医師はまるで悪夢でも見た直後のような表情でそう言った。そしてエリカが続ける。
「お腹の中にいる子供を解析致しましたが、信じられないことが分かりました。これをご覧ください。」
エリカは収集したデータを壁に映し出し、説明を始めた。
「まずはこれをご覧ください。」
そう言って映し出されたのは根本の腹の中にいる子供…のはずなのだがそのず方に一同は目を疑った。
「何だ…。」
「こ、こんな事って…。」
ウインメタルと田中はあまりの状況に絶句してしまった。
「ええ、見ての通り彼女の腹の中ではこんなのが成長し、暴れ回っていたのです。」
エリカが説明した根本の胎内にいる子供…しかしその姿はまるで人間の赤ん坊とはかけ離れていた。妊娠三カ月の胎児は顔が大きく見えるものだが、そう言う類ではない。異常に発達した頭部にはそれに合わせるかのように発達したであろう大きな目が閉じた状態でついており、細長すぎる手足には六本の指が生えている。誰がどう見てもまともな人間の子供ではないことが分かる形だった。
「私も長年医師として働いていますけどね、こんなの見たことありませんよ。もう何が何だか。」
医師は状況が読めず、完全に頭を悩ませていた。それでもエリカは冷静に続けた。
「胎児を詳しく解析致しましたが、生体反応の波形の中に地球の人類には無い物が含まれています。」
「じゃあ、こいつはやっぱり宇宙人が産ませようとした子供か。」
ウインメタルのその言葉に一同は息を飲む。フィクションや都市伝説でしか考えられないようなことが今目の前で起きているのだから。
「このままでは母体が危険な上に生まれた子供が我々人類に危害を加える可能性が非常に高いです。」
「そうだよね。じゃあすぐに取り出そう!摘出したエイリアンの子供の処分は僕がやるから。」
エリカの説明にウインメタルはマキシムダガーを取り出しながらそう答えた。田中も渋い表情でうなずく。
「それしかないよな。よし、摘出後エリカは詳しく調べるために体の一部を採取、ウインメタルいはすぐし始末してくれ。」
「「了解!」」
こうして根本を救うためにウインメタル達のやることは決まったのだが、医師は猛反発した。
「ちょっと待て、あんた達!何を言っているのか分かっているのか?!エイリアンベビーだか何だか知らないが、命ある腹の子を強制的に摘出して始末するなんて出来る訳ないだろ!」
「だけどその腹の子はまともじゃない!エイリアン、しかも罪も無い女性を何人も惨殺しているような輩が産ませようとしている子だ!現に身ごもっている根本さんが瀕死状態だってのに、その命を見捨ててエイリアンを助けるっていうの?助けられる命が目の前にあるのにその味方をしないなんて、それでも医者なの?!」
ウインメタルがすかさず噛みついた。そして、医師はその言葉を受けてしばらく考えた後にようやく摘出手術に応じてくれた。根本は手術室に運ばれ、腹がメスで開かれるその後、子宮内膜を切開し、暴れ回っていた者の正体を皆は目の前にしていた。
「これが…。」
「エイリアンベビー…。」
隼人と田中は思わず息を飲む。先ほどエリカの画像を見ていたが、いざ本物を目の前にするとやはり異様な雰囲気が漂っていた。異常に発達した頭部と目、長すぎる六本指の手足に胎児の体色はなぜか薄いグレーをしていた。
「これより、対象物の摘出に入る。」
執刀医は覚悟を決めてエイリアンベビーを摘出。先ほどのショック光線がまだ効いているのか手足を少し動かしているものの、泣き声をあげたりあばれたりする様子はない。
「エリカ、今だ!」
「了解しました!」
田中に言われてエリカはすかさず血液と皮膚組織の一部を採取した。そして田中は今度はウインメタルに声をかける。
「よし、ウインメタル!後は頼んだ!」
「了解!」
ウインメタルは金属のプレートにおかれた異形の子にフリーズモードの冷凍光線を浴びせ、完全に機能を停止に追い込んだ。
「正直こんな事があっていいものなのか疑問だが、仕方ない。人類を守るためだ。」
寺澤の方も深刻な表情でそう言った。無事手術は終了し根本は助かり、敵の正体を探る重要な手掛かりを得ることもできた。だが、手術室からでてきたウインメタル達は暗く、悲しみも含めた複雑な表情だった。
その頃。エリカを連れ去ろうとした円盤はまだ太平洋上空にいた。いつもなら気まぐれに地上に降りて若い女性にキャトルミューティレーションを施す所なのだが、それが出来ない事情があった。
「くそ、あの銀色のやつのせいで仕事が進まん!」
円盤内部ではあるものがそう苛立ちながら叫んだ。身長はおよそ140㎝、全身がグレーとも鉛色ともいえる体色で、体の割に発達した頭と目、細長い手足と6本の指を持っている、地球上の者にはない特徴をいくつも持っている存在。その者に仲間であろうものが近づいて言った。
「だったら処分すればいい。いくら強くても所詮はその程度だ。簡単なことだろう?」
彼らが言っているのは勿論ウインメタルの事だ。今までキャトルミューティレーションに失敗したことがなかったのだが、ウインメタルによって阻止されるのは完全に計算外だった。
「分かった。じゃあ次降りる時はあの銀の奴を探して殺す!」
「そう。そして仕事の続行だ。これは絶対に成功させなければならない。我々の存続のために。」
そう力強く言った彼らはゆっくりと地上へ向けて降りて行ったのだった。
こんにちわ!
新年早々ショッキングなシーンになってしまい申し訳ありません。
さあ、敵の正体が明らかになりつつある中ウインメタル達はどう出るのか?
次回もお楽しみに!




