第七十六話 恨みこそ我が源
こんばんわ。
前回田中達に接触してきた山崎。
果たしてどう出るか?
国立工学研究所から姿を晦ました山崎は、密かに用意していた隠れ家から田中達にコンタクトを取り、ウインメタルのメタリックアーマー売却と言う一方的な要求を叩きつけた。しかし、案の定要求を拒否された山崎は次なる作戦を既に立てていた。
「愚かな庶民風情が。後悔させてやる。」
不気味に笑いながらそう呟いた山崎は、後ろにいた例の襲撃者に話しかけた。
「さあ、行け。お前の恨みの元凶であるウインメタル、もとい白金隼人を葬るのだ。」
黒いウインメタルそっくりな例の襲撃者は、バイサーの奥から赤い目を光らせて飛び立っていったのだ。
その頃、隼人は大学にいた。あれからクラスメートとの関係は悪化しており、皆隼人を白い目で見ている。しかし隼人はそんなことを気にも留めず、授業に集中していた。一方、別の事も考えていた。
(山崎は僕達を後悔させるって言ってたけど、どうするつもりだ?)
今回の首謀者が山崎であることは分かったが、あの自分と瓜二つの襲撃者の正体が分からない。現時点で判明していることは生体反応が感知できないこと、ラドミウム合金により銃火器の威力が強化されていることだけだ。そう考えているうちに授業は終了し、昼休憩の時間になった。いつも利用している学食は襲撃により破壊されてしまったので、隼人は自宅から持ってきた軽食を取り出し、誰もいなくなった教室内で黙々と食べている。すると、突然田中から連絡が入った。
「隼人、山崎が動いた!例の襲撃者が川越市内で暴れている!すぐに変身して現場に急行してくれ!」
「了解!装甲起動!」
隼人はすぐにウインメタルに変身し、現場へと飛び去って行った。
「うわぁぁぁ、殺される!」
「逃げろぉ!」
前回隼人の大学を襲った襲撃者は、川越駅前で破壊活動をしていた。駅や駅前の建物はほとんど破壊され、大勢の人が血だらけで倒れている。
「そこまでだ!」
ウインメタルは襲撃者にそう叫ぶと、スタッと地面に降り立った。
「山崎、いい加減にしろ!お前がどれだけ偉いか知らないけど、やっていいことと悪いことがあるぞ!」
マキシムダガーの剣先を向け、襲撃者にそう怒鳴るウインメタル。すると、例の襲撃者がこちらを向き、赤い目を光らせた。
「ウインメタル、いや白金隼人。よくも俺に屈辱を与えてくれたな。俺はお前を殺すために生まれ変わった。覚悟しろ!」
襲撃者から声が聞こえたが、それは山崎の声じゃなかった。
「貴様は誰だ!答えろ!」
ウインメタルはさらに襲撃者を問い詰める。すると、今度は山崎の声が聞こえてきた。
「ハハハ、ウインメタル!もう忘れたのか?お前が以前解決したという政治家の不祥事事件を覚えているか?」
「汚職事件?」
ウインメタルは思いだそうとじっくり考えた。そして、すぐに思い出した。
「思いだした!国会議員が都内の商店街に強引に立ち退くさせようとしたあれか!」
事は2か月前、里美武雄と言う国会議員が「低所得者は経済発展の邪魔」などと差別的な発言をし、強引な地上げを行って古い商店街や収入が低い人が住む住宅地を高級住宅地に開拓、元いた人たちを立ち退かせようと画策していた。もちろん町の人から反発はあったが権力者である里美に誰も逆らえず、腹をくくるしかないと諦めていた。しかし、住民から依頼を受けたウインメタルはエリカと共に張り込みや揉み消されたデータの復元を行い、里美が過去に犯した収賄、暴行、恐喝などの情報を引っ張りだし、追放することに成功。町を守ったのだった。
「それと何の関係がある?」
「彼には妻と息子がいた。妻は事件が明るみに出るとショックで心臓発作を起こし、死亡。残された20歳の息子も家庭崩壊によって精神がおかしくなり、1ヶ月後に自殺した。」
「それが何だって言うんだ?」
山崎の言葉にウインメタルは噛みついた。すると、今度は襲撃者が話し始めた。
「その自殺したっていう息子はこの俺だよ!一度死んだが、山崎博士のお陰で生き返った!新しい体をもらってな!」
その言葉にウインメタルは驚きを隠せなかった。
「馬鹿な!死体を蘇らせたって言うのか?!」
「そうだ。俺はお前のせいで自殺させられた。だけど、山崎博士は俺の記憶と遺伝子を抽出して力をくれた!覚悟しろ、ウインメタル!今度はお前が死ぬ番だ!この、ダークメタルによってな!」
動揺するウインメタルに対し、襲撃者=ダークメタルの猛攻が始まったのだ。
こんばんわ!
遂に敵の正体が分かりました!
果たして、ウインメタルはどう挑むのか?
次回をお楽しみに!




