第七十三話 過去の土産
こんにちわ!
襲撃者を追い払ったものの、学校が破壊された隼人…。
果たしてどうするのか?
謎の襲撃者によって、隼人の大学が破壊された事は言うまでもなくその日の速報ニュースとして取り上げられた。
「本日12:35頃、埼玉県飯能市の北武蔵大学のキャンパス内で全身黒い鎧に包まれた謎の人物が建物の一つを襲撃し、中にいた学生11人が死亡、47人が重軽傷を負いました。襲撃されたのは学食や購買が入っている建物で、お昼時のため学生で賑わっておりました。襲撃した人物は体色を除きウインメタルに瓜二つの容姿をしており、何者かがウインメタルを真似て襲撃をしたと思われます。尚、ウインメタルが交戦したものの、襲撃者は少しダメージを受けた後に行方を晦ましております、警察は全力を上げて捜査を進めております。」
「クッ…一体何なんだろう?僕がいたのにこのザマじゃ…。」
隼人は田中の研究室でそのニュースをテレビで見ていた。襲撃された後、この犠牲者が出たあまりにも悲惨な事件を深刻に受け止めた大学は授業どころではなくなり、午後の授業が全て休講になったのだ。それで研究室に来た隼人だったのだが、死者も出てしまった事を非常に悔しく思っていた。
「まぁ落ち着け、隼人。しかし、どうしてわざわざウインメタルに似せて来たんだ?」
「そんなの僕が知りたいよ。後、生体反応が出なかった事もね。」
隼人がそう吐き捨てると、エリカが話しかけてきた。
「そういえば隼人、相手にダメージを与えた時、右耳のアンテナを切り落としたとか?」
「まぁ、そうだけど。」
「今持ってます?」
「あるよ。」
そう言って隼人は戦闘時に敵から切り落とした右耳のアンテナを取り出し、エリカに渡した。
「分析してみます!きっと敵の手掛かりかあるはずです!」
エリカはそう言うと、残骸を解析し始めた。形だけで言えばウインメタルのアンテナにそっくりである。そして数分後、エリカは解析を終えた。
「分かりました。これはラドミウム合金製です!」
「なんだって?ラドミウムだと?」
結果を聞いた田中は大慌てで表示されたデータを見る。一方の隼人は状況がよく分かっていないようだった。
「ねぇ、ラドミウムって何?」
「これは危険な金属なんだ。頑丈で錆びない反面、火薬等と接触させると化学反応を起こし、爆発力が3倍も上がってしまう。」
「何でそんなものがここに?」
「分からない。あれは確かに処分した筈なのに…。」
田中は冷や汗をかきながらそう言った。隼人はもう一つの疑問を聞く。
「田中さんが処分ってどういうこと?」
「私はかつて、国立工学研究所にいた。そして、災害対策として建物などに使えそうな錆びず頑丈な金属の研究をしていた。その時に初めて作ったのがこのラドミウムだ。」
「そうだったんだ。でも、火薬と反応して危険なことがわかったから処分しようとしたんだね。」
隼人の言葉に田中は複雑な表情で頷き、更に続けた。
「ああ、だが同じ研究員の中で1人、それを軍隊に売りつけようとした奴がいた。私を含め何人も反対したがそいつは聞く耳を持たなかった。私が上に掛け合って危険性を説明したおかげで何とか軍隊の手にも渡らず、開発も中止され、私はデータを全て処分した。なのに…まさか?!」
田中はハッと何かを思い出したような顔をした。
「どうしたの?」
隼人も気になって田中に聞く。そして田中は顔を青くして話し始める。
「こんな事が出来て、そしてやろうとするやつは一人しかいない!」
「誰なの、そいつは?」
少し沈黙した後、田中はその人物の名を言った。
「山崎清治、かつて私と同じ研究所にいた男だ。」
その頃、例の山崎清治は自宅のラボにいた。
「フッ…思ったよりやられちまったが、まぁいい。あの野郎、今頃面食らってるぜ。」
悪意のこもった笑みを浮かべた山崎は、ふと後ろを振り返って言った。
「今度はウインメタルを葬った後、田中の野郎も地獄送りにしてやる。お前なら簡単だよな?」
山崎がそう言った先には、あの黒いウインメタルそっくりの襲撃者が静かに立っていたのだ。
こんにちわ!
今回は初めて田中の過去、そして隼人の学校に関する情報に触れました。
今後も少しずつ明かしていくのでお楽しみに!




