第七十話 ウインメタルであること
こんにちわ。
今回から新章です。
田中三郎、35歳。科学者でありウインメタルのメタリックアーマーの開発者。学者の中ではまだ若手の部類にはいるが、発明家としての腕は群を抜いており、メタリックアーマーやその装備、エリカは代表作と言えよう。そんな彼は今研究所内でコーヒーを飲みながらいつものように仕事に勤しんでいた。
「これが有牙人の生態か。うん、実に興味深い。」
彼が見ているのはウインメタルとエリカがマレーシアで調査していた新人類、有牙人のデータだった。ウインメタル達のの活躍によって彼らの生態も徐々に明らかになり、また彼らを良く思わない団体も鎮圧することもできた。平和的に解決できたことを田中はかなり嬉しく思っていた。そう、それは彼の発明に対する信念だったからである。
「今まで様々な境遇の者を見てきたが、発明は人々の希望にもなる反面、悪魔のツールにもなってしまうからな。後者だけは許すわけにはいかない。」
彼はそう言った後、胸ポケットから一枚の写真を取り出した。そこには20代後半くらいの女性と3歳くらいの少女が映っていた。そして、田中はそれをしばらく眺めた後、再びポケットにしまい呟く。
「悲劇は二度と起こさせない。隼人、私と一緒に平和な世界を作ろう。」
その眼には何かを想う強い意志が宿っていた。
一方その頃隼人は…。
「デカイな。まぁ、僕には朝飯前だけど。」
ウインメタルに変身した状態で、神奈川県の江の島海岸にいた。その手にはメタリックガンを持っている。
「頼んだぞウインメタル!」
「お願い、早くそいつを何とかして!」
周りには大勢の野次馬がおり、ウインメタルに声援を送っている。そしてウインメタルはメタリックガンを構えて叫ぶ。
「メタリックガン、フリーズモード!」
絶対零度の光線を放つウインメタル。そして、それはターゲットをあっという間に凍結させた。その瞬間、歓声が湧く。
「おお、凄い!」
「さすがウインメタル!」
「これで助かったわぁ!」
ウインメタルが凍らせた物、それは砂浜に打ち上げられた巨大なクジラの死体だった。前日、江の島にクジラが打ち上げられているのを付近の住民が発見。しかし、大きすぎて簡単に処理できない上に、死体は腐敗しており、体内のガスが膨張して爆発、内臓が飛び出て周囲に悪臭をまきちらす恐れがあったので神奈川県警経由でウインメタルに出動要請があった。最初は少し戸惑ったウインメタルだったが、この後の惨状を考えるとすぐに出動。そして今、任務を完遂した。
「ふう、これで大丈夫だ。」
そう言ったウインメタルの背後で、絶対零度により凍りついたクジラの死体は、跡形もなく崩れてなくなった。こうして、ウインメタルは仕事を終えて地元の人達の声援を聞きながら飛び去って行った。
「ふう、面倒くさかった。」
「ハハハ、クジラの死体処理かよ。無敵のヒーローも優しいな。」
その夜。隼人は自宅のアパートで友人である広人と焼き肉を焼いていた。隼人としてはわざわざ自分が行かなくてもいいんじゃないかとも思っていたが、そんな彼を広人が労う。
「まぁ、いいじゃねぇか。マレーシアじゃニュースでボロクソ言われた上に村人から野次られたんだろ?」
「でもすぐに誤解は解けたよ。だって僕が正しいんだから。」
隼人自身はヒーローであることに戸惑っている様子はなく、むしろ誇らしげに思っている。そして、浩炉は微笑みながら言った。
「まぁ、お騒ぎを起こしつつもいろんな奴助けてるんだからいいじゃねぇか。故郷にいるお前の家族も喜んでるはずだぞ。」
「それはないと思うよ。」
「何でだよ。こんだけ活躍してニュースとかでも紹介されてんのに。」
「だって僕、親も兄弟もいないもん。」
隼人がそう言うと、広人は申し訳なさそうに言った。
「すまん、悪かった。」
「いいよ別に。どんな人なのかもよくわからないし。」
隼人は特に気にする様子も見せず、二人は焼き肉を嗜んだ。
こんにちわ!
田中と隼人の意味深な発言の真実とは?
これからもお楽しみに!




