第六十四話 暴動
こんにちわ!
夏休みシーズン、皆さん楽しんでますか?
ウインメタルによって現在大学の研究室で保護されている有牙人の女性の気持ちが分かり、現在森に返して有牙人の暮らしぶりに関する研究の準備が始まろうとしている。
「これを使ってください。GPS機能搭載の発信機です。これで彼女がどこにいるかわかります。」
「ありがとう。研究が捗ってこっちも嬉しいよ。」
エリカは有牙人の右腕に付け、タン教授がそれに対して礼を述べる。
「ウインメタル、彼女は今何を思っている?」
「森に帰れることを伝えたらわかってくれたみたい。嬉しそうだよ。」
リン警部はウインメタルに聴く。一方のウインメタルも彼女が自分達を理解してくれて内心嬉しかった。有牙人はこれからトラックに乗せられ、元いた森に返す予定だ。ウインメタル達は有牙人を無事にトラックに載せて保護した森へ向かって出発しようとしたその時だった。
「もしもし、私だ!」
リン警部に連絡が入る。そして用件を聞いたリン警部は驚きの表情で叫んだ。
「何、街中で有牙人が大勢で暴れている?!場所は?被害状況は?」
「そ、そんな。」
「有牙人が暴れるなんて、一体どうして?」
リンが受けた連絡に対し、エリカやタン教授は信じられないといった表情を浮かべた。ウインメタルに対しては襲いかかっていたが、まさか一般人に対して襲撃することは彼らにとって予想外だった。ウインメタルも最初は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐにリンへ提案した。
「リン警部、このまま現場に向かってください!」
「何を言ってるんだ?後ろの有牙人はどうする?」
「勿論連れて行く!多分騒ぎを鎮めるのに必要だから!」
ウインメタルはリンを説得し、有牙人を乗せたまま一同は騒ぎが起きている現場へと向かったのだった。
「きゃぁぁ、化物ぉ!」
「誰か助けてくれ!」
「うぁぁん!おかあさーん、怖いよぉ!」
ウインメタル達が到着した頃、町は悲惨なことになっていた。森から出てきた十数人の有牙人達は石や木の枝を投げたり、鋭い牙で人に噛みついたりと暴れ放題だった。ショーウィンドウや車は壊され、怪我人も出ている。
「これは、一体?」
リン警部は車から降り、目の前の惨状を目の当たりにして絶句した。有牙人達はまだ尚も暴れている。
「僕が行く!エリカ達はけが人の救出と避難をお願い!」
「了解です!お任せ下さい!」
エリカとタン教授は他の警察官たちと一緒に住人の救出を手伝った。ウインメタルは有牙人の群衆へと向かって行く。
「待て、ウインメタル!何をする気だ?」
「説得してすぐに暴動をやめさせる!ここは僕に任せてくれない?」
制止するリンを振り切り、ウインメタルは有牙人達の前に立ちはだかった。
「ガ、ガァガァ!ガァガァガァガハァ!」
「ガァガァガァ!ガハァ!」
「ガァァァァ!」
群れの先頭にいた二人の有牙人がウインメタルを指さしながら何かを言い、それに呼応して他の有牙人達は唸りを上げてウインメタルへと向かって行く!
「スピリットセンサー起動!」
彼らが何を思って暴れているのかをすぐに探ったウインメタル。そして、その原因はすぐに分かった。
「やはりか!まだあの事を怒っているみたいだね。」
暴動の原因は理解したものの、有牙人達は寒立つ入れずに攻撃を仕掛けてくる。石や瓦礫を投げてきたり、またある一匹がその長くて鋭い牙でウインメタルの右腕に噛みついた。しかし、メタリックアーマーのお陰でウインメタルには傷一つ付いていない。すぐさま攻撃を振り払うとウインメタルはメタリックガンを構えながら言った。
「みんな聞くんだ!君たちの仲間を連れ去る形になったのは悪かった!だが安心してくれ!彼女は無事だ!僕達は彼女を返しにここまで来たんだ!お願いだからこれ以上暴れるのはやめろ!」
そう言ったものの、有牙人は攻撃を止めない。怒り狂った彼らは石などをウインメタルに投げ続け、ウインメタルは牽制の意味も込めてそれらをメタリックガンで打ち砕く。
「許してくれそうにないな。ここまで怒らせてしまうとは。」
メタリリックガンに有牙人達は一瞬ひるんだもののすぐに攻撃を再開。ウインメタルは数人の有牙人達に取り囲まれ、あちこち噛みつかれた。しかし、ウインメタルは怯むことなくメタリックウイングを展開。サウンドブラスターを作動させた。超音波攻撃は有牙人達にも有効だったらしく、みんな頭を抱えながら悲鳴を上げて苦しんでいる。
「いい加減にしろ!君達もコミュニケーションが取れるなら、僕らの話を聞け!エリカ!」
「はい、ウインメタル!」
「避難状況はどう?」
「すべて完了です!」
「了解!じゃあ、彼女をここに連れてきて!」
ウインメタルはエリカに連絡を取った。連絡を受けたエリカはすぐにトラックへ向かい、有牙人を荷台からおろしてウインメタルの所に連れてきた。
「ありがとう、エリカ!」
「大丈夫ですか、ウインメタル?」
「大丈夫!もう少し僕に任せてくれないか?」
ウインメタルは有牙人女性の手を引き、群れの前に出て言う。
「この通り彼女は無事だ!今すぐ返すからもう暴れるな!」
「ガァガァ、ガハァガァガァガァ!」
ウインメタルの叫びに合わせて彼女も叫ぶ。
「説得してくれているのか。ありがとう。君には感謝するしかないね!」
ウインメタルはそう言った。一方彼女の説得が群れの有牙人達に伝わったのか、有牙人達は攻撃を止めてぞろぞろと森の方へ向かって帰って行った。
「伝わったみたいだ。さぁ、君も早く仲間のもとに帰りな。」
「ガァガァガァ!」
ウインメタルが彼女に諭すと彼女も何かを言い、足早に仲間と合流して森へと帰って行った。
「ありがとう、ね。フフフ…。」
スピリットセンサーは起動したままだったので彼女がウインメタルにそう言ったのは分かっていた。ウインメタルはそれに対し微笑みながら彼女を見送った。
「ウインメタル!」
「大丈夫か!」
避難活動を手伝っていたリンとタンがウインメタルの所に駆け寄る。
「僕は大丈夫だよ。だけど、この有様じゃぁこの後面倒くさいことになるかも。」
ウインメタルは壊された町の惨状を見て少し悲しそうに呟いたのだった。
こんにちわ!
大変なことになってしまいました!
さあ、保護した有牙人は無事に森へ帰ることが出来ましたが果たして…?!
次回もお楽しみに!




