第五十三話 償い
こんにちわ!
新パートナー編はこれで最後です。
チェリー&ベリーことチェルシー・ロー、べリンダ・ローの姉妹はウインメタルとエリカの活躍によって逮捕された。二人の身柄は静岡県警浜松警察署に拘束され、現在取り調べが行われている。
「ふう、ずいぶん手こずらせたよ。」
「二回も逃げられる訳にはいきませんからね。私も安心しました。」
変身を解除した隼人と人間体に戻ったエリカは待合所で安堵の表情を浮かべた。
「隼人さん、彼女達はまた脱獄したりしませんかね?」
「それには及ばない。脱獄できないようにあとで僕が手を打つから。」
「どういう方法ですか?」
「これから分かるさ。」
隼人はエリカにそう言った。すると、田中から通信が入る。
「隼人、エリカ。無事だったか?」
「田中さん。僕は大丈夫だよ。」
「私も故障個所はありません。」
二人は心配して連絡してきた田中に無事であることを伝えた。
「良くやった。お前がこの間言った無理な改造がまさか功を奏すとは。」
「だから言ったでしょ。万が一のためにこういう強化は必要だって事だよ。」
「そうだな。エリカもサポートロボットとは言え、攻撃用の電気ショックを搭載しておいたが役に立ったみたいだな。」
「その点は感謝致します。もしそれでも足りなくなった場合追加の装備が必要になるかもしれませんね。」
「そうだな。検討しよう。じゃあ、一度ここで切るが何かあったらまた連絡してくれ。」
そう言って田中と隼人は通信を切った。すると、取調室から警察官が出てきた。
「二人とも、協力感謝致します。」
「いいえ。」
「こちらこそ。」
お互いに謝辞を述べ、若い男性警察官は取り調べの詳細を教えてくれた。
「ロー姉妹は自分たちを襲った軍人、そして両親と異母妹を殺害後に車を奪い逃走。長らく放浪生活をした後に自分の生活を苦しめた父、そして軍に復讐を決意。まずはアリゾナの軍施設を襲い、戦闘機を奪取。その後アメリカ各地で襲撃と燃料補給を繰り返していたそうです。日本へは最初から行くつもりだったようで、自分達のルーツであり狂わせた元凶でもある嘉手納基地は最後に襲撃する予定だったと話しておりました。」
「なるほど。だから最初から沖縄に手を出さなかったのか。」
警官の言葉に隼人は納得したように話した。
「それでは、これから二人を刑務所に移送します。逃げられないようにしっかりとした設備の場所へ運ぶのでご安心を。」
「ありがとうございます。でもまぁ、あいつらは脱獄しないと思いますよ。」
「えっ?」
「今に分かります。最後に一度だけ二人に合わせてもらえませんか?」
「え、ええ。いいですけど。」
そう言って刑事は隼人とエリカの二人を地下の駐車場へ案内した。これから二人を移送用の車に乗せ、刑務所に引き渡すのだが、その立会いをするのだ。車の前で待っていると、手錠をかけられて警官に連れてこられたチェルシーとべリンダが出てきた。二人は隼人と目が会うなり不満そうに口を開く。
「ふん。これで勝ったと思うなよ、ウインメタル。」
「私達は諦めない。最後に嘉手納を爆破するまでは!」
やはり二人の中では忌まわしきルーツともいえる嘉手納基地、そして在日米軍への恨みが強いようだった。隼人はというと冷静に聞き流しながら二人に言った。
「そう言っていられるのも今のうちだよ、二人とも。でも脱走なんてできないけどね。」
「なに!?」
「ふざけたことを!」
二人は不敵に笑う隼人にいら立ちを隠せず、睨みつけた。すると隼人は上着のポケットから白い紙を一枚取りだした。
「これは僕が嘉手納で調査した時にアパートの大家さんから預かったもの。読むから最後まで聞いてね。」
隼人はそう言うと声に出しながら手紙を朗読し始めた。
『千恵、芽衣。この手紙が届く頃には私はもういないし二人は私のことを忘れているかもしれないけど書かせてください。本当は私はお父さんやあなた達と貧しくとも仲良く暮らしていきたかった。だからあの人があなた達をアメリカに連れてっちゃった時すごく悲しかったの。でも私は一度たりともあなた達を忘れたことはないわ。それにあなた達を産んだことに対しても後悔していない。私はいつまでもあなたたたちのお母さんよ。だから…大きくなってからでいいからいつでも嘉手納に帰ってきていいわ。そして、たとえ私がいなくなっていたとしてもここでの数少ない楽しかったこと、そして私のことを少しでも思い出してくれたら嬉しいです。それまで元気でいてください。愛する娘達へ。波照間妙子。』
隼人が手紙を読み終えると、二人は驚きと悲しみが入り混じったような顔で立ち尽くしていた。隼人は続けて話す。
「千恵、芽衣。これが君達の日本名だね。お母さんがつけてくれた…。お母さんは君たちと別れた後も嘉手納の地でずっと心配していたし、いつか君達が笑顔で帰ってくるのを願っていたんだ。だが、君達は憎しみをこめて日本に来たね、お母さんの願いとは逆に。僕はヒーローだからね、これ以上被害者を出すわけにはいかないし、そんな二人の目を覚ますために来たんだ。どう?この手紙を聞いて、お母さんの気持ちを知った今でも嘉手納を襲撃したいって思う?」
ウインメタルのその質問に二人は黙り込んだ。そして、何かしがらみから解かれるように二人は涙を流し、その場に座り込んだ。
「う、うわぁぁぁぁん!」
「ごめんなさい、おかあさああああん!」
そして二人は泣きながら車に乗せられ、おとなしく刑務所へ移送されたのだった。
数日後。
「隼人。アンダーソン総官から手紙が来てるぞ。」
「ほんと?」
研究所で隼人は田中から手紙を受け取った。封を開け、読んでみるとこう書かれていた。
『ありがとう、ウインメタル。そしてエリカ。君たちのおかげで助かった。これからも頑張りたまえ。デービス・アンダーソン。』
「みんな元気そうでよかったね。」
「ああ。ロー姉妹も刑務所で大人しく過ごしているらしいし、まあこれを機に攻勢できるといいんだがな。」
田中はそう笑いながら言った。すると、隼人があることに気付いた。
「ねえ、そう言えば何でエリカがいないの?」
「あいつは今新システムの搭載実験中だ。本人からの要望があったからな。」
「ねえ、どんなシステムなの?教えて!」
「実験に成功したら教えてやる。だから待っていろ。」
二人はそう話しながらティータイムを楽しんだ。この世に悪がある限り、ウインメタルの戦いはまだまだ続く。
こんにちわ。
さあ、次回から新編です!
エリカの新システムの詳細とは?
次の章から徐々に明かしていくつもりです!
お楽しみに!




