第四十二話 起動
こんにちわ!
新メカ、ついにそのベールがはがれます!
田中は目の前の人型アンドロイド、SOW-002の起動スイッチを押した。するとSOW-002は目を光らせてゆっくりと眠りから覚めるように起き上がる。そして、田中と隼人の方を向いた。
「動きが人間そっくりだね。」
「怪しまれないように仕草なんかは極限まで人間に近付けている。」
SOW-002はいわゆる機械的な動きではなく、中にだれか入っているのではないかと思わせるくらい自然かつなめらかに動く。そして、隼人を驚かせる行動に出た。
「あら、ここはどこですか?あなた達はどちら様ですか?」
SOW-002は見かけどおりに若い女性の声で二人にそう聞いたのだ。しかも、機械的な音声ではなく人間のように感情が籠っている。
「しゃべれるんだ。しかも抑揚までしっかりあるし。」
「ああ。前の人格移植アンドロイドによる連続テロ事件は覚えているだろ?敵ながらあの技術には感心した。だから人類のために殺人鬼ではなく、平和的で穏やかな人格を移植したんだ。」
田中は前の事件を受けて、人格移植AIの正しい使い方を証明するために、敵アンドロイドの人格移植AIを研究、改良していたのだった。そして、改良されたAIをこのアンドロイドに移植したのだった。SOW-002は金色のボディを輝かせながら乗っていた台からゆっくりと降りた。
「僕は田中三郎。君を作った科学者だ。宜しく。」
「田中…三郎さんですね。」
SOW-002はゆっくりとそう聞いた。田中に続いて隼人も自己紹介を始めた。
「僕は白金隼人。そして…。装甲起動!」
隼人はメタリックアーマーを展開し、ウインメタルに変身した。
「君のパートナーになるウインメタルだよ。宜しく。」
「白金隼人…ウインメタル…宜しくお願いします。」
少したどたどしさはあったが、SOW-002はウインメタルとあいさつを交わした。そして彼女は二人に質問する。
「お二人に聞きたいことがあります。私は誰なんですか。なぜここにいるんですか。」
「お前はウインメタルの良き相棒となるように私が開発したんだ。仲良くやってくれよ。」
田中はそう言う。SOW-002は続けた。
「田中さん、ウインメタル、お二人には名前がありますが私はどうやって名乗ればいいんですか?」
「そ、そう言えばまだ決めてなかったな。すまない。」
「ちょっとずるいですよ。」
SOW-002は少し怒ったような声で田中に言った。すると横から隼人が口をはさむ。
「するいとかそう言う感情は理解できるんだね。」
「ああ、人格移植AI、しかも殺人鬼じゃなくて常人に極端に近いタイプだからな。」
「この際だから決めてあげたら。」
「そうだな…う~ん。」
田中は悩んだ末、SOW-002に向き直って言った。
「よし、お前の名前を決めよう。エリカだ。今日からお前はエリカを名乗れ。」
「エリカ。言い名前ですね。ありがとうございます。これから宜しくお願いしますね。田中博士。」
「ああ、宜しく。」
「ウインメタルも宜しくお願いします。」
「うん、こちらこそ宜しくね。」
こうしてSOW-002=エリカと田中、ウインメタルの初顔合わせは問題なく終わった。そして、田中はエリカの性能実験のために外へ連れ出したのだった。
「よし、エリカ。腕を伸ばして見ろ。」
「了解、博士!」
エリカはそう言うと、金色の装甲に覆われた両腕がまるで水飴のように柔らかくなり、伸び始めた。
「ねえ、一体どうなってんの?」
驚いたウインメタルは田中に聞く。
「お前のメタリックアーマーは頑丈さを重視したシルバニウム合金でできている。だが、彼女の装甲は耐久こそ劣るが柔軟性と伸縮性に優れたゴルドニウム合金でできている。だからああいう動きが出来るんだ。」
「へえ、凄いね。」
ウインメタルは感心しながらそう言った。田中はさらに続ける。
「よし、フォームシフトだ。ちゃんとできるかやってみろ、エリカ。」
「了解です。フォームシフト!」
エリカがそう叫ぶと、全身を覆っていた金色の装甲が輝き始め、そのシルエットが徐々に変化していく。そして、光が収まるとそこにはどう見ても人間の少女の姿があった。
「人間に変身できるんだね。」
「ああ。これなら街中を歩いても人間と見分けがつくまい。」
田中は自信満々にそう言った。そして、メカフォームでは表情が分からなかったエリカも人間体になってその表情や感情がようやく読み取りやすくなった。
「皆さんは悪い人じゃないんですね。嬉しいです。これから一緒に頑張っていきますんでなにとぞよろしくお願いします!」
微笑みながらそう言ったエリカはもはや人間と大差なかった。こうして新しい仲間が増えたウインメタル達は新たな道へと進んでいくのだった。
こんにちわ。
アンドロイドの名前はエリカちゃんに決定です。
祝:命名!
これから彼女も活躍して行くので宜しくお願いします!
それではまた次回!




