第三十八話 全貌
こんばんわ!
今日は種明かしします!
「どういうことなの?あなた達どうやって入ってきたの?」
現れた田中、清水、アーニャの姿を見て小佐谷は動揺していた。何せここには部外者が入って来たためしがなかったからだ。
「こっちだってお前にやられているだけじゃないんだぞ!」
という田中。
「手こずらせやがって!観念しろ!」
という清水!
「無敵のジャーナリストは神出鬼没なの!残念でした!」
と得意げにアーニャが言った。
「ウインメタルは倒したはずなのに!ずいぶんしぶといわね!許さないわ!」
「僕に何か言った?」
ウインメタルそっくりの何者かに話しかけた小佐谷に対し、隼人が質問する。
「あなたには聞いてないわ!私はそこにいるウインメタルに聞いてるの!」
「だから僕に聞きたいんでしょ!装甲起動!」
隼人はメタリックアーマーを展開し、ウインメタルに変身した。
「そ、そんなバカな。ウインメタルが二人いたなんて。あり得ない、あり得ないわ!」
小佐谷はいらだちと焦りの混じった声でそう言った。そして、偽物の方のウインメタルがヘルメットを外した。
「ったく。このスーツ重いし暑いし。勘弁してくれよ。」
そう言って出てきたのは隼人の大学の友人である黒木広人だった。隼人は作戦決行の際、アーニャと共に変装して偽名を使いカップルになりすまし、同時にメタリックアーマーのレプリカを広人に着せ、正体を隠していたのだった。
「ごめんね広人。後でアイスおごるから。」
隼人は広人に謝ると、再びメタリックガンの銃口を小佐谷に向ける。
「お前はもう終わりだ小佐谷!この人たちは解放させてもらうよ!」
「こ、この子たちは私の大事な子犬ちゃん達よ!攫って行くなんて許さないわ!」
小佐谷が駄々をこねると、男性達は「何だこいつ?」「気持ち悪ぃ…。」「頭おかしいんじゃねぇの?」
とざわつき始めた。
「それと理由を言え!何で女性関係で揉めた人と交際中の人を拉致したんだ?」
ウインメタルは小佐谷にそう質問した。そして小佐谷は動揺しつつも重い口をやっと開き、話し始めた。
「そう、私は同性愛者。身も心も男だけど口調はこんな感じだし、男が好きよ。」
更に悲しそうな雰囲気で小佐谷は続けた。
「ずいぶん酷いイジメを受けたこともあったわ。それでも優しくしてくれる男がいた。そして、正直に好きって伝えて、その人は受け入れてくれた。」
自分の過去を話している小佐谷はどこか感極まっている感じがあった。加えて気迫も感じられる。
「彼はバイセクシャルだったわ。とても素敵で女性からもモテるような人だったけどそれでも男の私を受け入れてくれた。楽しかったわ。だけど、あの女、あの女が…。」
小佐谷は拳を握り締め、怒りの表情で声を荒げた。
「あの女は私の大事な彼を酒に酔わせて…そして無理やり自身と結び付け…彼との子供を作ったわ!そして私の目の前に現れて『あんたみたいな気持ち悪い人なんかより私といる方がずっと彼にとって幸せよ!所詮男は女と結ばれるべきなのよ!』なんて言った!」
小佐谷はさらにヒートアップしながら続けた。
「許せない!私の大事な彼をそんな形で奪うなんて!彼がかわいそうだった!だから私は男を平気で見捨てるような女を許せなかったし、女に大事な人を奪われる気持ちを思い知らせてやりたかった。3年前のデモはただの牽制にすぎないの。幸い私は大学院でナノマシンの開発や光学迷彩の研究を専攻してたからそれが役に立ったわ!」
ウインメタル達は小佐谷の過去を聞いて若干同情の念もあった。だが、清水が声を荒げた。
「好きな人を奪われたお前の気持ちは分かるし、私は同性愛を否定しない!だが、だからと言って人を誘拐してしかも洗脳までしていいことにはならないぞ!」
清水の言葉に男性達は「そうだよ。」「早く帰らせろ。」と文句を交えて賛同していた。更に田中が続ける。
「お前の技術力の高さは認めよう。だが、ウインメタルと私を甘く見過ぎたのがお前のミスだ。」
「何よ!大体どうしてここが分かったの?それにどうやって入ってきたのよ?!」
小佐谷が声を荒げて質問すると、ウインメタルが答えた。
「僕はお前に捕まった時、ワクチンプログラムでナノマシンを機能停止に追い込みつつ、洗脳されたふりをした。そして、アジトに連れてこられた際に光学迷彩やジャミングシステムを解析し、タイミングを見計らってダミーキャンセラーを発動させて、どっちも解除したよ。そして僕がみんなに位置情報を教えた。お前は絶対に破られないし、みつからないと思っていたけど、その過信が裏目に出たな。もう逃げられないぞ、小佐谷!」
全てを見破られ、完全に追い込まれた小佐谷だったが、顔を上げて力強く言い放った。
「まだ私は負けてないわ!覚悟しなさい、今から私の最高傑作を見せてあげるわ!」
そう言って小佐谷はリモコンを取り出し、スイッチを押す。すると、あちこちの隙間から銀色のスライムの様なものがまるで細胞が合体するかのごとく大量の集まり、合体していった。
「こ、これは…?」
「まさか、ナノマシンか?」
ウインメタルと田中が驚きながらそう呟く。そして、銀色のスライムのようなナノマシンの集合体はどんどん巨大化し、やがて人の形へと変形したのだった。
「これでもまだ強気でいられる?ウインメタル。」
「そうきたか。だが、こんなのにやられる僕じゃないよ!」
自信満々の小佐谷に対し、ウインメタルはそう答えつつも動揺を隠せないでいた。
こんばんわ!
小佐谷にも悲しい過去がありました。
恋ってものは辛いみたいですね。
さあ、いよいよ小佐谷との最終決戦です!
ウインメタルは小佐谷に勝てるのか?
次回もお楽しみに!




