第三十二話 あいつが来た
こんにちわ。
前回更新をサボってしまったことをお詫びします。
謎の黒ずくめ集団と交戦後、ウインメタルは黒ずくめが落としていった光線銃のような謎の道具を回収し、研究所へ戻ってきた。早速その道具を田中に引き渡し、解析を始めたのだった。
「しかし、こんなものをよく作ったな。武器ではなさそうだが…ん?」
「どうしたの田中さん?」
隼人は田中の顔を覗き込む。
「先端に注射針のようなものがある。何かを打ち込むものなのか?」
「とにかく解析を続けようよ。」
隼人に言われて田中はそのまま解析を続行する。ふとトリガー付近を見ると、持ち手の部分にふたのようなものがあるのを見つけた。そこを開けてみると、中にだ円形のカプセルのようなものがあった。
「何だこれは?なんか入っているぞ。」
「中を取り出して見てみようよ。」
そう言った隼人はカプセルを持ち、中を開けようとした。しかし開けるところがなく困っていると、カプセルの先端部に小さな穴があいているのを見つけた。
「ここに穴があいている。あけるというより注入、抽出するといった形か。」
隼人は穴のあいている部分を下に向け、横を指で強く押しながら縦に振ってみる。すると、ドロドロした鉛色のジェルのようなものが出てきた。
「何これ?」
「顕微鏡で見てみよう。」
田中は出てきたジェルをプレパラートに取り出し、それを顕微鏡で見てみた。
「何だ…これは?」
「どうしたの?」
驚く田中を背に、隼人も顕微鏡をのぞきこむ。すると、そこには銀色で中央部赤い点があり、機械的だがどこか生物のような妙なものがうごめいていた。
「細菌?アメーバ?どっちでもないようだけどなにこれ?」
「これはおそらくナノマシンだ。こいつを男性の体内に打ち込んでいたようだな。」
「それじゃあ、高橋さんが言っていた打ち込まれた瞬間人が変ったっていうのは何なんだろう?」
「おそらく…これはあくまでも推測だがこのナノマシンには人の精神に干渉するシステムが組み込まれていたのだろう。これが脳に回り、精神回路を操っていたに違いない。」
田中はそう推測し、隼人に説明した。しかし隼人にはもう一つ疑問があった。
「それが分かったのはいいけど、肝心の犯人は一体どんな奴だったんだろう?黒ずくめで顔を隠していたし、声もボイスチェンジャーで変えられて、男か女かも区別がつかない。」
「隼人、その声は録音しているか?」
「うん。一応手掛かりになるかと思ってボイスレコーダーは起動させていたよ。」
隼人がそう答えると、田中はある提案をした。
「一度ウインメタルに変身し、そのあとその音声データを再生してみてくれ。」
「分かった。装甲起動!」
隼人はウインメタルに変身し、前の戦闘での音声データを再生する。そこには先ほどの戦闘時のウインメタルと黒ずくめのやり取りが録音されていた。
「こんなの流して何になるの?」
「そのままダミーキャンセラーを起動させてくれ。」
「ダミーキャンセラー?何それ?」
初めて聞く単語にウインメタルは首をかしげる。
「ダミーキャンセラーは私が開発した新しいシステムで、偽装されたものを見抜き本来の姿形にしてしまうシステムだ。この間修復プログラムを入れるついでに搭載しておいたのだ。」
「そんなシステム入れたんならもっと早く言ってよ。」
「ごめんごめん。とにかく起動させてみて。」
「分かったよ。ダミーキャンセラー!」
ブツブツ文句を言いながらも隼人はダミーキャンセラーを起動させた。すると、ボイスチェンジャーで加工された声は、野太い男性の声に変化した。
「どうやら犯人は男のようだね。」
「そのようだな。今度は映像データを再生し、黒ずくめたちにダミーキャンセラーをかけてみよう。」
そう言われて隼人は戦闘中に録画された映像データにダミーキャンセラーを使い、黒ずくめたちを解析した。すると、マントに覆われている全身から屈強でひげを生やしたスキンヘッドの大男が姿を現した。
「こいつが犯人か。一体何者なんだ?」
「ん…?こいつは確か…あ!思い出した。小佐谷総一郎だ!」
「田中さん知っているの?」
疑問を持つウインメタルに田中は思い出しながら説明を始めた。
「ああ、こいつは確か同性愛者の正当性を訴える団体の代表だった。3年前に同性結婚を認めさせるためにデモを起こし、そのあと行方が分からなくなっていたんだ。」
田中は小佐谷という男に対し説明をしていたが、ウインメタルの中にはまた新たな疑問が生まれた。
「その人が何で男性…それも女性とトラブルがあった人と誰かと付き合っている人ばかり攫ったんだろう?」
「そこまでは分からない。とにかくまた現れるかもしれないからその時に確保だ!」
「そうだね。あと、子分だと思っていた黒ずくめに解析をかけたら皆攫われた男性ばかりって言うのも気になる。」
「おそらく彼らも洗脳されて操られているのだろう。一刻も早く味とを見つけて全員を救出するぞ。」
「了解。」
犯人像が分かり、今度こそ捕まえて攫われた男性達を助け出そうと改めて心に決めたウインメタル達だった。
これから三日後。隼人は友人である黒木広人の家にいた。
「何かお前、いろいろ飛び回ってたみたいだな。」
「仕方ないじゃん。あちこちで誘拐事件が起きているんだし。」
二人は部屋で映画のDVDを見ながらそんな話をしていた。ウインメタルと交戦した後、黒ずくめ=小佐谷は肝心の道具を奪われたのもあってか次の日も、その次の日も現れなかった。この日もどこかで若い男性が誘拐されたという事件は報告されていない。
「はぁ、そんな映画みたいなことあるかって思ったけど目の前に現実覆しちまったやつがいるしな。」
「正直僕もヒーローになれるなんて考えもしてなかったよ。力を手に入れられたのは確かにいいと思ったけど、命を削る覚悟がないとダメなんだなってつくづく思うよ。」
驚きとあきれがこもった広人の言葉に対し、隼人は少し複雑な感じでそう答えた。実際隼人はサハリンでのバイオビースト事件でザガースキーの攻撃に大苦戦し、敗北ま寸前まで追い詰められたことがある。あそこでの敗北は死を意味していると言っても過言ではなかったので、まさに命がけなのである。
「終わったか。あ、俺そろそろバイトの時間だ!」
「そうか。僕も研究所寄らないとね。」
そう言って二人は家を出てそれぞれの目的地に向かった。隼人は足早に研究所に向かうと、入口の所にだれかたっているのが見えた。
「ん?誰だ?」
そこに立っていたのはピンク色のパーカーとジーパンを身に付けた。色白で赤い髪の毛の女性だった。
「どこかで見たことあるような気がするけど…。」
そう思いつつ、隼人は女性に声をかける。
「あの、うちの研究所に何か用ですか?」
聞かれた女性は隼人の方に振り返る。その瞬間、女性は笑顔になり、隼人は少し動揺したような表情を見せた。
「あら、隼人君じゃない!丁度よかったわ!」
「アーニャ、何で君がここにいるんだい?」
その女性とはかつてサハリンで出会った少女、アーニャ・スルツカヤだったのだ。
こんばんわ。
2週間ぶりの更新です。
自分で始めておいてアレですけど、2作品を並行して書くのって結構難しいですね。
でも書き始めた以上最後まで書きますので宜しくお願いします!
それではまた次回!




