第三十話 疑問
おはようございます!
今日で八月も終わりですね。
さぁ、執筆頑張ります!
昨晩都内でカップルが謎の黒ずくめの人物に襲撃された事件は、翌朝のニュースで大々的に放送された。
『昨晩夜9時頃、東京都江東区の路上で男女二人が襲撃され、男性は失踪、女性は意識不明の重体となっております。被害にあったのは江東区の会社員、坂下俊夫さん(26)と交際相手の会社員、高橋香菜さん(26)です。近くを通りがかった大学生の目撃証言によると、昨晩二人組の男女が全身黒ずくめの5人組に絡まれ、男性を連れ去ったのちに女性が路上に倒れたとのことです。警察では、誘拐事件として捜査をする意向で、坂下さんの捜索及び、意識が戻り次第高橋さんからも事情を聴く模様です。』
「二人とも誘拐せずにわざわざ男性だけを連れ去るとか、もしかして一連の事件の犯人こいつなんじゃないの?」
「可能性はあるな。何せこの男性、20代の上になかなか美形だ。」
研究所のテレビで朝のニュースを見ながら隼人と田中はそう話していた。隼人の方は若い男性だけが連れ去られたことから坂下を連れ去ったとされる黒ずくめの人物がこれまでの連続失踪事件の犯人ではないかと疑っていた。
「今までの経緯から考えると、喧嘩中のところを襲われたのかな?」
「それはわからん。とりあえず、俺はこの二人の事を調べる。隼人もそろそろ学校いきな。」
「あ、そうだった。じゃあ行ってくるね。」
隼人はそう言って大学へと向かい、田中は事件に関する調査を続けたのだった。
大学に到着した隼人は静かに授業を受けていた。しかし、どこか腑に落ちない部分があった。
(分からないな。今までは目撃証言がゼロだったのにどうしてわざわざ二人でいるところを襲撃し、夜で人通りが少ないとはいえ目立たなくはない場所にいる時をねらったんだ?まぁ、覚えていれば被害者の一人の高橋さんに聞けば少しはわかるとは思うけど…)
隼人は朝のニュースの内容に違和感を感じていた。男性を誘拐するのはまあいいとして、何故女性を放置したのかだ。何せ犯行を見られているのだから放置してしまえば警察などに話されてしまう可能性がある。普通は口封じのために一緒に誘拐するか殺害するかなのに、犯人はそれをしなかった。目的がまったく見えずに困惑していた隼人だったが…。
「白金!おい、白金!」
「え、あ、はい。」
「何をぼーっとしてるんだ?授業くらいちゃんと聞け!」
「すみませんでした。」
教授に怒られ、隼人は静かに授業に集中したのだった。
その昼。
「ちょっと白金君!何やってんのよ!翔太が見つからない上にまた被害者出ちゃったじゃない!」
「うるさいよ。こっちだって情報掴めなくって困ってるんだ。」
英恵に痛い所を毒づかれ、隼人は申し訳ないと思いつつ、少しいらついていた。
「大体いつになったら解決するのよこの事件!全然進歩してないじゃない!」
「文句は僕じゃなくって東洋連合に言ってよ。」
「ん、何だって?」
「ごめん。何でもない。」
メタな発言をした隼人に対し、英恵は切実な感じで隼人に言った。
「とにかく早く何とかしてよ!」
「分かってるよ。今度は目撃者もいるんだ。今までに比べれば調査は楽だよ。」
隼人はそう言い残し、英恵の前から立ち去っていく。すると連絡用端末が鳴り響いた。相手は勿論田中だった。
「もしもし田中さん?何かわかったの?」
「ああ、ちょっと予想外なことだったけどな。」
田中は少し動揺したような口調で続けた。
「調査して分かったんだが、あの二人、別れ話はおろか来月結婚予定の仲が良好なカップルだそうだ。」
「え、そうなの?」
これには隼人も驚きを隠せなかった。今まで別れ話が縺れ込んだり振られたりした若くて顔が整った男性がけがターゲットになっているとばかり思っていたからだ。隼人はさらに聞く。
「帰り道喧嘩したところをねらわれたかもしれないよ。」
「それは分からない。意識不明の彼女が回復してから聞かないとな。」
「その役目は僕がやるよ。」
「いいのか?」
「うん。もやもやしたまま終わりたくないし。」
「了解、まかせた。」
隼人はそう言って連絡端末を切り、午後の授業へ向かったのだった。
その夜。
全ての授業を終えて隼人は帰宅しようとしていた。すると再び連絡用端末が鳴った。
「もしもし田中さん?」
「高橋さんの意識が回復したそうだ。向かってくれるな?」
「了解、装甲起動!」
それを聞いた隼人は早速ウインメタルに変身した。
「じゃあ行ってくる!江東区のT病院でいいんだよね?」
「そうだ。気をつけて言ってこい!」
田中はそう声をかけ、ウインメタルはメタルウイングを起動し、高橋香菜が入院している病院に向かって行ったのだった。
30分後。
「ここか。」
ウインメタルは江東区内にある高橋香菜が入院しているT病院へと到着した。中に入り、受付で病室の場所を聞いたウインメタルはすぐに向かい、ドアをノックする。
「どうぞ。」
中から女性の声が聞こえたので、ウインメタルはドアを開けて中に入る。すると、中にはベッドの上にいる若い女性=高橋香菜のほか、スーツを着た男性数人がいた。
「あなたは?」
「ウインメタルです。高橋香菜さんですね。」
「はい。」
お互いにあいさつを済ませたウインメタルと高橋。すると、スーツを着た男性が一人近づいてきた。
「君がウインメタルだね。私は警視庁江東警察署の清水正次だ。」
「宜しくお願いします。」
「こちらこそ。我々も手こずっているからぜひ協力してほしい。」
「分かりました。」
ウインメタルが清水とあいさつを交わしたところで早速事情聴取開始だ。
「では、早速ですが我々の質問に答えてください。あなたと坂下さんは交際中でお間違いないですね?」
「はい。」
清水の質問に高橋は素直に答えた。今度はウインメタルが質問する。その際、ウインメタルは相手の精神状態を分析し、発言の真偽を見抜くスピリットセンサーを起動させた。
「今まで拉致された男性は女性関係で何らかのトラブルがあった方ばかりなのですが、あなたと坂下さんも口論になっているところを襲われたのですか?」
その質問に対し、高橋は血相を変えて声を荒げる。
「そんなことありません!あの日の晩、私達は一緒に帰りながら次のデートの約束をしてたんです。でも、いきなり黒ずくめの人が襲ってきて…うっ、うっ…。」
高橋は泣き出してしまったが、話を続けた。
「最初は一人だったのにその後さらに4人の黒ずくめの人が現れて私達は押さえつけられたんです。そしたら、親分ぽい人が俊夫くんの首に変なもの打ち込んで、そしたら俊夫君が急に人が変わったように『もうお前とは一緒にいられない』って冷たく突き放して…私が覚えてるのはここまでです。刑事さん、ウインメタルさん!俊夫君を助けてください!出ないと私、私…うわぁぁん!」
高橋は号泣しながらベッドにうずくまる。話を聞いた刑事たちやウインメタルも頭を抱えるしかなかった。
(スピリットセンンサーの測定じゃ、彼女は間違いなく真実を言っている。だとしたら何故犯人はターゲットを振られた男から女性と仲が良好な男性にシフトさせたんだ?分からない。犯人の目的は一体何なんだ?)
志願して高橋に接触したものの、余計に謎を深めてしまったことに困惑するウインメタルだった。
どうも。
八月最後なのに天気悪くて悲しいです。
皆さんは楽しい夏休みを過ごせましたでしょうか?
とにかく、無駄にならないように楽しく過ごしてください。
それではまた次回!




