第一話 現れた新戦士(ニューヒーロー)
お待たせしました!
いよいよウインメタルの本編登場です。
ここはある郊外の山道。この道路に一台の大型観光バスが走っていた。車内には大勢のツアー客が乗っている。
「それでは皆さん、あと20分程で道の駅に到着します。降りて買い物など行く方はご準備下さい!集合時間は厳守でお願いします!」
バスガイドがマイクで乗客たちに呼びかける。この日はあまり道が混んでいなく、順調に進めば間違いなく時間通りに目的地に着くはずだ。晴れた日の山道を走り続けるバスだったが…
バリン!
「きゃあ!」
突然後方の窓が割れ、何者かが入ってきた。乗客の悲鳴が車内に響く。
「な、何なの?」
ガイドが大声を上げる。すると入ってきた三人組が話し始めた。三人とも黒ずくめで顔をマスクのようなもので隠している。おまけに全員拳銃を持っている。
「コノバスハ我々ガ乗ッ取ッタ。助カリタケレバ我々ノ言ウコトニ従エ!」
まるで感情が見えない喋り方で、三人組のうちの一人が話す。すると、乗客の一人が携帯電話で通報しようとした。しかし…
バアン!
「うわっ!」
乗客は腕を撃たれ、携帯電話を踏み潰されていた。腕からは赤い血が流れている。
「変ナ真似ヲスルト、今度ハ頭ヲ撃ツ。覚悟シテオケ!」
そう言って、三人のうち二人は乗客を見張り、一人が運転席に行き、運転手に銃口を突きつける。
「コノママスピードヲ上ゲ、走リ続ケロ!止マッタリ、スピードヲ落トシタラ貴様ノ命ハ無イ!」
「は、はい!」
運転手は言う通りにスピードを上げた。バスは完全に乗っ取られ、猛スピードで前の車を抜きながら疾走した。
その頃、とある繁華街にて一人の少年が歩いていた。顔立ちは整っているが、ボサボサの髪の毛、あまり日に当たっていないのが分かるような白い肌、Tシャツとジーパン、スニーカーというシンプルな服装をしている。この少年の名前は白金隼人。今年進学したばかりの大学一年生だ。この日は休日で授業はなかったが、彼は特にこれといった予定もなく、遊ぶ友達もいなかったので、一人で時間を潰していた。そんな時だった。
ピリリリリリ…
音が鳴り響き、彼は通信用端末を取り出す。映し出された3Dディスプレイを開くと、白衣を着た中年男性=田中三郎が映し出された。
『A地区ポイント3にてバスジャック発生だ!犯人は三人組で、武装をしている。出撃してくれ!』
「了解」
少し焦った表情の田中に対し、隼人は至って冷静で感情のこもっていない声で答えた。
隼人は近くの物陰に隠れ、右腕に着けた銀色のブレスレットに念を込めて言葉を発した。
「装甲起動!」
その言葉と同時に、彼の全身が光に包まれ、光が消えたあとには銀色に輝く装甲を身に着けた隼人がいた。
「行くよ、ウインメタル。」
そう言って彼は目にも止まらぬ速さでその場を駆け抜けた。
「警察だ!そこのバス、止まりなさい!直ちに乗客を解放し、投降しろ!」
先程乗っ取られたバスは依然として猛スピードで、道路を走り抜ける。それを複数台のパトカーが追跡していた。乗っ取られたあと、近くのドライバーが猛スピードで蛇行運転をするバスを不審に思い、通報したのだ。知らせを受けた警察はすぐに現場に急行し、犯人である三人組と人質に取られている乗客を確認。スピーカー越しで犯人を説得しようとしていた。だが、犯人は要求に答えるどころか…
「邪魔ダ!警察ハ死ネ!」
そう言ってレーザー光線のようなものを撃ってきた。直撃を受けたパトカーの一台はいとも簡単に弾き飛ばされ、近くのガードレールにぶつかり、ボディーから火を吹きながら炎上した。
「くそう、奴らめ…一体何者だ?」
味方をやられ、悔しがる刑事。するとそこに、何かが近づいてくるのをバックミラーから確認した。
「何だ?何か近づいてくるぞ。」
それは後ろを走っていた車を抜き去りながら走ってきた。全身を銀色の装甲に覆われ、顔部分にはバイザーのようなものがあり、耳であろう部位にはアンテナのようなものが伸びている。そう、これは先程の白金隼人が変身した姿だ。隼人はバスに追いついたあと、ドアにしがみつき、強引にこじ開けて中に入った。
「何ダキサマ!殺ス!」
そう言って襲いかかる黒ずくめだったが、顔を隼人に掴まれ、通路の後ろの方に投げ飛ばされた。
「ナンダ?」
「新手ノ敵出現!排除スル!」
そう言って三人は拳銃で発泡してきた。しかし、隼人の装甲は穴が開くどころか傷一つつかなかった。
「ごめん。僕に実弾は通用しないから。」
そう冷たく言い放つ隼人。すると今度は一斉に先程パトカーを吹き飛ばしたレーザーを撃ってきた。レーザーは隼人に襲いかかるが…
「ドレインモード!」
隼人が、そう叫ぶと、銀色の装甲はレーザーのエネルギーを吸収、無効化した。
『隼人、敵の正体を分析しろ。』
「了解。ハイパーサーチ!」
田中から通信が入り、隼人がそれに従う。サーチを始めた隼人の顔面部分のバイザーが上に開き、黄色に輝く目のようなものが現れる。その目のようなセンサーが三人組を分析すると。
「こいつら人間じゃない。アンドロイドだよ。」
『そうか。じゃあ遠慮はいらん!破壊しよう!』
「分かった。」
隼人は一度通信を切り、再び三人と対峙する。車内の乗客や運転手、ガイドは何が起こったか分からず、怯えていた。
「ヤツヲ抹殺シロ!」
「「ラジャー!」」
アンドロイドのうちの一人が攻撃を司令。そして三人がかりで隼人に襲いかかる。しかし…
「ここじゃあ狭いから、まずは外に行こうか。」
隼人は前にいた二人の首を掴み、横の窓から外に放り投げる。二人は窓を突き破って道路に転げ落ちた。そして残りの一人も同じ場所から放り投げ、自分も道路へ飛び降りた。投げ出された三人のアンドロイドは再び起き上がると、道路上に佇む隼人を見て声を上げた。
「ハイパーキルモードデ抹殺スル!」
そう言うと三人は四つん這いになり、手足から鋭い爪が伸びた。まるで獰猛な肉食獣のように…。
「へぇ、それが本気なんだ。」
隼人が冷静にあしらう。そして三人は狼のごとく隼人に目掛けて突っ込んできた。
「なんか目障りだから、三人まとめて死んでもらうよ。」
隼人はそう言い放つと、右手に力を込める。すると、光の粒子とともに彼の手に銀色の長い物が現れた。装甲と同じ白銀に輝くそれは、長さ1メートル以上はある、両刃の鋭利な刃物だった。まるで西洋の剣の様な形状をしている。隼人はそれを手に、3人めがけて突っ込んでいく。
「終わりだよ!マキシムダガー!」
そう叫びながら隼人は三人に斬りかかる。着られた三人は、上半身と下半身を真っ二つにされ、路上に転がった末、爆発四散した。
「これで任務完了だね。」
隼人はそう言って、手に持っていた剣=マキシムダガーをしまった。犯人が倒され、完全に解放されたバスからは、人質に取られていた乗客乗員が駆け降りてきた。幸い、犠牲者は一人も出ていないようである。追跡していた警察たちも総出でみんなを保護する。すると、二人の警察官が、その光景を眺める隼人の所に駆け寄ってきた。
「ありがとうございます!どこのどなたか存じませんが助かりました!」
「ふざけるな!警察の仕事に割り込んで散々引っ掻き回しやがって!正体を現せ!」
部下であろう若い男性警察官が謝辞を述べるのに対し、上司の中年警察官は不満でいっぱいだった。
「助けたのに、何が不満なの?」
「うるさい!いいからそのフルフェイスのヘルメットを外して顔を見せろ!」
中年警官は手柄を取られたと思い不満だったのか、隼人に詰め寄ってくる。
「面倒くさいからまた今度でいい?」
隼人はそう中年警官に言い放ち、立ち去ろうとした。
「待て!名前位言えないのか?この礼儀知らずめ!」
更に詰め寄ろうとする中年警官に隼人は冷静に言い放った。
「じゃあ、名前だけ言う。僕はウインメタル。甲鉄戦士ウインメタルだよ。約束通り名前言ったからこれで帰るね。」
そう言って隼人はその場から猛スピード出て走り出し、その場から立ち去った。
「任務完了だよ。とりあえず、これから戻るから。」
『よくやった。初陣だったが頑張ったな。』
田中と通信しながら、隼人=ウインメタルは銀色のボディーを輝かせ、姿を消したのであった。
明けましておめでとうございます。
新年一発目に第一話が書けて良かったです。
僕が書いているもう片方の作品も大学生が主人公ですが、それとは全く異なる作風にしてあります。
正直うまく書けるかどうか不安ですが、頑張りたいと思っておりますので、応援よろしくお願いします!
それでは、次回もお楽しみに!




